7.
「…はっ!外!おー!ここが、アズィーザカ!」
展開が早いが寝て起きたら到着してアズィーザカ。というか、なんというか、えーっと、その、
「暗くて何も見えない…」
馬車?の中はお母さんが行く前に精霊術でかけてくれたランタンのようなもので明るいのだがまー外は暗い。これぞまさに一寸先は闇ってやつだ。
「わーほんとにくらーい。」
「…あぁ、お父さんの語彙力が死ぬくらい暗い黒なんだ、これ、暗夜って感じする。あの、ホラーゲームの方のことじゃないからね?!
「この暗さ、昔兄さんに倉庫に1日閉じ込められた時の暗さによく似てる。できることなら今すぐにでも帰りたい、明かりが欲しい…会議出ときゃ良かった…」
「あれ、お父さんってお兄さんいたんだ。わたし会ったことある?」
お父さんが固まる。文字通り、石のように。
「…」
子供というのは時に大人より賢い生き物である、と昔ネットの記事で読んだことがあった。確かにそれはそうかもしれない。瞬時にこれは聞いてはいけないことなのだ、踏み込んではいけないのだと察知できるんだから。それは痛い程ほどやってきたことだから。
「あ、お父さん。誰か来たよ。」
お父さんが固まった時からずっと暗夜の窓の外をのぞいていたのだが途中で2~3人の魔族がこちらに歩いてくるのをみた。てか魔族って何人で表していいのかな。まぁアレは人型をしているし別に何人でいいか。
「あ、うん。ありがとうフェーテ、降りようか。」
タクシーのドアのようにドアが開きステップを使って地面に着地する。
おぉ、これが馬車?か、御者もいないのに自動で動いてなんかよくわからない生物が綱を引いている。日本の自動運転みたいなものかなこれ。すごい技術。
(フェーテ シラナイ?コノコタチハエルフノスムモリニイルンダヨ)
「へぇ、名前はなんて言うの?あの種類の名前。」
(シラナイ)
知らないんかい。
「フェーテ。こっちにおいで。」
ーーーーー
人間が…来た。
人間の国とは違い常に夜のアズィーザカ。魔族には猫のような夜目が聞くから明かりは必要ないのだが人間が来るということで特別に火が灯された魔王城一帯。
「お待ちしておりました。グローヘルエ家当主と御息女様。私は誇り高き魔王様に仕えるキシュレッテ、と申します。お見知り置きを。」
キシュレッテ様が使者に一礼をする。それに続けて私も。
「御出迎えありがとうございます。リター・グローヘルエです。フェーテ。こちらはアズィーザカ国王の側近の方々だよ。ほら、挨拶して。」
クーグレイスからきた使者に急かされ彼の後ろにいた身長が小さき少女は貴族の礼をした。片足を後ろに引き膝を曲げて挨拶する片足を後ろに引き膝を曲げて挨拶する、所謂カーテシー。でも、カーテシーって、この世界では王族のみが許される挨拶のはずだ。なぜ、使者の娘が、?
「初めまして。クーグレイス国から参りました。フェーテ・グローヘルエと申します。短い間ではございますがよろしくお願い致します。」
そう言って顔を上げた彼女の顔を見る。目が、
「…宝石、」
目に宝石でも埋め込まれているのだろうか。左右で違う色をしている、オッドアイというやつだ。
でも普通の目とは違う。絵に色が塗られたような色ではなく宝石をカットした時にみるあのキラキラ感。このカットだからこそ宝石は輝くってやつ。
「…?」
はっと息を返す。見とれていたのか、あの目に。
慌てて彼女に挨拶をする。そう、練習通りに。
「……初めまして!わたしナデュラ!あなたがこのアズィーザカにいる間の遊び相手に選ばれたの!光栄でしょ?貴族の子供と直接遊べるだなんて!よろしく!」
握手、その意味で片手を差し出す。他の大人達が言うように人間はプライドの塊なら激怒するはず。さぁ、どうでる?人間。
ーーーーーーーーー
第一印象、どこかの誰かさんを彷彿とさせる言い回し。そう思った。
(フェーテ二タイシテ シツレイ ケス?)
「……」
「私」は短気だと言われることが多かった。それはこの世界に転生したとはいえ変わることはなく。幼少期のころは直ぐに癇癪を起こすほど酷かったが今はある程度コントロールできるようになっていた。それでもこの言い方は癪にさわる。
「……よろしくお願いします。」
平常心という文字を心の中で唱えながら差し出された手を握り握手をかわす。あと笑顔も忘れずに。
「あ、うん、。」
呆気に取られたような顔だ。そんなに不思議なことしてないんだけどなぁ。これが素なのかそれとも試されているのか。はてさて。
「フェーテ。自己紹介は終わった?」
「終わったよ!初めての友達が魔族の子になるかもしれないからちょっと緊張したけど上手くできた!」
「そうか、それはよかった。じゃあ行こうか。」
「では、我が王の元へとご案内致します。」
キシュレッテさん?が歩いているとなんかまわりの空間が歪んでいるように見えるんだけど気のせいか?これ。
「フェーテ。」
「あ、はーい。」
お父さんに差し出された手を繋ぎ暗夜の中で微細な明かりを放つ王城内部へと足を進めた。