表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
4/25


 「あ~久しぶりの学園だな」

「本当ですね、懐かしい感じがしますね」

「たった10日じゃないか、大げさだな」

「そうだったな、あはは」

数名の令息がそんなことを言いながら学園にやってきた。


「ところでララはどうしたんだろうな」

「隔離期間中は外部との連絡取れませんでしたからね」

「俺なんかずっと勉強させられてて療養って気がしなかったよ」

「僕もだよ」

この連中はこの国の王子とその側近候補たち。

彼らは10日前に勝手に視察と称して王都外のスラムへと出かけていた。

 

通常であれば、事前に視察のスケジュールを組み、警備計画をたてて段取りを組む。

もちろん町の中の治安によっては立ち入り禁止にして案内するようにすることもある。

万が一にでも王族、高位貴族たちに何かあれば、警護する騎士にも、町の治安部隊にも、もちろん粗相をした平民にも罰が下ってしまう。

罪人を作りたいわけではないので、視察の際にはきちんと計画を立てるのが貴族として当たり前のことなのだ。

 だが、ララという平民上がりの男爵令嬢が勝手に王子達をスラムよりの街に案内をしてしまったのだ。

タイミングが悪いことにスラム地域では流行病が流行っており、王家からも衛生団が隔離政策を始めていたところだった。

王子達がララに案内されて町に来た時、偶然衛生大臣が事務官たちと視察に来ていたことから王子達を見かけて勝手な視察が発覚した。

当然だが王子達はそれぞれの親からも騎士団長からも、衛生団長からも、なんと王子の身の回りを世話する侍従長からもかなり叱責を受けた。

り患している可能性も考え、10日間の隔離&侍従長からの再教育プログラムのカリキュラムを各個人で与えられ、かなり厳しい隔離生活を送っていたのだ。


 ちなみにララという男爵令嬢は今年編入してきた。

かなり地方の男爵家で、本来は寄親の領地にある学校に通うことが一般的である。

だがララは観光で訪れた王都にあこがれを抱き、娘を溺愛する男爵夫妻のごり押しで遠縁の伯爵家のタウンハウスから学園に通うことになったのだが・・・。

田舎でかなりわがままに育てられていたララはマナーや勉強に苦戦してしまったのだ。

遠縁の伯爵家はこのまま学園に入れれば自分たちにも迷惑を被ると家庭教師を派遣して何とか合格点になるまで学園に入れるのをストップしていたため編入という形になったのだ。

 

はじめは同じクラスの令嬢たちが親切に声をかけ、校内を案内したり、昼食を一緒に取ったりとごく普通の学園生活だった。

ララのマナーは拙いが、周囲はそれをやんわりと注意したり、やさしく指摘したりしていたのだが、

「もう、いい加減にして!そんなに私に意地悪ばっかり言って!みんなひどいわ!!」

そういってわんわんと泣き出したのだ。

およそ貴族令嬢とは思えないその態度に令嬢たちは引き気味で見ている。

誰も慰めに来てくれないと悟ったララは「もう!何なのよ!!私の事馬鹿にして!」

そう言ってガバッと起き上がると教室の外に走り出ていった。

「「「「あ」」」」

貴族令嬢が勢いよく走り去るとは思わず、誰一人止めることができなかった。






評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ