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「久しぶりだな、こういう雰囲気」
「そうだな」
「あんな田舎だとこんな華やかなパーティはないからな」
「この服も久しぶりに着るな」
「なかなか似合っているぞ」
「最近の流行をなんとか取り入れられたからな」
「まあ多少金がかかったがな」
「想定外だったからちょっと節約しないといけなかったのが痛かったな」
レイモンドたちはパーティに出るために大切に保管していた服を持ってきていたのだが、王都のタウンハウスで使用人から流行おくれだと指摘されたのだった。
女性の流行は短いスパンで変わっていくが、男性の流行は少しずつ変わる傾向がある。
レイモンドたちが騎士見習となり、田舎に移動している間に男性の流行は当然変わってしまっている
だが、実際は
「やつらがやらかして家名に傷でもつけられてはかなわん」
ということで各家から派遣された使用人はお目付け役でもあった。
今回レイモンドたちが持ってきた服は流行からはずれており、そんなものを着てパーティに出席されてしまうと、各家が恥をかくことは間違いない。
そこで王家から派遣された侍従がおそれながら、とレイモンドたちに進言したため、大急ぎで仕立て屋を呼んで流行のものを取り入れてもらうように仕立て直したのだ。
超特急料金を請求され、予定外の出費にレイモンドたちは今後何を節約しようかと頭を悩ませることになった。
そんな事があり、ようやく出席できたパーティだ。
気合が入るのも仕方がない?
給仕からグラスを受け取り、ルナマーリアを探して会場をうろうろしているレイモンドたちを、同級生たちは冷ややかな目で遠巻きに見ている。
「よく普通に出てこられるな」
「まったくな」
「王都の情報とか入れてないんだろうな」
「そうじゃなかったらあんなに楽しそうに参加してないと思うわよ」
「そりゃそうか」
「でも、なんか面倒くさい感じがするから報告してくるわ」
「あ、それがいい、ルーナリア嬢があそこにいるぞ」
「ありがとう、行ってくるわ」
「うんよろしく。
実はこんなことになりそうな情報があったから僕らは彼らがあの方たちに近寄れないように根回ししてたから安心してって伝えといて」
「さすがね」
「それじゃお互いにやるわよ」
そういってハンドサインをしながら動き出した。
「ルナマーリア達は来てるんだよな?」
「ええ、そう聞いています」
「う~ん、でも全然見つからないよな」
レイモンドたちがそういいながら背伸びをしながら周囲を見回している。
するとそこに体格がさらに良くなった顔を見たことがある令息がもりもりとわいてきた。
「ちょ、前が見えん」
「なんだよ、ちょっとどいてくれないか?」
「うっす」
返事はするが両手両足を広げてフォーメーションを変えてくる。
しかも以前よりも俊敏に。
(カバディverⅢ)
((((うっす)))
レイモンドたちがいなくなってからも鍛錬をして騎士になった者、騎馬兵になった者、辺境騎士になった者、それ以外にも体を鍛えた猛者たちのフォーメーションは学園にいた時よりもさらに洗練され、スピードを増し、圧がかかっている。
騎士見習以降は愚痴を垂れ流すだけのレイモンドたちには見極めることができないのは当たり前のことだろう。
しかも現在の身分では「散れ」などと命令することもできない。
カバディverⅢ実行中にルナマーリア達はレイモンドたちの参加情報の報告を受けていた。




