23.
終わる!よっしゃー!
「.......」
揺れる。音を立てずにただ馬車…?は揺れる。
「うーくらーい…」
暗いのやっぱり怖いんだお父さん。確かに行きにランタン役してくれていた光のせーれーさんは御役御免!って感じでいつの間にかフェードアウッ!してるし。ランタン役がいないから馬車?の中は真っ暗だし。いやまぁ精霊自体がランタンというわけではないんだけれど、ひとつわかることはわたしにはお母さんがやってたようなランタンは作れないということだけだ!
「…お父さん、寝てたら?暗いのが怖いなら眠っておけばすぐお家に着くよ!多分!」
「フェー…!それ名案だね。さすが僕の娘!じゃあフェーお父さんちょっと休むから着いたら起こしてね!!!!」
「はーい!」
「…zzzz」
「…はやっ」
日本のテレビアニメでみた某メガネ君並の睡眠スピードだ…うちのお父さん、やべえ。
と、まあそんな冗談交じりなことは一旦置いておこう。わたしの頭を悩ませているモノというか、陛下から貰ったコレ。わたしは今その問題のモノのことについて陛下と話したことについて思い出していた。
ーーー
「やぁ待っていたよ。フェーテ嬢」
「陛下。こんにちは。」
「あぁ、出立直前に呼び立ててしまってすまない…ってキシュレッテどうした。」
「ぇ…なんでもありません。我が王よ、私は外で待機しております。御用がありましたらお呼びください。」
キシュレッテさんはこちらをちらりと見た後に物言いたげな顔をしながら部屋を出ていった。余程先程わたしが言った事が気になるんだろう。そう、「わたしはこれが2度目の人生なんですよ。」これだ。まさか言ってみたかったランキング上位のセリフをさらりと言えるとは思っていなかった。いま?最高の気分だよ。「私」はね。
「…まぁいいか。座ってどうぞ。さてフェーテ嬢。君にちょっと渡したいものがあって来てもらったんだ。」
「渡したいもの?あ、椅子失礼します、よいっと。」
渡したいものとはなんだろうか。まさか金ではあるまい。陛下は悪代官みたいな悪嫌いそうだし賄賂でもないだろう。
「これだ。」
そう言って陛下が創造魔術で創りだしたのはまぁ十数年生きてきて第二の人生(笑)を歩んでも見たことのない形の木箱だった。
「…ハコ。箱ですね。」
「あぁ。手に取って中を見てみるといい。」
「あ、はい。」
普通に開くのだろうか。この箱。
両手いっぱいなほど大きな箱を両膝の間で固定しカコッと開く。いやカコッじゃなくてスポッだな擬音は。そんなことどうでもいい。問題は中身だろう。開いた蓋を陛下が差し出した手の上に感謝しながら置き少しだけ底の深い箱の中身を覗き込む。
「…花が、2輪…入ってる、」
「その花は俺が育てた新種の花なんだ。水を与えなくとも限界まで成長済みだから普通には枯れることはない。」
「あ、りがとうございます。もしかしてこれお土産ですか?」
「お土産でもあると言っておこうか。んで、この花がなにかって話だな。正確にはどちらか一方の生命反応が消えかけた時に枯れる人間の魔道具であるハザードランプのようなものだ。」
ようはナースコールみたいなものなんだろう。あぁいや防犯ブザーとかの感じに近いか。
「ということは二輪ある理由は対だからですか?」
「正解。片方をフェーテ嬢の大切な人に渡すといい。」
「…。」
お父さん、お母さん、せーれーさん、マリ、エルフのクソガキ、御空、さて、誰に渡すのが正解なのだろうか。こういう「大事なアイテム」プレゼントイベは好感度上昇確定イベ。なら、選択は間違えられない。それにこの6人は既に好感度がかなりある人達だ。渡してもなぁ。スチル解放とかゲームじゃないリアルで起こるわけないし、ならいっそ好感度がそこまで高くない人に渡すというのはどうだろうか。例えば、目の前にいる陛下、とか。…総合的に考えてもうん悪くない選択肢だ。例えば今後ウチの国と魔族が戦争をしたとしよう。国はわたしの存在を知らない。だとしたら単身魔族に加勢して恩を売れば思わぬ所で役に立つかもしれない。若干欲が混じってはいるが仲良くしておいて損は無いからね。
「…ならわたしは陛下に対の花を渡します。陛下は多分わたしが二アドとしての本気をだして戦ったとしても互角になりそうなくらい強そうだしライバルじゃないですけど純粋に仲良くしたいなって想いもあるので!」
「…フェーテ嬢は俺と戦って互角になるって?それは本気?それとも冗談?」
「本気ですよ。今世においてわたしは未だニアドの力を行使してなにかを壊したことはありません。いくら魔族と精霊が相性が悪くても二アドのわたしの感情が怒りに変われば多分陛下の爆発と同程度の威力があると思います。というかその倍になるかも。」
マリが言っていた。二アドは世界を終焉に導けるって。だからこそ世界を破壊する資格があるものにしか二アドは選ばないって。
「…その言葉が嘘でも本当でも俺はどちらでもいいさ。フェーテ嬢。俺に一輪くれるんだろう。なら応用といこう。昨日教えたら俺の魔術を使ってその花を閉じ込めたブローチを作ってみてくれ。それを俺が貰う。代わりにフェーテ嬢には俺が花を閉じ込めたネックレスを作る。どうだ?」
「…!了解です陛下!」
ーーーーー
という回想を離さみつつ問題のコレ、あなたの命の防犯ブザー〜使いやすさを添えて〜を貰ったわけだが、後悔は特にしていない。実際に好感度は花を渡したことにより上がっていただろうし。問題はそれじゃない。これ、どうやら1回首からかけたら外れないっぽいのだ。身体を揺らせば普通に揺れる。が、外そうとするとなんの力か知らんが動かない。例えるならそうだな、あなたのためなんだからとか言って肌身離さない携帯に勝手にGPS入れられて消すのにはパスワードが必要みたいな?いや例えがわからなさ過ぎる何考えてんだわたしは。
「…はぁ。まぁいいや。取れないなら別にそれで。」
考えるのをやめよう。無駄な足掻きだとわかった今これから考えないといけないのは今日の夕食のことだけだ。
馬車?が境界線を越えた。暗夜の国を抜け太陽が大地を照らす。良い明るさなのか分からない。太陽は生きる生物たちにとって大切な存在なのかもしれない。太陽がなければ作物が育たないように。けれども光あるところに闇あり。
今回のアズィーザカへのお出かけはそれを再認識するいい機会になった気がする。悪人がいない場所なんて存在しないということを。
「なんか、校外学習を終えた気分だな。」
はー。もし家から追い出されたら陛下のところで使用人として雇ってもらおうかな。永久雇用でのんびりしたい。命の防犯ブザーもあることだしね。
「でもま、楽しかった。」
窓辺にかっこよく肘をつき顎をのせる。うん、絵になってる気がする。さ、帰ろう。お母さんが待ついまの家へ。きっと、みんなまた会えるはずだから。
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これにて序章~完~です。次回から本編。
泣き(´;ω;`)
友達からはよ本編!と急かされていたのでがんばりました。ありがとう友よ、そしてこれを見ているそこの我が友よ、シークレットモードで見ないでくれ…
本編はちょっと書き溜めがあるから楽できるかなって思ったけど書き溜めは間違いなく書かなくなるのであのすぐだします、