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灰となるまで、復讐を.  作者: 氷上 冬華
1.0 前日録及びプロローグ
4/38

4.

「焼肉行きたいな。ねぇ、祐輝奢ってよ。」

夕方、学校、教室、机。いつも一緒にいる仲良し3人グループ。それが一青夜(ひととよい)橋部御空(はしべみそら)市ヶ谷祐輝(いちがやゆうき)だ。一言3人グループを作ってくださいと言われればこの3人で集まる。互いに()()ありのそんなグループだ。まぁ定時制高校にましてや夜間部なんかに通っているヤツらはほぼ全員がワケありだ。

「嫌だよ。俺そんな金持ってない。」

「えーじゃあ御空でもいいよ。3人で行こうよ。焼肉。絶対3人で行きたい!」

「夜…焼肉行くのはいいけど自分のは自分で出しなよ。」

「ちぇ。わかったよ、じゃあ自分で出すから行こうよ。」

「それならいいよ。祐輝は?行く?」

「あーそれなら行く。いつ?つか食べ放題のところでいいか?」

「当たり前。食べ放題以外ありえない。えーっとバイトがなくて今週空いてるのは日曜かな。夜は?」

「私?私は別にいつでもいいよ。」

「俺も。」

「あーでも焼肉も行きたいけどカラオケも行きたいなぁ。ね、どっちも行くってのはどう?」

「私はいいよ。祐輝は?」

「金足りるかなーまー親に頼んでみるわ。」

「おけ、じゃ決まり!」

高校生活はそれはそれは楽しい日々だった。

この3人は謎の口論に巻き込まれたり半年学校に来なかったりあったから毎日が楽しいわけではなかったみたいだけれど。小学、中学の時は皆色々あったみたいだし。でも4人…いや3人でいるのは凄く居心地が良かったみたいだから。

一青夜、彼女は3人の中でも精神が幼い人間だった。歳がひとつ上だということを忘れるくらいには。身長も低く童顔、けれども学校の中では頭がいい方で夏に作文を書いた際には1年生で校内優勝、県大会4位という成績を納めた。感情が態度にでるんだよね。不機嫌な時はわかりやすい。

橋部御空、彼女は3人の中でも全ての物事において外からの視点で考える人間だった。中立の立場を保つことが多く言い方もかなりうーんと来る時があり夜がイライラすることも多かった。まぁ夜は短気という性格があるからかもしれない。絵を描くのが得意で3人の中では1番うまかった。結局美術大学に進んでいたし。

市ヶ谷祐輝、彼は友達にはかなり温厚な人間だった。嫌いなやつのことはとことん嫌いでそいつに隠れて中指立てるとかざらにあったし。男だからと言うのもあるかもだが窓を素手で破壊したことがあるらしい。あとは…人は殴ったことあるんだっけ、うわぁ、こえーって思ったこともあった。でも、なにがあってもあの人たちは友達はやめないってそう決めていたみたいだから。

「そうだよ。ウチの付け入る隙なんて最初からなかったわけだ。」

さああっと海に近い墓地に潮風が吹く。

ここは○○市にある共同墓地。高校の中でもウチの憧れていた3人が眠る共同墓地だ。3人はそれぞれ去年と今年に死んでしまった。他殺によって。事件性があるとみられたこの3つの事件は3つとも未だに捜査の手が進んでいない。

「酷い話だよね、警察官も第一発見者を疑うってことをいい加減覚えた方がいいよ。そう思わない?夜ちゃん。」

死人に口はない。物理的に彼女は燃やされたし、私が燃やしたからね。

夜空で一際大きな3つの星。ひとつは光を失いかけ、ひとつは点滅し、ひとつはふと闇に飲まれた。ウチはくすりと笑い、先程砕いた灰を海に落とす。風に乗りさらさらと下へ流れていくと思った灰はウチの想像を裏切りぼたぼたと落ちテトラポットにあたり風に流され海に落ちる。さっきまで雨が降っていたからかな?少し塊になって残っているみたいだ。掘り返された墓の石が所々割れている。どこかの誰かがみたらネットという深い海の中で自分の(つら)も見せないまま「ししゃへのぼーとくだー」とか言ってきそうな感じ。そう言えるのはウチらのことを何も知らないから。つまらないネットの中でしか物事を言えない奴らのくせに。せめてウチの前でそうやって言って欲しいものだ。どうせ言えないんだから。とはいえ冒涜というのは不正解。ウチがしているのはただの弔いに過ぎない。ウチがこの手で殺した人達の。死んだ人の血というのは生暖かくて良い感じだったよ?生きていたというのが感じられたんだから。ってきっと夜ちゃんは言うんだろうな。だってあの子狂ってたし?

「ありがとう、夜ちゃん。ウチに愛憎を教えてくれて。」

「ありがとう、御空ちゃん。ウチに嫉妬を教えてくれて。」

「…ありがとう、祐輝。ウチを好きになってくれて。でも、」

感謝していることもあるのだ、3人には。だからこの行為は死者への冒涜ではないはず。それでもウチは3人を殺す程憎んだ。憎まざるを得なかった。

一青夜を殺した時にくすねた煙草を上着のポケットから取る。箱と中身は少し血に染まっていた。血に染った煙草を1本取り出す。ライターは使い切ってしまい持っていないのでお供えした燃え尽きかけの線香から火を移し煙草をふかした。

「…にっが。」

初めて吸う煙草の味。かなり苦い、だけど。

沢山の空気と共に吐き出した煙は夜明けの空へ昇る。煙は掻き乱す星となる。

一青夜は性格悪いですが常識は3人の中で一番あるようです。ちなみに血液型はAB型です。

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