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渾身の一撃

 タクは再び杖を構え、目前のドラゴンに向かって魔法を放つ。


大魔法ギガ・マジック


 再び杖から放たれた、一つの光線のような魔導弾に対し、タクは、


拡散ショット


 その魔法に二度目の詠唱。

 魔法弾は黄色く発光していたが、タクの詠唱とともに赤く染まった上で拡散し、360°すべての方向からドラゴンに襲いかかる。ここまでは先程と同じだ。

 

「タク!これでは先程とおなじで、ドラゴンにダメージは……」


 リュブリナが咄嗟に叫ぶ。

 それは当然タクも気がついていることであろうが、どうしても言わずにいられない。

 ドラゴンの鱗は魔法攻撃を受けないようになっているのか、通常の魔物なら一撃で葬れるほど強力な攻撃も先程は全く効いている様子がなかった。

 

 タクはドラゴンが攻撃に対して避そうにないことをしないことを確認した上で、


貫通ペント


 すると、拡散した際に赤色をしていた魔導弾のすべてが水色に変色していく。

 そしてドラゴンが危機を察知する前に、たしかに着弾。

 ドラゴンの硬い皮膚を貫通属性を付与された魔法が穿っていた。


「魔法の三重詠唱……お前、魔法が苦手というのは嘘だったのか?」


 リュブリナはあっけに取られている。

 

 魔法を放つ際には、まず魔法の基礎となる攻撃魔法を放ち、そこから属性を加えるというのが基本だ。

 大抵の魔導師は、魔法マジックを撃ち、そこから貫通ペント拡散ショット属性を一つ加えることができたら一人前だ。

 

「確かに魔法はが苦手とは言ったが、使えないとは言ってないぞ。それに、俺はお前たちが妬み、憎んだ『転生者』だからな。」


 タクは緊張感を解くことなく、リュブリナに返す。

 

 しかしながら、リュブリナはなおもタクを色眼鏡で見ざるを得ない。というのも、杖を使った上で放つ魔法に関しては、転生者や核の有無など関係ないからだ。

 そもそも、魔法の杖が冠しているもう一つの名は『体外式魔導核生成杖』である。つまり、核を持たない者でも、魔力を杖に注ぎ込むことで核ほどではないが魔法を使えるようにしたものだ。

 これを核を持つものが使えば、その効力は一般人とほぼおなじになる。

 

 それを知った上でのタクの発言は、リュブリナには全く響いていない様子だ。


(こいつ、杖を使っているから魔導師としての能力は我々と変わらないはずだが……)


 リュブリナはそこから更にタクという大勇者の魔導師としての能力に驚かされることになる。


「ドラゴンはやっぱり貫通攻撃に弱ぇみたいだな。じゃあ、さっきの攻撃をもう一回だ!」

 

 リュブリナもドラゴンの様子を観察してみると、ところどころドラゴンの鱗から出血している。

 巨体を支える足が震えており、かなり蓄積した魔法攻撃によるダメージがあるようだ。


「っと、その前にあっちのターンだな。」


 ドラゴンは鋭い歯を鈍く光らせながら大きくこちらに口を開ける。

 その中で魔力を発生させ、循環させ初めた。

 その行為が意味するのは、こちらにドラゴンの一撃が降りかかるということにほかならない。


「どうする、リュブリナ。受けるか、避けるか。アンタに任せるよ。」

 

 タクはリーダーのリュブリナの判断を仰ぐ。

 あくまで自分の中で答えは決まっている様子だったのだが、彼女を試したのだろうか。


「……決まっている。防御だ!」


 タクはそれをきいて、


「そうだな。じゃ、俺が守ろう。『大防御ギガ・シールド』!!」


 再び、先程もタクが使っていたリュブリナとタクを守るための半円が顕現した。

 

「しかし、これほどの防御魔法をどこで……」


「俺に魔法を教えてくれた師匠がいてな。師匠は防御魔法を極めるまで一切の攻撃魔法の使用を禁じていたんだ。そのせいで防御魔法ばっかりうまくなっちっまった。」


 大防御ギガ・シールド魔法は、それを使えることを証明するだけで倍率200倍を超える領邦魔導師試験を免除されて合格することができる。

 これは、大防御ギガ・シールド魔法を使えるものは他の基礎的な魔法技術をすべて習得した上で、防御魔法を極めたものだけが使える高位魔法だからという背景がある。

 

 タクの魔力操作の上手さに関心しているのもつかの間、ドラゴンによる膨大な魔力を限界まで口内で循環させた渾身の一撃がもたらされようとしていた。


「さぁて、くるぞ!」

 

『グルァァァァアァァ』


 ドラゴンの咆哮とともに張り裂けんほどの高密度な魔力が一気に超電磁砲となってまっすぐこちらに向かって飛んでくる。

 タクの防御魔法はかろうじて防御を保っているが、さすがのタクも集中して魔力を慎重に運用している。

 

「大丈夫か、タク!」


 リュブリナは咄嗟にタクが杖を握る右手に手を重ね、魔力運用のサポートを初めた。


「おい、俺は妻子持ちだぞ!今そんなことをしている暇は……」


 タクがリュブリナの重ねた右手をどかせようとするものの、リュブリナは引き下がらず、


「そんなことを言っている場合か!お前が作ったこの防御魔法を、大きくぽっかり穴の空いた棺桶にしたくなければ、大人しく私のサポートを受けておくんだな!そもそも、魔法ってのは二人で協力して使うものだろうが!」


 言っている間にもドラゴンの攻撃は続く。

 タクは防御魔法の制御における一部分をリュブリナに任せ、自分はドラゴン側の魔力操作に集中する。

 その時、防御魔法の後ろ側の色が薄い黄色からピンク色に変化した。これが自分の魔力操作範囲だと直感的に理解したリュブリナは、その範囲をなんとか制御する。


「……ッッ!維持するだけでこれだけの緻密な魔力コントロールが必要なのか、大防御ギガ・シールドという代物は!」


 魔導師の中でもエリート揃いの領邦魔導師であっても驚きを隠せない、防御魔法の難しさ。

 しかも、自分が担当しているのはドラゴンから攻撃を加えられているところとは反対側の、圧倒的に簡単な部位にも関わらず魔力の消費量が尋常ではない。


「よし。ありがとう、リュブリナ。お前のお陰でようやく魔力が練り終わった。一瞬、この防御魔法を全部お前に預ける。その間に、俺があいつの脳天に渾身の魔法をブチ込む。行くぞ。3、2、1!!!」


 その瞬間、防御魔法の使用者がタクからリュブリナへと移る。

 

「は!?え、ちょ、無理ッッ!!」


 大した反論も否定もすることができず、リュブリナはタクから自分の杖に膨大な魔力が書き換えられて送り込まれているのを感じた。


「大丈夫。俺がこの防御魔法を魔力を流すだけでオート発動できるようにしておいた。お前は黙って魔力を自分の杖に注ぎ込め。魔力切れは勘弁してくれよ?」


 タクから授かった防御魔法は確かに完全に制御されており、リュブリナは簡単な魔力操作と、魔力を送り込むだけで大防御ギガ・シールドを維持することが可能となっていた。


「信じられない……この一瞬でドラゴンの攻撃を解析して防御魔法に取り込んだっていうのか!?」

 

 タクはそれに反応するでもなく、こちらから攻撃を仕掛けるべく自分の杖を構える。


「じゃ、俺の渾身の一撃だ。目をかっぽじってよく見とけ!!」


 そう言って杖に自分の魔力のありったけをつぎ込むタク。

 リュブリナはその時、ドラゴンが放つ殺気でさえも塵のようなものに思えてしまうくらいの恐怖をその杖先に抱いた。

 

 言うなれば、それは『魔法』ではなく『魔力』そのもののようであった。

 極度に圧縮された魔力が、タクの号令一つで暴発にも似た攻撃となってドラゴンを襲うことは、恐怖と畏怖で埋め尽くされたリュブリナの脳裏でも容易に想像することができた。


『天生・大魔法ギガノト・マジック


 刹那、あたり一面を白い光が覆い尽くした。

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