17.
そういえばこれ前章です。もうちょっとで全部はじまります。構成考えてたらなんかとんでもないことになりそう。
ナデュラと仲良くなりお父さんとナデュラの顔合わせをすませ、アズィーザカの国王と公式の食事会も終わらせ(お父さんにすっごい話しかけてた。なんか陽キャの後輩って感じがしたね。うんうん。…青春じゃねぇか…はは、)夜になりました。良い子はもう寝る時間ですね。外は相変わらず暗いし特に眠くもないし、まぁ、前世から数えると29歳のわたしは三十路手前なので悪い子だから部屋を飛び出すぜ!理由は色々あるけれどきっとアズィーザカにまた来られる日はそんなにすぐじゃないと思うから。やりたいことは今のうちにやっておかないと。
「……お父さん寝てるよね。よしよし。」
父子で寝ていたベッドから抜け出し音を立てないようにドアを開け裸足のまま走り出す。ふかふかのカーペットだから足を滑らせて転ばないように気をつけないと。
「いやっはー……おっとっと、静かに静かに」
変わらない景色というのは普通見ていてもつまらない物だと思う。実際、鳥取砂丘なんか行ったことは無いけれど1回見たら飽きてしまう気がしてならない。1回みたアニメや小説を好きな部分以外見ないのと同じ。
でもここは違う。壁の色は変わらなくても模様が違う。全部同じじゃないから見ていて飽きない。あ、でもこうやってよそ見をしている時に限って事故って起きるんだよね。
「ぶへッ!」
顔の側面になにかどう考えても骨ようなものが当たって足が滑ってすてんと転んだ。幸いにも頭は無事だ。カーペットのおかげだね!
「……大丈夫ですか?」
「ハハハッ!流石はリター殿の娘だな。元気があるいい子じゃないか。」
「……ぶつかってしまいすみません。ちょっと、夜遅いですけど、眠れなかったので城の見学をしようかなと思いまして……勝手に歩き、いや走り回ってしまいすみません。」
「問題ないですよ。我が魔王様が許可されていますから。グローヘルエの方々は城の中を自由に散策してよい、と。」
「それで、フェーテ嬢はどこか行きたい場所とかあるのか?もしあるなら連れて行ってあげよう。」
「いや、でも、その、公務のお邪魔じゃないでしょうか、」
「問題ない。今日の業務は全て片付けた。ここでは話しづらいだろうし私の部屋に来るといい。茶ぐらいは出そう。」
そういえば、今気がついたけれどまだ転んで寝転がったままだった。恥ずかしいな!これ!いや、前世という今だけの邪念を消しさればわたしは9歳だ、9歳9歳9歳9歳……
「で、では、お言葉に甘えて……お邪魔致します。」
ーーーーーーー
当たり前だけれど、陛下の部屋は客室よりも広いしキラキラしていた。なんというか、こう、白に合わないような気がしなくもないような、素晴らしい部屋ということだ。
「……どうぞ。」
「ありがとうございます。キシュレッテさん。」
目の前のでかいテーブルにちょこんと置かれたティーカップとお菓子。失礼にならないようにと1口お茶を頂く。うーんなんとも素晴らしい味がする。美味しいような好きなような……なんか知っている味なんだよね。
「どうだ?口に合うといいが。それは我が国で栽培している茶葉のひとつなんだ。暗夜のこの国でしか育たないとても貴重なものでな。作り手によっても味、品質が若干変わるんだ。それを……」
「へ、へぇ……すごいなぁ……」
この人はちゃんと国を見ているんだな、と思った。きっととてもいい国なんだろう。貴族だけを重視する国は昔から早々に潰されてきた。フランスの革命などがいい例だろう。民衆が飢えているのに贅沢をした結果処刑されたりね。でもこの人?この方は違う。例え上下関係が厳しかろうと自身と民衆は公平だという風にみているのだろう。少なくとも、尊敬され崇拝されている。
「…すまない。熱くなりすぎた。そうだ、フェーテ嬢の話についても聞かせて欲しい。リター殿から大体は聞いている。エルフと人間の混血、ハーフエルフということをな。もちろん、この件は他者に漏らさないと誓おう。当然、キシュレッテもだ。」
「……知っているんですね。お父さんから聞いたのならまぁいいか。どういうことをお話すればいいですか?」
「そうだな。エルフの森は存在自体は知っているんだ。だがどういう場所かは知らない。俺は、いずれ全ての国、部族と同盟を結び更なる我が国の発展をと願っている。そのためにまずはエルフが崇拝している神について教えて欲しい。」
神……か。
「……いるよね、マリのことについて話しても大丈夫かな。」
近くにいるせーれーさんに問いかける。マリの遣いだし一応聞いとかないと。
(……ンー イインジャナイ?アノカタ フェーテニハアマアマダシ)
「……甘々って……ならいっか。わかりました。使徒であるせーれーさんから許可を貰ったのでエルフの崇拝する神、マリについてお話しますね。といってもわたしもそこまで詳しいことは知らないんです。」
世の中にある鬱アニメって呼ばれるもの沢山観てきたけど結局は大体ハッピーエンドだからなんかつまらないなって。