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灰となるまで、復讐を.  作者: 氷上 冬華
1.0 前日録及びプロローグ
6/38

6.

人間に良い奴は少ない。魔族のものはそれが口癖だった。我々の鉱石を安く買い付け高く売る。汚い貴族に売り懐を肥やしているんだと。誇り高き魔族でありながらもバカバカしくも魔王様に逆らい奴隷という烙印を押されたものでも人間は悪だと言う。

だが、私は決してそうだとは思わない。何故ならば真実というのは大体妄想とは異なるものだからだ。己の目で見ることにこそ真実はある。

「誇り高き魔族の王にご挨拶申し上げます。」

私が永遠に従わなければならない法のような御方、魔王様。この御方でさえも例外ではない。己の目で見て間違いがあるなら正さねばならぬのだから。それが王の補佐をする臣下というものだ。

…まだ8歳だけど。

「確か…お前はロバーグ家の、名前は?」

「はい、ナデュラと申します。魔王様。」

流石の魔王様、と言ったところか。圧がすごい。

やばー。すごーい。本物ってやっぱすげー。ちゃんとしとかないと後でお父様に怒られるから。静かにしてます。そんなにこっちに視線を送らなくても大丈夫ですよーお父様。

魔王の隣で直立不動で仁王立ちをしている父に伝わるようにぐっと親指を立てた。

「…確かに年齢的にも適任か。よい、ナデュラよ。お前は人間についてどう思う。」

「人間、ですか。」

予想外の質問だ。どう答えるのが適切か、果たして私の思う答えは魔王様にとって良いのか悪いのかわからない。だから少し答えに迷う。うーん。

「…そうですね。私は、」

「わかりません。」

「それは何故?」

間髪入れずに魔王様は答えの続きを求める。これならいける。

「はい。何故ならば私は人間と会ったことがありません。教科書や先生から教えられる人間とは全て先入観が絡んでいるように思います。誇り高きこの国ができた経緯、今までの歴史、そこには確かに人間とのいざこざがありました。でもそれは国家と国家の争いであり一人間と一魔族の問題ではありません。つまり何が言いたいのかというと、実物の人間と会い話をしたことがないので人間というものの理解不足だということです。」

なんか言葉おかしい気がする。けどまぁ誇り高き魔王様なら理解してくれると信じている。

「…そうか。それなら良い。ナデュラと言ったか、いい考えだ。確かに魔族の大半、いや9割が人間は悪だと思っているものが多い。貴族の連中も大半がそんな考えのヤツらばかりだ。だが、私はそうは考えない。どんな種族であろうが共存はできる。魔族にはできぬことを人間にはできぬことを獣人にはできぬことをそれぞれが補うことでよりよい暮らしをそれぞれ手に入れられると私は考えているからだ。その考え方、大事にすると良い。」

「…っはい!ありがとうございます!」

まさか両親以外でこの考えを肯定してくれる方がいるとは。

「…よし、この者をグローヘルエ家の案内役としよう。キシュレッテ!」

キシュレッテ様は魔王様の最側近の人で確か空間魔術を使える御方だ。三次元空間三次元という感じで空間を介して移動ができるっていう便利なやつ。

「お呼びでしょうか。」

さも当たり前かのように魔王様が座られている椅子の後ろからすました顔ででてきたキシュレッテ様。シュールだ…

「明日訪問予定のグローヘルエ家だが確か事前情報だと娘を同行させると。」

「はい。ですが、公の情報だとグローヘルエ家に()()()()()()()()()()()()()()()()()。」

「そうだ、だがクーグレイス国王が極秘にと娘がいるという情報をこちらに渡したのにもなにか意味があるのだろう。そこでだ。グローヘルエ家当主と会談をしている間はその娘をこのロバーグ家の娘に相手させることにした。」

「…了解致しました。ロバーグ家の娘。」

「はい。それと、娘ではなくナデュラです。ロバーグ家の子は私だけですが名前があります。そちらで呼んでいただけると幸いです。キシュレッテ様。」

ひとつ間違えば口答えのように聞こえると思うが、どうだろうか。この方を私はよく「知らない」から。

「わかった。ナデュラ嬢。これでいいか?」

「ありがとうございます。ですが、私に嬢はいりませんよ。だってほら似合わないじゃないですか。」

嬢が似合わないと言う理由はひとつだけ。私はスカートというものが嫌いなのだ。勿論、絶対に着ろ。着ないとぶち殺す、みたいなことを言われたら着る。命は大事に、だから。でもなんというかほら、スカートのひらひらって気持ち悪いから。

「…ズボンを履いているからと言って貴方の性別が変わるわけではない。だから嬢でいいんだ。」

「承知致しました。」

目上の方にする「サイケイレイ」をする。ん、サイケイレイ…ってなんだっけ、聞き馴染みがある言葉だが意味がわからない。

「ナデュラ嬢。何日かは使者の方にお会いするんだ。貴方には明日まで最低限のマナーを学んでもらう。いいな。一日で全て覚えろ。」

「はい!」

それにしても同い年くらいの人間に明日会うのか。先入観に囚われないように人間との交流を楽しもう。

主要キャラです。主人公?フェーテです。

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