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とうとう王子は自分の母親、つまり王妃のところに文句をいいにいった。
「母上~、聞いてください!
公爵達が王族である私をないがしろにしているんです。
これは王家に対する反逆だと思われても仕方ありませんよね?」
扉の外にいた王妃専属の護衛騎士がやんわりと止めたにも関わらず、王子は無理やり部屋へ入って行くとそんなことを大声で叫んだ。
「王妃様は今来客中です」
「おやめください、殿下」
侍女たちが口々にそういって王子を止めるのだが、
「うるさい!俺を誰だと思っているんだ!」
そういって思わず手を振り払ってしまうと、近くにいた侍女の一人が「あっ」といって倒れてしまった。
(しまった、うっかり手が当たってしまった)
内心焦ったが、今は王妃に会うことが先決だ。
「邪魔だ!どけ」
「何事かしら?」
そういって次の間から王妃が出てきた。
「あ、母上、聞いてください」
そういって王子が近寄ろうとすると、すっと王妃の前に専属護衛の侍女が前に立ちふさがる。
「どけ、俺は母上に話が「わたくしにはないわ」」
「へ?え、母上?あの・・・」
王妃はものすごくいやそうな顔で王子を見ていた。
「わたくしは今お茶会の最中なの、いつからわたくしの予定を邪魔してもいい立場になったのかしら?」
「あ、いえ、それは申し訳ありません」
「わたくしの息子はいつからそんなに頭が悪くなったのかしらねえ」
そういって深いため息をついた。
王子は何も言えず、下を向いた。
「出ていきなさい、あなたの話は聞く価値もないわ。
それから、わたくしの護衛や侍女に対する無礼を許せないわ。
どう責任を取るつもりかしら?」
「あ、それは申し訳「おだまりなさい、誰がわたくしに謝罪せよといいました?」」
「あ、あh」
「もうよい、この者をつまみ出しなさい」
王妃の言葉に護衛達が王子を扉の外につまみ出した。
「騒がせてしまったわね」
王妃が客の所へ戻ってそういうと、
「いえ、王妃様の御心お察しいたします」
待っていたのはルナマーリア達の母親たちだ。
「本当にどうしてあんな風になってしまったのかしら」
席に戻ると王妃はほうっとため息をついた。
集まっていたのは側近達とルナマーリア達の母親たちだったので、全員が王妃のため息をわがことのように感じ取れた。
「はぁ~、わたくしも休みたいわ」
お王妃が思わずそうつぶやくと、
「それいいですわね、王妃様、『お休み』しましょう」
側近の一人の母親がそんなことを言ってきた。
側近達も日々それぞれの母親に文句やら愚痴を垂れ流しており、母親たちもうんざりしていたのだった。
「でも娘のように『お休み』しては公務にも貴族社会的にも難しいのでは?」
ルナマーリアの母がそう心配をすると、
「わたくしたちの『お休み』はちょっと違うから大丈夫ですわ」
そういって説明をした彼女の話を聞き、その場の全員が楽し気に笑ったのだった。




