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妖怪獣ファイターズ


「よし、俺の勝ちだ、カードか100円か、どっちにする?」

「・・・くっ!強いカードは惜しい・・・100円だ」


カードゲーム「妖怪獣ファイターズ」。

戦闘力のあるカードと特殊効果カードを並べて

ターンごとに攻撃、相手のライフをゼロにしたら勝ち。


小学生のカドマは、このゲームに熱中してカードを買い集め、

強いデッキを組んで、ほとんど勝つようになった。


ゲームショップのテーブルではもちろん賭け事はできないが、

誰かの家や学校の休み時間では、お金やカードを賭けるようになった。


相手の強いカードを取り上げ、不良を用心棒としてそばに置いて

ゲーム番長として威張り、恨まれるようになった。


大きい高級菓子の箱にびっしりと200枚以上のカードを集めるようになった。

「ヒヒヒヒヒ!」それを見るとカドマは笑いが止まらない。


周りの人間は恨みのこもった冷たい目で見ているのに。

やがてカドマと勝負する者は、どんどん少なくなった。


「ゲームってのは楽しく遊ぶもんだろ、お金かけるとか、

カードを取り上げるとか、ダメだろうが!」


クラス委員に注意され、不良が脅すと教師に密告されて

学校ではゲームができなくなった。




雨の日。

カドマはゲームショップで対戦相手を探した。


「よう、妖怪獣ファイターズか、対戦しないか?」

カドマと同じくらいの年齢の小学生が声をかけてきた。

帽子を深くかぶり、上着もズボンも黒一色。


「いいぜ」カドマは答えた。

五勝負ほど行って。カドマの圧勝。


カドマ

「おいおい、君は弱すぎだろ、デッキのカード、

しょぼいのばっかりじゃないか。もうやめようぜ、面白くない」


謎の子供

「ヒヒヒ、じゃあ俺が強けりゃ続けるんだよな」


「でもそのデッキでは無理だろ」


「もう一つ、別のデッキを持ってんだ」

ポケットから出し、テーブルにカードを広げる。


「あっ!」

その中にカドマでも持っていない超レアカードがあった。


「それ、よく手に入ったな」

「ああ、もしそっちが勝ったらあげてもいいぜ」


「本当か!嘘じゃないだろうな?」


「本当だ、神かけて誓うぜ。そのかわり、俺が勝ったら

そっちのカードを3枚もらうってのはどうかな?」


「・・・・」

「くれるのは、君が選んだ、しょぼいカードでいいぜ」


「・・・いいだろう。でも」

「ああ、この超レアカードはバトルには使わない。強すぎるからな」


「では。勝負!」

さっきまでとは違い、接戦になった。

ぎりぎりのバトル。しかしいつもカドマが間一髪で負け続けた。


悔しがりながらカドマは、箱から

重要ではないカードを3枚ずつ選んで渡していく。


(まあいいさ。箱いっぱいにあるんだから。

1回でも勝てればあの超レアカードが手に入る。

あいつの強さは俺とほとんど互角だ。何回もやってれば・・・)




「くっ・・・」カドマは失意の声を漏らす。

負け続けてカードを取られ、ついにデッキを組む枚数を下回ってしまった。


「いくら何でもおかしい。互角の勝負が続いてるのに1回も勝てないなんて」


「ヒヒヒッ。ゲームが終わるのは悲しい。もっと遊びたい・・・

取り上げたカード、返してやってもいいぜ~」


「えっ?」


「でも今度はこっちの超レアカードに対して、

 そっちはスピリットカードを賭けてもらう。これだ」


カードをポケットから出してカドマに渡す。

「人魂のカード?」


「君はこのゲームの達人だろう?学校やこの地区で有名だ。

それがこのゲームでボロ負けしたって広まったら

後ろ指さされてみっともないよねェ~」


「・・・・・」


「君は1回でも勝てば超レアカードが手に入る。

こっちは君のカードをデッキを組めないほど減らしたら勝ちだ。

悪い話じゃないだろう~」


「・・・いいだろう。カードを返してくれ」


「ヒヒヒッ!そうこなくっちゃあ・・・」


200枚のカードを箱に戻してデッキを組む。

「今度こそ・・・絶対に勝つ」


ザアッ! 雨音が強くなって・・・



数日後。小学校。


「そういえばカドマは学校に来なくなったな。どうかしたのか?」

「行方不明になったらしい」


「ええっ、家出したのか?」

「神隠しか、誘拐かも。とにかく行方知れずだ」


「こういっちゃ何だけどあいつ嫌な奴だったからな」

「ああ、俺もカード取られちまって恨んでる・・・

何十人もの恨みのカード持ってりゃ、

ギャングラーに連れて行かれたのかもな」


「ギャングラーって「妖怪獣ファイターズ」の?」


「そう、ギャング(マフィア)とギャンブラー(賭け事をする者)を

合わせた言葉の妖怪獣。


ギャンブルに魅了された人間の前に現れて、その勝負を挑む。

そのうちに魂を賭けさせて奪う、死神みたいなモンスター」


手本は新井リュウジ「めちゃコワイ最凶怪談」(怪談集)。

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