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 やがて会場が静かになった。

「なんだ?」

「これは、この状態は王族とか外国の要人とかが入場してくるんじゃなかったか?」

「あ、そうか、入場前はこんな風になっていたな」

遠い記憶を思い出して誰が来るのか、カバディ軍団の隙間から首を伸ばしてなんとか見ようとレイモンドたちは奮闘した。

入場してきたのはどうやら王族らしいと周囲の話から推察できた。

「王族・・・私も本来ならあそこにいたはずだったんだが・・・」

「自分も王族の側近として・・・」

「俺も・・・」

そういってなんとなくどんよりしてしまったレイモンドたちだった。


ふと気が付くと圧をかけてきていた軍団がいない。

「お、ようやくどいてくれたか」

王族が入場して場が整うまでそこから移動できないようにされていたのだが、レイモンドたちはそれに気が付かない。

「あいつらでかいだけあって動けなかったんだよな」などと言いながら前に進んでいく。

「あ、父上だ」

レイモンドが嬉しそうにそういって早足で近寄って行った。

「父上!」

王はちらりとレイモンドを見たが何も言わなかった。

「お久しぶりです、父上」

再度そういって声をかけると

「ここは公の場だ、わきまえよ」

王の後ろから厳しい声が飛んできた。

「お、叔父上」

「ミーセン公爵と呼ぶように、今、公の場だといったばかりだろう」

「あ、すみません、お、お久しぶりです、陛下」

「うむ」

「・・・?(え?それだけ?久しぶりに会ったのに?)」

レイモンドが更に声をかけようとして、後ろから来た別の貴族がそれを遮るように王へ声をかけ、レイモンドはそばを離れざるを得なかった。

他の連中も同様な感じだったらしく、なんでだろう?と頭に疑問符が付いたまま周囲からも距離をとられていた。


ふとにぎやかな集団がいることに気が付いた。

華やかなその集団の中にレイモンドたちは見つけた。

「ルナマーリア嬢たちじゃないか!」

「おぉ、本当だ」

「久しぶりに見るけど、なんか美しくなったな」

「ああ、俺たちを待つ間も努力し続けていてくれたんだな」

(やばいやばいやばい)

(完全に勘違いモードに入ってる)

(ルナ様たち逃げて~)

(超逃げて~)

(彼らの会話を大至急連絡)

(了解)


(大至急、大至急、プランAを開始する)

(王族からも皆「お休み」でよいとの連絡あり)

(全員プランA「お休み」モードに切り替えよ)

(((了解)))

ハンドサインで周囲は一瞬で「お休み」に切り替わった。


レイモンドたちはルナマーリア達に近寄っていく。

「や、やあ、その久しぶり」

「元気だったかい?」

そういって声をかけたがルナマーリア達はちらりとこちらを見ただけで談笑を続けている。

「あれ?聞こえなかったのかな?」

「人が多いからな」

そうしてもう一度それぞれに声をかけた。

「ルナマーリア嬢、久しいな」

「マーガレット嬢、元気そうだね」

「リーリア嬢、その、元気だったかい?」

「クラーラ嬢、久しぶり」

「エリザベス嬢、元気そうで何よりだよ」


彼女たちはこちらをちらっと見ると

「ああ、どうも」

とだけ言って会話に戻っていった。

「どうしたんだい?久しぶりに会えたのに」

「あ、そうか、皆久しぶりすぎて照れてるんだろう?」

「ふふふ、相変わらずかわいいな」


(どこをどうしたらあの塩対応がそう見えるん???)

(ツンデレだと思ってる?すごい花畑頭)

(うわ~、やばいやつじゃん)


「ルナマーリア嬢、久しぶりだからってそんなに照れなくてもいいんだよ?」

「は?」

「リーリア嬢、そんなにすねなくても大丈夫、君の気持ちはわかってるから」

「は?」

「マーガレット嬢、私は寛大だからそんな君の素直じゃないところもしっかり受け止められるよ」

「は?」

「クラーラ嬢、うれしいときはうれしいって言っていいんだよ」

「は?」

「エリザベス嬢、もしかしてうれしすぎて言葉も出ないのかい?」

「は?」

勘違いレイモンドたちの勘違い発言にルナマーリア達は呆れた声しか出ない。


「どうしたらそんなに自分に自信が持てるのか?」

「いや、恥ずかしすぎん?」

「ああはなりたくないな」

「ちょっと気持ち悪くて鳥肌が」

「私、寒気がしてきたわ」

「ルナ様たち、逃げて~」

周囲はハンドサインではなく「お休み」モードで聞こえるように会話を始めた。








書いていて鳥肌が止まりません。

お読みいただく際はご注意ください。

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