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「さて、どうやら賭けには負けたみたいだな」

そういいながら王と王妃、ルナマーリアの両親たちがそろってやってきた。

「陛下、わたくしは勝ちましたわ」

「さすが王妃様、女性陣はほとんど勝ちましたわね」

「残念ながらわしは負けた」

「うむ、頭の中を矯正するにはまだまだ時間がたりとらんかったのか、残念だが私も見誤ってしまったな」

そういって楽しそうに話している。

「父上、賭けとは?」

のろのろと顔を上げたレイモンドがぼそぼそと質問をした。

「おい、陛下と呼べと「よい、この場は『お休み』としておるのだ」」

注意しようとしたミーセン公爵を王が止めた。

「レイモンド、われらはお前たちの態度について賭けておった」

「態度・・・?」

「お前たちの今の立場はなんだ?」

「立場・・・とは、今は地方の立て直しに行っていて・・・」

「その立場は?」

「えっと、別に変わっていないかと・・・。

時期が来たらいずれ王子として戻るのでしょう?

今は雌伏の時だと・・・違うのですか?」

「「「「「え!!!」」」」

レイモンドの返答に周囲が驚きの声を上げた。

(ちょ、まだ王子のつもりでいたとか?)

(信じられん・・・)

(雌伏・・・実力養っててこれかい!)

(ちょっと見て、仲間たちも同じみたいよ)

(本当だ、全員首をひねってる)

(うわ~、ないわ~)

王族と高位貴族のいる手前、周囲は声に出すことなくハンドサインで驚きを伝達し合っている。


「どうしてこんな風に育ってしまったのか」

「教育の仕方が悪かったのかしら?」

「だが、弟たちや後から教育を受け始めた跡継ぎ候補たちはきちんと育っておるぞ?」

「じゃあ資質の問題?」

「今後は教育もだが、資質を見極めんといかんな」

「これまで問題を起こしてきた先祖たちも資質が大きな原因だったのかもしれませんわね」

「資質の見極めか、これは難しいな」

などと教育議論が始まってしまった。


「まだ王子のつもりだったなんて・・・」

「雌伏の時って思いながらダラダラしてたのね」

「なぜそんなに自信満々なのかって思ってたわ」

「幼いころからあれだけ貴族の情報は命と同じくらい重いって言われてきたのに」

「あ、でもあの方たちってあまり人の話を聞かない子供じゃなかった?」

「そうだったかも」

「なんでも人のせいにしてたりね」

「そういえば側近候補として来ていた伯爵家のすごい優秀だった方になんでも聞いていたわね」

「そうそう、ものすごい賢かったから何でも頼っていたわね」

「あまりに一人に頼りすぎて体を壊してしまって」

「わたくしたちが側近候補から外してもらうように説得しましたもの」

「今は私の優秀な部下の一人だぞ」

ミーセン公爵の言葉に近くにいた背の高い男性が恥ずかしそうに横を向いた。


「私はもう王子じゃないってことか・・・?」

「それって俺たちももう戻る場所がない?」

「そんな・・・」

「・・・」

ようやく現実を認識できたのだろう、レイモンドたちの顔色は鉛のようになっている。

「もういいだろう、今日はお前たちのための時間じゃない。

他の招待客にも迷惑だ」

「あ・・ぁ」

「後程時間をとる、それまでは待合室で待機しておれ」

王の一声でレイモンドたちは会場から連れ出されていった。

「さて、ここからは学園長に譲ろうか」

ミーセン公爵の声掛けで学園長に主導権が移り、100周年記念パーティが執り行われた。


「大丈夫かい?ルナ」

「ええ、ここからは『お休み』は封印しなきゃね」

「そうだな、我々は手本とならねばな」

ミーセン公爵とルナマーリアの言葉に、周囲も『お休み』モードを終了した。

彼らは貴族なのだ。

貴族としての矜持を持ちながら、余興としての『お休み』を楽しんだのだ。

ここからは貴族としてふるまうのが当然のことであった。


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