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「「「「あぁああああああ、ぜんっぜん会えないじゃないか」」」」
ルナマーリア達に会えなくなった王子達は連日発狂している。
(おい、また王子達が廊下で愚痴ってるぞ)
(作戦Kのせいで全然近寄れないしな)
(ケケケッ、われらのフォーメーションが破られるわけねえ)
(おうよ、あんな下品な女にデレデレしていたやつらには負けるわけない)
(ねえねえ側近の皆さまも、だけど、なんか最近キラキラ感がないわよね)
(そうそう、なんかしょぼくれた感じよね)
(以前はもっとデキル感で輝いていたのにね)
(殿下もね、私ちょっとあこがれてたんだけどな~)
(私もよ、さすが王子!ってオーラが出てたのに、今はなんかルナ様たちに対してねっちょり粘着質が出てるのよね)
(そうそう、なんかねっちょり感がちょっとね)
(気持ち悪いわよね)
(ねっちょり王子、ぷぷぷ)
「今日も近寄れなかったな」
「どうしたもんか」
う~んと皆で悩んでいると側近の一人がはっと顔を上げた。
「ルナマーリア様たちと一緒にいる令嬢を捕まえて一緒に行くのはどうでしょう」
「あ、それいいかも」
「うん、令嬢と一緒ならあの湧いてくるもりもり軍団も来ないだろうしな」
うんうん、いい考えだ、などと皆で話し合っている。
「ちょっといいかな?」
側近の一人が一人の令嬢に声をかけた。
「はい、なんですか?」
「えっと、君はルナマーリア嬢たちと仲良しなコンパル男爵令嬢だよね?」
「ええ、まあ」
「その、おれ、いや私たちはルナマーリア嬢たちとちょっと話がしたいんだが、最近なかなか話す機会がなくてね」
「そう、最近の彼女たちの周囲に近寄りにくくてね」
「いつも大勢の生徒たちにかこまれているだろう?」
「ソウデスネ」
「だから、コンパル男爵令嬢がちょっとルナマーリア嬢たちを連れてきてくれないかと」
「ナゼデスカ?」
「え、いやルナマーリア嬢たちと仲良しみたいだから・・・」
「ソウデスネ」
「えーっと、あの、君は男爵令嬢だろう?」
「ソウデスネ」
「俺たち、いや私たちは君よりも身分も上だろ?」
「ソウデスネ」
「それに、王子殿下直々のお願いなんだから、貴族令嬢として聞くのが当たり前じゃないか?」
「そうそう、貴族としてのたしなみだろう?」
「たかが男爵令嬢が殿下や身分が上の俺たちのお願いを聞けないわけないよなぁ」
はじめはお願いだったのが、だんだんと身分の事を持ち出し、威圧的に言ってくる。
(ぐぅううううううう、むかつくぅ、でも腐っても高位貴族にねちょくても王子だし・・・。
だが、殴りたい、あぁあ、なぐりたいぃいぃいい))
ルーナリアがそう思いながらこぶしを握っていると
「ルー?ここにいたんだ」
なんとルナたちがルーナリアを探しにやってきたのだ。
「ルーナリア嬢!」「マーガレット嬢!「エリザベス嬢!」「リーリア嬢!」
王子達が喜んで声をかけたのだが、
「どこに行ったかと思ったわ」
「さ、早く行こう」
「皆待ってるわよ」
「今日のデザートは皆の持ち寄りなんだから」
そういって王子達を一瞥もせずにルーナリアを連れて行こうとする。
「ちょちょちょっと」
慌てて王子が声をかけると、ルナマーリアがようやくこちらに顔を向けた。
「あら、王子、なんか用かしら?」
王子達の時が止まった。
「用がないなら行くわね」
そういってヒラヒラと手を振って立ち去って行ってしまった。
(ぷくく、ずっとルナたちに冷たい態度とっておいて自分たちが塩対応されたら石になるとか)
ルーナリアは王子達の姿を見ながらそう思い、ついでに
ねえ今どんな気持ち?どんな気持ち?と王子達の周囲を聞いて回りたい衝動に駆られるその自分の足を止めるのに必死になっていたのだった。




