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四十一話



 ズシン、ズシンと地響きを上げてギアゴーレムが無人の村へと侵入する。


 全身は硬い金属で覆われ、正確な歯車がそれらを動かす様はまるで時計塔が歩き出したようだった。


 一目見て人では勝てないと分かる風貌だったこともあり、村人達はほとんど抵抗もせずに村から逃げ出した。


 だが、逃げない者達がいた。


 村の広場にギアゴーレムが入った瞬間、家の影からマリイが足に炎を纏わせ飛び出した。


 マリイはゴーレムの背後に回ると高く跳躍し、人で言う首の後ろを思い切り蹴る。


「とりゃあっ!」


 突然の攻撃にギアゴーレムの一部が煙を上げて砕け、僅かに前へとよろけるが、すぐにバランスを取るとゆっくり振り向いた。


「あはは……。あんまり効いてない? ちょっとショックかも」


 マリイは着地すると苦笑いをしながら頬を掻いた。


 赤く光る目がマリイを捕捉するとギアゴーレムは命令通り敵を排除するため動き出す。


 太く重い大きな腕をマリイ目がけて振り下ろす。


 家が落ちてくるような攻撃だがマリイは大きく跳躍してそれを回避。


「これなら避けるのはなんとかなりそうかな」


 大きな胸を揺らしながらもスピードで分があることを理解したマリイだが、明らかに一人では手に負える相手ではない。


 それでもマリイは炎を手足に纏わせ、ギアゴーレムを攻撃する。


「おりゃあ!」


 ゴーレムの体は攻撃を受けるたびに微かに砕けるが、動くにはなんら問題なかった。


 それどころかこの攻撃を続ければ先にマリイの拳か足が砕けてしまう。


 圧倒的な力の差に加え、ゴーレムは怯むことなくマリイに反撃を続けた。


 大きな腕を振り下ろし、振り払い、殴りかかる。


 マリイが回避した後の地面は大きく砕け、へこんでいた。


 普通の人間があの攻撃を食らえば一撃で絶命してしまう。


 それでもマリイは勇気を出して攻撃を続けた。


 そしてマリイが三度目にゴーレムの背後を攻撃した時、遂に金属が砕け、大きな歯車が見えた。


 それは胸にある歯車を後ろから見たものだった。


「やった!」


 ようやく分かりやすいダメージを与えて喜ぶマリイ。


 しかしそれも束の間だった。


 繰り返しの攻撃と回避のせいでマリイは建物を背負ってしまい、逃げる場所を失う。


「やば」


 そこに躊躇なくギアゴーレムの拳が振り下ろされる。


 避けることができないことを悟るとマリイは目を瞑った。


 巨大なゴーレムの拳がマリイに直撃し、土煙が上がった。


 だが、煙が消えるとマリイとゴーレムの拳の間に僅かな隙間ができていた。


 その隙間を作ったのはアリアだ。


 間一髪でアリアの前に滑り込み、二つの盾でゴーレムの攻撃を受け止めていた。


「大丈夫ですか?」


「うん……。あ、ありがと……」


 アリアのパワーを目の当たりにし、マリイは驚きを持って受け止めた。


 ゴーレムは二人を押し潰そうとするが、アリアがそれをさせなかった。


 ゴーレムが更に力を加えるため、前傾姿勢になった時だった。


 近くの家の屋根に隠れていたクレイが勢い良く飛び出し、屋根より低くなったゴーレムの頭に飛び乗った。


「わああああぁっ!」


 慣れないことをしたのでクレイはゴーレムの頭から滑り落ちそうになる。


 その上ゴーレムはクレイを振り下ろそうと体を動かす。


「クレイ!」


 アリアに助けられたマリイがすぐさま動き出した。


 足に炎を纏わせ、足払いのようにゴーレムの脚部を蹴り込む。


「とりゃあ!」


 ぐらつくギアゴーレムはバランスを取るために踏ん張った。


 だがそのおかげでクレイはなんとか振り落とされず、しがみつくことに成功した。


「今だよ!」


 マリイが叫ぶとクレイは動き出した。


 目標は露出した歯車。


 クレイは頭部のすぐ下にある胸部へとゴーレムの体を伝って降りて行き、そして目の前に現れた歯車に手を伸ばした。


「いっけえええええぇっ!」


 歯車に触れるとクレイの手が光り、紋章が付与される。


「どうだっ?」


 クレイはゴーレムの頭部を見上げた。


 先ほどまでと違い、ゴーレムは動きをぴたりと止める。


 歯車は常に正確な動きをしていた。


 そこにクレイが強化すればどうなるか。


 クレイが導き出した答えは正常に動かなくなる、だった。


 そしてそれは現実のものとなる。


 動きを止めたゴーレムが小刻みに動き出した。


 次第に動きは大きく、不規則になり、そして苦しむように手足や胴体、頭部を滅茶苦茶に動かし始める。


「うわあああっ!」


 クレイはしがみつけなくなり、地面に背中から落っこちた。


「ぐえっ!」


(息ができない……。体が動かせない……。でもそれよりゴーレムは?)


 クレイはなんとか体を起こした。


 するともがき苦しんでいたゴーレムは再びぴたりと動きを止めた。


 そして光っていた瞳から明かりが消えると体をバラバラにしながらゆっくりと倒れる。


「やったっ!」


 クレイ達は喜んだ。


 だがゴーレムが自分の方に倒れてくるのを見て、クレイはすぐに固まる。


「……え?」


 巨大な体が徐々にクレイへと落下していく。


「くっ!」


(ここまで考えてなかった――)


 逃げようとしたが、体が痺れて動けないクレイ。


 そして一番大きな塊がクレイへと向かっていった。


「うわあっ!」


 クレイは目を瞑り、悲鳴を上げるしかない。


「クレイ!」


 マリイがクレイの名を呼ぶが、距離が離れて間に合いそうになかった。


 だがクレイにゴーレムが当たることはない。


「え?」


 驚くマリイが見たのはゴーレムの塊に飛び込むアリアの姿だった。


 振りかぶったアリアがゴーレムの塊目がけてバックラーを叩き付ける。


 ゴオオンという大きな音が村に響く。


 すると家ほどもある塊は遠くにあるイルワロのいる小屋の付近まで吹き飛んだ。


「ええっ?」


 唖然とするマリイ。


 クレイはなにが起こったか分からないまま目を開けた。


 目の前には顔を赤らめ、瞳にハートを浮かべたアリアが立っていた。


「……アリア?」


 事態が読めないクレイ。


 名前を呼ばれて振り向くアリアは息を荒くしながら微笑んでいた。


 下半身からぷしゃっと音を立て、太ももには大量の水が流れ伝う。


 胸の先は服の上からでも分かるほど大きく、固くなっていて、腹部に浮かんだ聖刻印がはっきりと見える。


 アリアは明らかに発情していた。


「クレイ……様……。よかっ……た……」


 アリアはそう言うとすぐに意識を失い、その場にへたり込んだ。


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