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勇者の子

「なら、どこが父さんのいた世界と違うのさ?」

 

 12歳の誕生日を迎えたラケル・アドーは父親のタクに問いかけた。

 父親は息子の小麦色をした髪の毛を優しく撫でながら、


「それはなぁ、神様が人間と同時に同じくらいの強さを持った魔物を創造したことだよ。」


 首を傾げる息子に語りかける。

 息子の瞳が暖炉の炎を宿して、こちらをまっすぐに見つめている。


「ハッハ。まだお前には難しかったかな?」

「ううん。そんなことないよ。」


 理知的に思われたいのか、あるいはただの強がりか、ラケルは反射的に否を突き返した。


「神様は、人間には''知性''を、魔物には''魔力''を与えたってことさ。つまり、お互いに相手より優れた特徴を与えることで互いを制御することができるようにしたんだよ。もちろん、人間も魔物も両方持ち合わせているけれど…」


「人間は特別頭が良くて、魔物は魔力をたくさんもってるものに生まれたってことだよね?」


 にっこりとタクは微笑み、聡い息子を褒めるようにもう一度頭を撫でた。


「そういうこと。で、その両方を持ち合わせていたのが神様ってわけ。」


 ラケルは、父親の膝の上で会釈をしながら静かに話を聞いていた。

 骨だけになったマホウドリの丸焼きを横目で見ながら、ラケル。


「でも、お父さんが神様のオヤダマを倒して人間と魔物を解放したって、この前言ってたじゃん。なんでそんなことができたのさ?」


「オヤダマって…そんな言葉どこで覚えてきたんだ?」


 少し間をおいて、昔を懐かしむ仕草を見せた父親はこう答えた。


「お父さんだけじゃないさ。他にも仲間が何人かいて、みんなで力を合わせることでなんとか倒せたわけだな。もちろん、お父さんだって当時は超強かったんだからな!?」


 力こぶを作る素振りを見せる父親を見て、ラケルは笑って、


「でも、もう何十年も前のことなんでしょ?お父さんもう''アラフォー''だってお母さんが言ってたよ?」


「あちゃー…。お母さんそんなこと言ってたの?」


 やりきれない様子で父親は嘆息を漏らす。

 しかし、すぐに嬉しそうな顔をにじませて、


「他に、お母さんはなにか言ってたのか?」


「うん。来年から学校が始まるけど、大丈夫なのかだって。お父さんに入学の準備とか全部任せるって。」


 ぎくり。膝枕越しに父親の動揺を感じたラケル。


「そ、そうだよな。この世界でも学校とか、当然あるんだもんな~。」


 突然飄々とした態度を取り出した父親の様子を面白く思うラケルであった。

 父親タクは二人分の食器を片付けるべく、流し台の方へ向かった。


「そうかー。ラケルがもう学校…うう…早いなぁ~。」


 泣きながら流し台に父親が魔法で一気に食器類を運ぶ。

 流し台から流れ出る水量よりも、涙のほうが多いのんではないかという疑念を抱きながら、一方で来年からスタートする学校生活にラケルは胸を高鳴らせるのであった。

 

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