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「あの、ルーナリア様、ちょっと」
そういって数名の令嬢がルーに声をかけた。
「あら、なあに?」
「あの、その、ルナマーリア様たちの様子がいつもと違っていて、その、どうされたのかと・・・」
学園内は平等だと言われているが、学園は社交界の縮図だ。
声をかけてきた令嬢たちは同じクラスでも普段はルナたちが声をかけるまで挨拶をすることはない。
当然、クラスメートに声はかけているが、今日のような挨拶は初めてだったため、ルナたちと仲良しの男爵令嬢であるルーに声をかけてきたのだった。
「ルナ、皆がさっきの挨拶に驚いてるみたいよ」
ルーがわざと大きな声でルナたちに声をかけると、
「急に変わってしまって驚かせちゃったのね」
そういってルナたちが近寄ってきた。
「「ああ、あの、っ申し訳っつ・・・」」
「いいのよ、わたくしたち、今『お休み』なんですから」
そういってルナがにっこり微笑むと、令嬢たちはみな胸を押さえて顔を真っ赤にした。
(やばい、ルナマーリア様の笑顔の破壊力)
(貴族の微笑みじゃない自然な笑顔って犯罪じゃ)
(いけない、その笑顔に私もうダメ・・・)
「『お休み』中のわたくしたちはただの学園生ですの、あ、ただの友達よ。
気にせずルナってよんで、ね?ルーこれで合ってるかしら?
あぁ、違うわね、ルー、これでいい?」
そういっておそらくウィンクをしたのだろうだが、両目をぱちぱちして、口元はちょっと歪んでいる。
それがまたたまらなく可愛いのに令嬢たちは悶絶した。
その日の昼には一緒に昼食をとることになり、クラスの令嬢たちはうきうきとしていた。
その日、食堂ではルナたちが楽しそうに談笑しながら食事をしている姿に皆は驚いていた。
「おい、あれって」「ああ、ルナマーリア様、だよな?」
「どういうこと?一緒の席にいるのはマーガレット様でしょ?」
「リーリア様、エリザベス様、クラーラ様よね?」
「ルーナリア様以外にもたぶん同じクラスの方たちよね?」
「それにしても、楽しそうね」
「あんな姿のルナマーリア様たち見たことがないよな」
「「「「「なんかいいな~」」」」」
次の日の朝の事だ、クラスの伯爵令嬢が令息たちと一緒にルナ達に近寄ってきた。
「あの、おはようございます」
「あら、おはよう」
「その、実はルナ様にお話がありまして」
伯爵令嬢と幼馴染の令息達らしく、彼女は彼らからお願いされたそうだった。
ちなみに、クラスの令嬢たちには『お休み』中なので愛称呼びをしてもらうつもりだったのだが、「さすがに壁が高すぎですぅ~~~」と首をフルフルされたため。愛称に様で呼んでもらうことに落ち着いたのだ。
「え~、愛称で呼んでもルナたちは怒らないわよ?」
といったルーに「そんな豪胆なことできるのあんただけよ」と全員からため息をつかれ、
「解せぬ」とつぶやいたルーに全員が笑ったのはルナたちには新鮮で楽しかった。
「それで?」
「あの、初めてお話しさせていただきます、僕は「あ、わたくし『お休み』中だから普通でいいわよ」
「え、あ、あ、のじゃ、それじゃ、その、僕らも皆様と昼食を一緒にしたいので、したいんですが」
「まあ、素敵、いいわよ」
「「「へ?」」」
(ちょっっ軽くない??)(ちょっ本当にいいの?)(普通にしゃべってるの、いいの?いいの?)
お願いした方が混乱に陥っている。
「じゃ、お昼にね!あ、ルー、メグ~今日はクラスの皆さまと全員でご飯よ~」
ルナは嬉しそうにルーたちに駆け寄って話している。
「なあ、あれ、本当にルナマーリア様たちだよな?」
「ああ、たぶん」
「昨日もあんな感じだったわよ、すごく楽しかったわ」
「あのルナ様たちとご一緒できるだなんて、誰か俺の顔をなぐってくれないか??」
「「「早く昼になれ~」」」
そして、待ちわびた昼休み、食堂の一角はルナたちとクラスメートたちで何故か立食でのランチをしていた。
「急だったから、つまみやすいお昼に変更をしていただいたの」
「メグ、そこは簡単に食べられるものにしたわ、じゃない?」
「なるほど、ベス、なかなかセンスあるわね」
「わたくしも頑張るわ」
「わたくしも皆様ともっとお話しして上達して見せますわ」
「ルナ様そこは うまくなってやる! はどうです?」
「む、難しいわね」
昨日よりも令嬢たちは気安く話ができているようだ。
「明日こそはもっと親しくなる」クラスの全令息が結束した瞬間でもあった。
「おい、今日は令息たちが一緒だぞ?」
「どういうことだ??」
「令息もいけるってこと??俺らもいける??」
「誰か、あのクラスのやつ誰か捕まえてこい!」
「私たちも!ほら、あの子あんたの知り合いじゃない?」
「本当だ、食後に捕まえてくるわ!!」
「「「こんなチャンス逃すものか!!」」」
ルナマーリア達と仲良くできるチャンスを得ようと狩人となった令嬢令息たちが虎視眈々と食事が終わるのを狙っている。
そんな周囲のピリピリした雰囲気には気が付かないルナたちなのであった。