6
王子達とルナマーリア達は幼いころから交流がある。
彼らはそれぞれ婚約者候補ではあるが、派閥の力関係、相性なども考えて、学園卒業までに婚約者を決めることになっていた。
現在の国内が平穏であり、隣国に同世代が少く関係も平穏で特に婚姻交流の必要性がなかったこともあったため、急いで決める必要もなかったので婚約についてはのんびりと考えられていた。
だが、王子達に対する不満が高まっている状況に、ルナマーリア達が立ち上がった。
注意できるのはルナマーリア達しかいないだろう。
ルナマーリア達はまずララに話をしにいった。
「あのララ様、ちょっとお話があるのですが、よろしいかしら」
高位貴族であるルナマーリアが直接声をかけると委縮してはいけないという事からエリザベスがそういって声をかけたのだが、
「え~今?私ぃ今からレイ達の所に行かなきゃいけないんだけどぉ」
と、不機嫌そうに返事をされた。
ちなみにレイ達というのは王子達の事だ。
「ほんの少しですわ。ですからこちらに」
周囲に知られればララの立場が悪くなるだろうと配慮したのだが、ララはそれを拒否した。
「だから、時間がないんだからここで言ってよ」
あまりの暴言に周囲は一瞬しーんとなった。
「あなたの希望ですからここでお話しますわね」
マーガレットがすっと前に出てそういった。
「早く言いなさいよ」
「ララ様、もう少し貴族令嬢らしく行動してくださいませんか」
丁寧にそういうと、
「は?なんであんたにそんなこと言われなきゃいけないのよ、学園内は平等だし、自由でしょ?」
あまりの言葉に驚きすぎてルナマーリア達はさっと扇で顔を隠した。
淑女たるもの表情に出してはいけないのだ。
「何よ、いきなりバサッと扇開いたりして、変なの~あはははは」
駄目だ、こいつは、とクラスの全員がそう思った。
「何が面白いのでしょう」
ララの笑い声を切り捨てるような声に驚いたララは笑うのをやめた。
「え、あの」
「何を面白いと思われたのでしょう」
声の主はルナマーリアだ。
閉じた扇をパシンと手のひらに打ち付けララをじっと見ている。
その表情からは何を思っているのかわからないが、逆らい難いオーラを放っている。
「あ、あのその、扇が・・・」
「扇が、なんでしょう」
「あ、あの・・・」
「ララ゠フェンダー男爵令嬢」
「・・・」
「ララ゠フェンダー男爵令嬢」
「な、なによ」
「学園何は平等で自由だと、誰からお聞きになったのかしら?」
「誰ってみんなそう言ってるし・・・」
「ララ゠フェンダー男爵令嬢がおっしゃるみんなとはどなたの事でしょう?」
「みんなって、そのみんなよ、だれだっていいでしょ!」
ララがそう反論するとパシンとまた手のひらに扇を打ち付ける音がした。
「ひっっ!」
「わたくしはみんなとはどなたの事か、と伺っておりますわ」
「誰だっていいじゃない!うるさいわよ。
もういいじゃない!そんなことどうだって!!」
ララがそう叫ぶとルナマーリア達全員がパチンと扇から音を出した。
「おだまりなさい、ララ゠フェンダー男爵令嬢」マーガレットが低い声で切り捨てた。
「ひぃっ」
すっとルナマーリアが持っていた扇をララのあごにあてて少し持ち上げた。
「ララ゠フェンダー男爵令嬢、学園は貴族であれば平等に入学できますわ。
学園内で勉強をするかどうか、他の貴族と交流を持つ自由がありますわ。
ですがそれがララ゠フェンダー男爵令嬢が貴族令嬢としてはしたない行動をとる事とは全く関係ございませんわ」
「う・・・」
「ララ゠フェンダー男爵令嬢、目に余るから注意しに来ましたの。
貴女の行動があなたのご実家含め関連するお家の方々にどんな影響が出るか・・・。
お分かりかしら」
「お、脅す気?」
「脅す?なんてはしたない言い方かしら、わたくしそんな物騒なこといってましたかしら?
ねえ皆さま」
そういってルナマーリアがクラスをぐるっと見回すと、全員が胸に手を当て少し頭を下げて同意を示していた。
ララはルナマーリアに圧倒的に敗北した。
そしてララは王子達に泣きついた。
反省も忠告もララには全く関係なかったのだった。響かなかった。




