15.
遅くなってすみません。
がんばりました。コミケ編⋯完。
「おーい。着いたよ。」
『今行く。』
地獄のコミケ帰り、16時ちょっと過ぎ。御空の家に到着。
自転車の籠の中には大量の同人誌の山とあと百均で買ったケースが入っている。往来する人の邪魔にならないようにと自転車を橋部家敷地内側に寄せて止める。
そうしているうちにガチャリという音と共にドアが開き御空が中から出てきた。
「やっほー。」
「おう。呑気だね。」
「まぁね。」
まぁねってなんだよ!と文句を言う前にリュックから例のブツと金を取り出し御空に渡す。
「はい。これ。あとこれが残金ね。手ぇ付けてないからちゃんとあるよ。」
「ありがとう。」
「それでさ。私、君に頼まれたソレが18禁で尚且つBL本っての知らなくて売り子さんの前に行って固まってめっちゃ笑われたんだけど。」
「ごめん。言うの忘れてた。」
「いや、うん、あの、まぁいいんだけどさ。うん。自分もそういう系は買ったし文句は言わない。君は18歳になってるし。だけど、今度はちゃんと言ってよね!」
「うんわかったよ。あぁ、そうだ夜。次は、一緒に行こう。」
肩で呼吸し肩で笑うように。彼女は言う。
「…………!」
本当は1人参戦が寂しかった。孤独は嫌い。また1人にされる感覚に吐き気を催すほどだから。でも初めは1人を選んでいたの。孤独が怖いくせに、嫌いなくせに、1人を選んで吐いて首を絞めて、それで孤独を選んだ。選んでいた。過去の私に言ってやりたいや。あの時、布団の上でくるまって嗚咽を吐いていた私に。もう、ひとりじゃないってさ。
「当たり前でしょ!次行く時は絶対一緒!だからね!」
ぜったいのぜったいにヤクソクだから。
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「と、まぁこんな感じで。色々あったんですよ。」
「ふーん。なにを伝えたいのかよくわからなかったけどよかったね?と言っておくよ。」
「…「私」にとって友達は「私」という人間を知ってくれて尚友達でいてくれる人はほぼ全員親友みたいなもんなんですよ。」
「じゃあわたしは?」
「…知り合い?友達(仮)的な存在かな。」
思えば「私」には友達(仮)が沢山居たような気がする。LINEを交換しても一度も会ったことがない。本名も住んでる場所も通っていた学校も。大体知っているはずなのにただ会ったことがないそれだけの友達。「フレンド」でも「友達」でもないよくわからない人。それを「私」は友達(仮)と呼んでいた。
「⋯もしかしてその友達(仮)の元の人ってフェーテのこと、いや正確にはフェーテの前世⋯って言ったらいいのか。一青夜のことを嫁になる?って聞いた人?」
何故、それを知っているの。それを知っているのはただ1人だけのはずなのに。あぁ、やっぱりこの人は。私の知っている人の生まれ変わり⋯または魂が憑依するとかいう非現実的なやつなのかもしれない。
「⋯そうだよ。よく知ってるね。」
「いや、たまたま頭の中に浮かんできたから。言葉をそのまま言ってみただけ。まさか当たるなんて思ってなかったよ。」
「ナデュラ。やっぱり君は⋯」
核心を今つこうと思った。今しかそれを言うことはできないと直感で感じたから。でも、そう。こういう時って絶対邪魔が入るの。アニメや漫画、小説、ゲームのお決まりでしょ?
コンコンコン。
扉を叩く音が聞こえる。
「フェーテ?いる?」
「⋯いるよー。待っててお父さん今開けるから!」
これ程までに綺麗な邪魔はきっとこの人生の中であとn回はあることだろう。ほんとタイミングいい人って腹立つよね!嫌なことを思い出すよ!まじで!
「ナデュラ嬢。この話はいつかまたどこかで。話の続きも、わたしの考えも。」
「⋯えぇ。そうね、わかったわ。」
「あぁ、あとそう。そうです。ずっと言いたかったんですけどナデュラ嬢。喋り方⋯ずっと低迷してるんですね⋯なんかうん、私の前ではタメでいいですよ、」
「⋯それ、さっきも聞いた。年相応の悩みだと言うことにしておいて。いい?」
「うぃっす⋯」
「?なにそれ⋯」
これは通じないと、なるほど。頭の中にメモメモ、と。あ、お父さん。忘れてた、扉の前にお父さん待たせてるんだった。
ふっかふかのソファから足を地面につかせ20センチにも満たない足で扉の前に駆け寄り息を、髪を整える。そして扉を開きお父さんにこう言った。
「お父さん、お待たせだよ!わたし、友達ができたの!」
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きっと1人は嫌なんです。孤独がこの子を殺すから。
きっと1人は怖いんです。この子は弱さを知ったから。
人は弱い。1人は弱い。
人は群がり強く見せたい生き物なのかも。
いつからなのでしょう。人が弱さを知ったのは。
お腹空いたヨー