15
会議室には王と王妃、ルナマーリア達とその両親、王子の側近とその両親とそろった。
だが、王子達は少し離れた場所に席を設けられていた。
「婚約発表なのに席が離れてないか?」
「てっきり隣に座るのかと思っていたんだが・・・」
困惑しているのは王子達だけで、それ以外は無表情だ。
その表情からは何も読み取れない。
「早速だが、進行を任せたいのだが、よいか?」
王がそう声をかけたのは王の弟で、王の片腕として辣腕をふるっているミーセン公爵だ。
「では始めようまずはそうだな、親からの話を聞こうか。
話しにくくなるから一番地位の高い陛下からにしましょうか」
「ふむ、皆、わしの話を聞いても自分の考えを変更するようなことはしなくてもよい。
不敬にも問わないことを約束しよう。
そうそう、ご令嬢方はまだ『お休み』中だろう?
そのまま『お休み』状態で話して構わないからな」
「そうよ、外野がなんと言おうとわたくしも許しますわ」
王と王妃のお墨付きをもらいルナマーリア達は安堵した表情でうなずいた。
「さて、それでは陛下、始めましょう」
「そうだな、何から話し始めるといい?」
「ここ最近のレイモンド王子達の事について思うことを」
「ふむ、最近はわしも『お休み』しておったのであまり会話をしておらんが、学園に入学してからのレイモンドは普通に、いやそれ以上に周囲にいる貴族令息や令嬢とうまく人脈を作っていたと思う」
「そうですか、それで?」
「それについては皆異論はないだろうか?
あればこの場で話してもらいたい」
「どうだろう、何か意見があるものは?」
誰も何も言わなかったことがよほどうれしかったのか、レイモンドたちがうんうんとうなずいている。
そんなレイモンドたちの様子を気にすることもなく、ミーセン公爵が先に進めていった。
「陛下、普通じゃなくなった部分からお願いします」
「「「「ぐはっ」」」」
(さすがミーセン公爵)
(ぶった切り!!!)
(王子達のあの顔)
「いつのころだったか、ああ、妙な令嬢と知り合ったと言い出したころからだな。
自分の事を 俺 などと言い始めて、なぜか食事中にもべらべらと話し始めたな」
「そうですわね、カトラリーの使い方はきちんとしていても食事中にうるさくて仕方なかったわ」
「そうだな、話す内容も
貴族の堅苦しさ とか 貴族の表情の乏しさ とか 貴族は地位にとらわれすぎ だったかな?」
「ミーセン公爵、途中からで申し訳ないが、我が家も同じ状況でした。
内容は覚えておらんがほとんど貴族の嫌なところ、だった気がするな」
「我が家もだ」
「うちもそんな感じでしたわね、あなた」
「そうだったな、あまりにくだらない内容で食欲をなくしたよ」
側近の親たちが口々に王の話にかぶせるようにして話していく。
しばらく話を聞いた後、ようやくミーセン公爵が手をたたいて話を止めた。
「話をまとめると、妙な令嬢と知り合ったころから貴族の礼儀作法やマナーについて批判していた、ということでよろしいか?」
その言葉に王、王妃、側近の両親たちもしっかり同意していた。
「ちょちょっと待ってくれよ」
レイモンドが思わずそう声を出した。
「なにか?」
「俺たちは別に批判などしていないぞ」
「そ、そうだ」
「食事中に会話を楽しむなんて家族なら当たり前だろう」
「お前たち、ちょっと黙れ」
ミーセン公爵がそう言うと、王子達は黙った。
「王子達の主観の話は今必要ない。
違うと思っていても周囲からはそう感じられる事を聞き取りしているだけだ」
「でも」
「お前たちの意見はあとで聞く。
その機会は与えるつもりだ。
それまでは黙って聞いておけ」
「で、でも」
「黙れ、と言っている。
まだ始めたばかりだ、ちゃんと聞け」
厳格な態度にレイモンドたちは黙るしかなかった。
もちろん両親たちからの冷たい視線も黙る要因の一つになった。
「次にですが、食事以外で変化があったことはなんでしょうか」
その後も出てくる話は王子達が貴族について文句を言っているという話ばかりだった。
そのたびに何か反論しようとする王子達だったが、ミーセン公爵のひとにらみで黙ってしまった。
親たちの話が一通り済んだ後、ミーセン公爵がルナマーリア達に水を向けた。
「先ほど陛下からも話があったが、『お休み』のままで話してもらっても構わない。
あなたたちの楽なように話してくれ」
そう言われ、ルナマーリア達は口を開いた。
「レイ達は貴族が嫌みたい」「貴族って面倒なんですって」「いやな貴族ばかりだって」
「貴族には自由がないって嘆いていたわ」
その言葉に周囲は静まり返った。




