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28.

狂った現実理想とは!

「……」

人って死んだら本当に冷たくなるんだ。動物も、人も、みんな等しく冷たいんだ。てことは、お父さん……冷たいから……死ん……

「……いやいやそんな訳ないじゃん、てか愛してるって言った?は、?愛してるってなに?具体的にどこを?わたしのどこをだよ、性格クソ悪いって言われてた「私」のどこを愛してるだってっ?!てか、なんで?親がわたしより先に死ぬとか有り得ないんですけど。」

有り得ない。だってわたしは親がいなくなったっていう喪失感を感じたくないから「私」が先に死のうって考えたのに。

お父さんが地面に寝転がる原因となった場所を視認する。ーーーーにある管という管から解放された血が有り得ない速度で逃亡している。

有り得ない量で余計に腹が、たつ。

「……ぅ、ね、ぇ。そこにいるんでしょ、治癒……の精霊ならこれ、治せるの。」

(……ザンネンダケド アイツラデモ ムリ ーシテルモノハ ナオラナイ)

精霊は顔を下に落としているわたしの目の前までやってきて残酷な真実を告げた。その言葉は今1番欲しくない答えで望んでいない結末の1歩で。例え殺せない存在だとしても精霊の羽を引き裂いて足で踏みつぶせたらと思ってしまった。やりたいと思っていてもわたしにはやる度胸なんかないしできないと分かっているのだけれど。

「……治せ、ない。そう、そうか、それなら本当に、」

魂が抜けた抜け殻のように無の想いで自身を納得させようとそうかという言葉を何度も口にする。

(フェーテ ゴメン ネ……デーーーーーー)

いつもなら鮮明に聞こえる精霊の声も今はノイズがかかりまくった雑音にしか聞こえない。だって使えないと分かったのだから。雑音を聞くために耳にリソースを割いている余裕はない。このままここに留まってもいいのだけど他になにか出来ることがあるはずだ。炎がまた「私」を包み切る前に。探せ、探せばきっと。なにかわたしに出来ることはないかと頭を捻って周りを見渡す。見渡すわたしの視界に映る世界の中に2人の人間の姿が写った。そうーんでしまったお父さんの姿と床に転がっているお父さんを「殺した」おじさんの姿だ。

「……そうか、そうか、そうだ、これは喧嘩じゃないけど、ほら昔から喧嘩両成敗って言うよね?だったらお父さん殺った相手も死ななきゃいけないはずだよね?そうだよ、殺さなきゃ。それでフェアじゃん。……うん、そうしよう。早く殺そう!」

(ーーーー!ーーー ーーーーー!ーーーー!)

靴を履いていない足で1歩1歩歩みを進める。おじさんを殺すために。色々な破片が散らばり足裏に傷が付いているかもしれない。不思議と痛みはないのだ。脳がその痛みだけをシャットダウンしているのかな。どちらにせよわたしには好都合だ。

「……なにで殺ろうかな。キシュレッテさんに教えてもらった魔術?それとも陛下の魔術で拷問道具でも創る?いやいやそれじゃダメか。じゃあ……」

ぺたぺたと進めていた足を、歩みをとめる。もうおじさんの目の前に来ていたようだ。それにしてもこのおじさん、普通の人よりも若干黒い血がお父さんと同じぐらい流れているのになんで死んでないんだろう。全然意味わからない。見た感じ息をしてるし殺す前にお父さんを殺すように指示したゴミでも聴いてみようかな?

「ねぇおじさん。わたしの声聞こえるよね。おじさん殺す前にさ、聞きたいことがあんだけど。」

「…………私も、貴方に聞きたいことがあります。貴方の質問に答える……代わりに私の質問も、答えて貰えませんか?」

おじさんは適度に血を吐きながらわたしに提案を持ちかけた。わたしを視界にいれようとしているのか床に肘をつき身体を起こそうとしている。一生床に這いつくばっていて欲しいと思いつつも紳士なわたしは足を出さずに答えた。

「うん!嫌だ!」

(ーーーー…ーー ーーーーーー…)

「おじさんの質問に答えたらさ、おじさんは気持ちよくなって死んでいく気がするんだ。だから絶対にやだ。そんなのフェアじゃないじゃん。お父さんだって知りたいこと山ほどあったはずなのに。可哀想…あ、言っちゃった。まぁいいか。」

「…やはり、あなた様はあの方の…っっっっ!」

おじさんが納得したかのように首を縦にふる。というか大体このおじさんがわたしになにを聞きたかったかなんて100想像がつく。どうせこうだろう?あなたはリター様のご息女なのですか?でしょ。軽々しく口に出さないで欲しい。だってわたしだけのお父さんなんだから。気持ち悪い。きもいきもいきもいきもいきもいきもい!

あ、手が滑ったとかじゃない。意図的に、やりたかったから。わたしはうるさいおじさんの口を塞ぎたかったから起き上がれていないおじさんの太ももにお父さんを殺した剣で突き刺した。

「キモイ声で泣かないでくれる?昔の私だったらイケおじボイス助かる〜とか言ってたかもしれな、いや「私」イケおじ趣味なかったな。じゃあキモイおっさん声で泣かないでくれない?わたしの綺麗な耳が腐っちゃう。」

「はははっ…す、すみません。それで、ご息女様、あなた様が私にお聞きしたいこととはなんでしょうか?」

「…」

なんでこのおじさんが話の主導権を握っているの?仮にも太腿に剣突き刺してるんだけど。今から喧嘩両成敗だからおじさん殺すっての分かってないのかな?だったらもっと刺して痛みを苦痛を与えればわたしが上の立場だって分かってくれる?いやわからせないと。わたしがお父さんのためにおじさんを殺すんだから。全てはわたしの大好きで大切で一番のお父さんのため。お父さんのためお父さんのためお父さんのためお父さんのためお父さんのため!「私」の「パパ」のため!「パパ」!「パパ」!待っててね!いまこのゴミを「パパ」に好きなだけ殴る権利をあげるから!

「あははっ!もうなんでもいいや!聞きたい話もどうだっていい!いまは早く!1秒でも1コンマでも早く「パパ」の元に送ってあげなきゃ!」

突き刺した剣を引き抜く。そして狂気に染まった顔で何度も何度も。ーをーーに突き刺した。

目の前に空中に赤い鮮血が飛びまわる。それは彼岸花の花弁が風に吹き荒れるかのように。手がべったりと汚れても。何度でも。

「あはははははは!!!!!!!!!!楽しいッ!!!!」

そこから先、人を刺していた時の記憶は何一つない。どこを刺したのかも覚えていない。きちんとした記憶があるのはウルクに名前を何度も呼ばれた時だった。室内は炎で蔓延しお父さんも火の海に呑まれそうになっていた。きちんとした場所で弔わないとという本能が働き空間魔術にお父さんをしまって部屋を出た。わたしが刺しまくったおじさんは何故か首にナイフが突き立てられて死んでいた。ありとあらゆる内蔵が腹から出ていて気持ち悪かったな。

部屋から出たあとは…えっと、なんだっけ。あ、お母さんが玄関近くの広間で戦ってたんだった。多分おじさんの部下と。広間は火の海で熱いはずなのに部下の人達は普通に戦ってて凄いなって思ったんだった。それで、精霊術でお母さんは応戦してたけど不意を疲れて背中から刺されてえっと、「あっ…」って声出しちゃったんだ。そしたら飛んでもない速さでお母さんがこっちに顔を向けて安堵したような顔してなんて言ってたんだっけ。そうだ、お父さんからは聞けなかった「よかったぁ、だぁーいすき」って言ってた。そうだよ、お父さんだって「愛してる」とかいうよく分からない言葉じゃなくて「大好き」って言ってくれればよかったのに。大好きって言ったお母さんはそのまま砂になっちゃった。エルフは死んだら砂になるって聞いてたけど本当だったんだ。残ってたおじさんの部下はウルクを心配した騎士団の生き残りの人達が殺してくれたんだっけ。あーあ。両親、死んじゃったな。もうなんも考えたくないなぁ。

屋敷は炎で崩れ落ちわたしはウルクに手を引かれるまま何かあった時用の避難所まで逃げることになった。

けれど、不幸はまだ続くことをこの時のわたしは知らなかった。

そういえば魔術って詠唱が必要って話を記憶の彼方に置いてきてると思うんですがなぜ創造の魔術(魔王の魔術)と空間魔術は詠唱してないんじゃないって思ったんですよ自分で。教えてもらった時に詠唱?なにそれおいしーの?って言われたので気合いでできるようになりました。ちなみにこの2つしか無詠唱はできません。他は普通に詠唱します。

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