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「 お父様、お母様お話があります」
公爵家のルナマーリアが食後のお茶を楽しんでいる公爵夫妻にそう話しかけた。
「おお、なんだ?」
「その、わたくし、『お休み』をしたいのです」
「「『お休み』?」」
「はい」
「え?」「どういう意味かしら?」
両親は突然の話に驚いているうえに娘が何を言い出したのかとルナマーリアの言葉を待っている。
「わたくし、貴族令嬢であることを『お休み』したいのです」
「「え??」」
意味が分からず混乱している様子の両親に、ルナマーリアは説明を始めた。
「なるほど」
「うふ、なんだかおもしろそうねえ」
娘の話をきいた公爵夫妻は楽しそうにそういった。
「でも、ルナ、『お休み』するとなると周囲がうるさくなりそうね」
「それでお父様とお母様にお願いがあります。
今回お休みするのはドドル辺境伯家のマーガレット様、タリーズ伯爵家のエリザベス様、スタバク侯爵家のクラーラ様、コメダス家の子爵家のリーリア様、コンパル男爵家のルーナリア様ですの。
皆様も本日それぞれ『お休み』の相談をすることにしておりまして、お父様たちも『お休み』について他家の皆さまとご相談していただけますか?」
「うむ、それぞれ根回ししておいた方がいいだろうしな。
予定を合わせておこう」
「王家への根回しも必要ですわ。
わたくし早速王妃様にお目にかかってルナたちの『お休み』についてお話ししなければ、ね」
「ありがとうございます」
そのあとは家令とメイド長を呼び、『お休み』の事を説明すると、それぞれ使用人たちを集めて伝えてくれたらしい。
ルナマーリアが自室に帰り、夜の支度を終わらせると、専属侍女筆頭のメアリーが意を決したように話しかけてきた。
「お嬢様、お伺いしたいことがございます」
他の侍女たちもメアリーの後ろに控えてじっと待っている。
「あら、もしかして『お休み』の事かしら?」
「はい、お嬢さまがお嬢様を『お休み』されるということはメイド長から通達がありました。
その、私たちお嬢さまの専属侍女はどうしたらよろしいのでしょうか?」
「そうね、心配させてしまってごめんなさいね。
実は『お休み』というのはね・・・」
そういってルナマーリアは『お休み』の事をメアリー達に説明した。
「だからね、家の中でわたくしが少し今までと違う口調や行動をするけれども、今までと同じように働いてくれたらいいわ。
わたくしが『お休み』中の行動についてメアリー達から教えてもらうこともあると思うの。
だからあまり気にせず、これからもよろしくお願いするわ」
そういわれ、メアリー達専属侍女たちは安堵した表情を浮かべた。
「お嬢様の『お休み』を全力でサポートさせていただきます」
そういって全員は丁寧にお辞儀をしてルナマーリアにそう言った。