18.
マリ、それはエルフ、そして森に住む全ての生物が崇拝する神の名である。マリは大きな木の形をしている。所謂神木である。言い伝えによれば元々は女神であったとか。マリは二アドを定め精霊を生み出す母なる存在。その力は自然にとっての永遠の資源であり富であり宝である。だが、何事も使い方を間違えればこの大陸は火の海になる。当然だろう。精霊を生み出すほどの力を持つもの。二アドの感情に一喜一憂する精霊。その精霊100体分の力を持つマリ。エルフにとっても精霊にとっても勿論、全ての種族にとって本来は崇拝しなければいけないとても大事な存在なのだ。
「……とまぁこんな感じですね。このコンティネントができた時からあるって聞いたことがあります。だから……えっと、樹齢2500歳くらい?」
(イキガミトモイウンダヨー)
「あぁ、それも言わないといけなかったね。ありがとう教えてくれて。エルフの中にはマリのことを生き神と言うやつもいるんです。近くにいけば脳内で二アド限定ですけど会話もできますから多分そういう理由で、ですね。」
「……へぇ。会話も。それはすごいな。」
「といっても特に世界のコンカンを揺るがすような情報とかは教えてくれないし、そこまでマリは万能では無いです。女神だった時の何万分の1とかの力しか行使できません。確か……この話はシュテアンが関係してくるんだっけ、」
「シュテアンといえば存在自体が謎だというあの種族のことか……かな?」
わたしが子供だから怖がらせないようにと言い直したのだろうか。別にいいのにそんな気遣い。だってこの顔だよ。怒られても威圧されてもうわ!かっこいい!スクショしてぇ〜!で終わると思うし、それに本気で怒った「パパ」とめちゃ不機嫌な「パパ」の方が何億倍も怖いから。
「そうだと思います。でもわたしもシュテアンについては知らないことの方が多いです。6人しかいない、一人一人がとんでもない力を持っている、そういった一般的に知られていることしか知らないですね。」
ふわふわ?いやひらひらと宙を飛んでいたせーれーが時が止まったように静止し聞いた事ないような声色をして言葉を発した。
(アー フェーテウソツキダ ホントハ マリサマカラキイテルノニ)
……わたしが、「私」が嘘つき。それは今に始まったことじゃない。遠いむかしから「私」は嘘つきなんだよ。キミたちは知らないと思うけどね。
だから聞かなかったフリをしよう。耳を閉ざして嘘がウソとバレないように普通を保つの。これはきっとここでも通用するから。
「そうか。話してくれてありがとう。フェーテ嬢。お礼……と言ってはなんだが2つ良いことを教えてあげよう。1つ目は俺の使う創造の魔術について。見た限りフェーテ嬢には素質があるし恐らく使いこなせると思うんだ。あぁ、そうだ。ついでにキシュレッテの空間魔術も教えてあげたら?」
まさか自分に話題が振られるとは思ってもみなかったのか少し動揺しながらキシュレッテさんが答えた。
「え、私の……ですか?お恥ずかしい話、私人に教えるの苦手なんです。いつもアレを使う時直感でやっているんですよ。というか、その、大変申し上げにくいのですが……殆どの魔族は皆生まれ持った直感で魔術を行使しています。」
この顔で教えるのが苦手と。ふむ。もしそういう作品があったのならばふ、そうか。ならここは特別授業だとか陛下が言ってそ、そんなまだ人が近くに……ってなって腐女子の方々がきゃーって展開になるんだろうなぁ。でもそういうのって頭で考えてはいても現実にならないのが常識なんだけども。アズィーザカは主従関係の強き国。所謂垣根を越えてのそういう展開はないでしょ。ましてや国家のワン・ツーだし。
「……嬢、フェーテ嬢?大丈夫か?先程から上の空だったようだが。」
「すみません。ちょっと考え事をしていました。はい。もしよろしければ御二方の魔術……教えて下さると嬉しいです。」
(ム ボクタチイレバ ナンデモデキル ノニ!)
精霊術は万能では無い。あくまでも自然にあるものしか召喚できないのだから。対して、創造の魔術は違うと考える。創造とは果たしてなにか。それは「私」は0から1を生み出すこと、だと考えている。地球に住んでいた時、地球には生物が突如現れたとされている。それは神が生物を創造したからだと。その創造と意味が全く同じなのだとしたら、この魔術はきっとそういうことなのだろう。
「あぁ。勿論だ。じゃあ早速俺の魔術のやり方についてだが……」
深い夜はまだ続く。でも終わらない夜はないのだけれど。
ーーーーーー
首が痛いっすわぁ。次回、記憶は過去の思い出だ。
See you the next story!