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これで完結です


学園の待合室、レイモンドたちは混乱したまま座っていた。

「王太子が叔父上で、婚約者がルナマーリア?わたしは・・・?」

あいつ()が跡継ぎだなんて・・・」

「従兄、勉強も運動も自分より下だったくせに・・」

「リーリア嬢が婚約・・・」

ドアがノックされ、ルナマーリア達が入ってきた。

当然だがミーセン公爵達も一緒に。

全員が席に着き、お茶が配られるとミーセン公爵がその場を取り仕切り始めた。

「さて、何か聞きたいことがあるなら聞こうか。

『お休み』でも無礼講でもかまわんぞ」

そういわれ、じっとルナマーリアを見つめていたレイモンドが口を開いた。

「ルナマーリア嬢、なぜ叔父上と婚約を?」

「わたくし?わたくしが王太子妃にふさわしいと選ばれましたので」

「そんなに迄して王太子妃になりたかったのか?自分の本当の気持ちを押し殺してまで」

「何をおっしゃってるのかわかりませんわ」

「もう我慢しなくてもいいんだよ。

叔父上は若く見えるとはいえもう年だ。

そんな年上の男に身分につられて嫁がなくてもいいんだ。

私の所にこればいい、何もない領地だが、いずれきっと向上していくはずだから」

だから、ね、と言ってその手を差し伸べようとしたが、ルナマーリアの表情を見ると、その手は動かせなかった。

「ルナマーリア嬢?なぜそんな目を?」

ルナマーリアは砂漠のスナギツネのような表情をしていたのだ。

よく見るとミーセン公爵はクックっと笑っている。

「ちょっと本当に何言ってるかわかんないんだけど?

わたくしはアレスとちゃんと恋愛をして婚約してるわ」

「ちゃんと恋愛?」

「そうよ」

「ルナとアレス様の恋愛は本当に素敵だったわ」

「ええ、ルナの情熱的な愛にアレス様が負けてしまったのよね~」

「それで私たちも素直に相手と向き合って話したり交流したりして、ちゃんと自分で選んだのよね」

「ルナとアレス様は今社交界でもあこがれの二人だもんね」

エリザベスたちが補足していく。

「そんな、嘘だ、叔父上は腹黒いからな!

何かルナマーリア嬢の弱みを握って・・・」

「本当に何言ってんの?頭大丈夫?

都合のいいことばっか言ってないで現実見なさいよ。

あなた領地で何をしたの?何を成し遂げたの?

な~にがいずれ向上していくはず、よ。

仲間内で愚痴ってばかりで何もしてないくせに。

アレスはちょっぴり年が上なだけであなたよりも何億倍も素敵なの!!

鏡見て出直してきたらいいわ」

「な!」

「フン、図星をさされて悔しい?ねえ今どんな気持ち?」

(うわ、ド直球!)

(どんな気持ちって聞いちゃうんだ)

(『お休み』令嬢完璧だわ)

「なななんだ、生意気な!お前は昔からそうだ。

ちょっと綺麗で賢いからってそういうところが可愛げがなくて嫌なんだ」

「嫌で結構よ、好かれたいなんて思ったこともないわ」

「なんだと?ずっと俺の婚約者になりたがってたくせに!!」

「そんなことあるわけないでしょ!

わたくしはあなたの事を怠け者で優柔不断だと思っていたもの。

陛下たちにもあなたは絶対にないって伝えてあったし」

(あはは、いっちゃった)

(きれいで賢いと思ってたんだ)

(レイモンド様、顔から表情が抜け落ちたわ)

(好かれているって自信があったんだ・・・なんで?)

(マジで好きだったんだ)

「学園に入る前にはルナはレイモンドと婚約させないことは内々に決まっていたぞ」

ミーセン公爵の言葉にとどめを刺されたのか、レイモンドは動かなくなった。

エリザベスたちもそれぞれが学園内、社交界などで交流していく中で相手を認め合い、婚約を結んだことを告げると、元側近候補たちも全員動かなくなった。


「もう聞きたいことはないか?」

さすがにかわいそうに思ったのか、ミーセン公爵がそう聞くと

「なぜ叔父上が王太子に?」

ものすごい小声でレイモンドがたずねた。

「王の息子は私しかいないのに・・・」

最後の言葉はかろうじてミーセン公爵だけが聞き取れた。

「レイモンド、王家はただ順番に王になればいいというものではない。

資質に問題があれば順番を外すこともあるのだと、王室典範でも歴史でもならっただろう?

王が無能ならすべての民が迷惑を被るのだ。

お前に託したい、兄上がそういってくれたから私は王太子になった、それだけだ」

「父上が・・・」

「あの兄の息子なんだから、お前はお前の領地をしっかり治めて見せよ。

王という名ではないが、領主もまた領地の王と同じく民を守る義務がある。

あの領地はお前たちに託されたのだ」

レイモンドたちは何も言わなかった。

しばらくして、深々と頭を下げて部屋を出て行った。

「今日のルナ『お休み』絶好調だったわね」

「ふふ、王太子妃として孤児院や庶民の学校に慰問に行くと、『お休み』の練習になるのよ」

「なるほどね」

「アレス様の方が何億倍も素敵って言いきってたわね」

「だって、アレスの事を年寄りとか腹黒とか言われてちょっとムッとしてしまったんだもの」

マーガレットに言われ、ルナマーリアは顔を赤くしてごにょごにょと言い訳をした。

「私のために怒ってくれたんだね、うれしいよルナ」

ミーセン公爵はそういってルナの髪に口づけを落とすと、周囲はきゃ~!!っと盛り上がった。


その後、ミーセン公爵は王太子アレストロイとして王を補佐し、美しき婚約者ルナマーリアと共に国民から絶大な支持を受けた。

またその側近たちも王太子をしっかりと補佐しているうえに側近の婚約者たちも王太子妃を補佐しており、諸外国からの評判も高いという。


その後のレイモンドたちだが、正式に領地を継ぎ、新たに家を興した。

レイモンドは伯爵となり、元側近候補たちはそれぞれ子爵などになり、現在の領地を力を合わせて守っている。

あれからのレイモンドたちは人に頭を下げ、教えを請い、領地の人々にも協力を求めるようになり、慎み深く生活しているらしい。

まだ誰ひとりとして結婚はしていないという。


ララは今では平民として働いている。

学園を途中でやめたため、貴族としては扱われない。

父親も爵位を返上したため、遠い土地へと家族で移動する羽目になった。

人の話を聞かず、自分勝手に生きてきたララにできる仕事はほとんどなく、いろんな仕事を首になっては次へと転職しているそうだが、

「みんなあたしに意地悪ばっかり言って、ひどいわ」

そういってわんわん泣き首になる。

いつか変わる日が来るのだろうか。


PC不調でめちゃくちゃ時間かかってしまいました。

すみません

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― 新着の感想 ―
とても楽しく読ませていただきました。 元王子も元側近たちが目を覚ますまで想像以上に時間がかかったので、国王たちの英断の正しさに拍手。 無理ですね、アレは。
いや「貴族としての義務」を果たさずに「貴族としての特権」だけを享受しようなんて、王子たちどうかしてるぜ。 たぶん似たタイプの人間が、王子とその側近としてそれなりの権力をもっちゃって、悪のりしていった…
行間読めないモンスターには察してちゃん行動は通じない。 ファンタジーだからこその対処法が面白かったです。
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