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二十五話



 シャーロットの話を信じるかどうかは一度保留となった。


 だが優しいクレイはシャーロットをこのギルドに受け入れることにした。


 理由は明白。


 もし帝国に反逆を企むエルフの存在がバレれば即刻逮捕され、最悪拷問を受け、情報を奪った後に殺されるからだ。


 禁止とされている解呪をしていたと知られても魔女狩りと称して国を挙げて捕まえに来るだろう。


 姿はまだ幼いシャーロットがそんな目に遭うなどクレイは耐えられなかった。


 そしてもう一つ、不安要素がある。


 それは首輪だ。


 首輪は奴隷の義務であり、全ての亜人に着用が求められる。


 首輪には主人の名前が魔力によって刻まれ、なにかあった時には所有者が分かるようになっている。


 首輪を付けていないことが分かれば、それだけで即逮捕となり、奴隷市に売られることになる。


 逮捕されなくても奴隷の需要は高く、しかも希少価値の高いエルフともなれば誘拐されてもおかしくなかった。


 それらも踏まえ、シャーロットにはクレイの名前を刻んだ首輪を装着してもらい、なるべくギルドから出ないよう約束してもらった。


 それがこのギルドに住む条件だ。


「首輪は窮屈で好かんのじゃが、仕方ないのお」


 シャーロットは自身に付けられた首輪を指で摘まむと渋々受け入れ、クレイは安堵する。


 するとシャーロットはニヤリと笑った。


「どうじゃ? 妾にも聖刻印とやらを刻んでみるか?」


 シャーロットがワンピースをめくってお腹を見せる。


 下着を履いてないことを知らなかったクレイは驚きと共に顔を真っ赤にさせ、首をぶんぶんと横に振った。


 後ろでアリアとマリイも恥ずかしがっている。


 シャーロットはつまらなそうにワンピースを戻した。


「なんじゃ。目の前にロリ巨乳エルフがいるというのにつれん奴じゃのう」


「と、とにかく、今から買い出しに行くけどここを離れないでね? いい?」


「子供扱いするでない。妾はお主らよりよっぽど先輩じゃぞ」


「……何歳なの?」


 シャーロットは口の前で人差し指を立てた。


「それは秘密じゃ♪ レディに歳を聞くなどマナーがなっておらんのう」


 聞いてはいけない気がして、クレイはそれ以上の追求を諦め、市場に向かった。


 


 クレイ達は市場に向かった。


 市場の近くにある広場にはサーカス団がテントを張っている。


 リンカーは人口が多いため、度々このような人々が催し物を開いていた。


 近々始まる催しに誰もが期待に胸を膨らませる中、クレイ達は生活に必要な物を買い揃えていく。


 クレイは安堵しながら日常品の品定めしていた。


「いやー。ちゃんとした買い物なんて久々な気がするよ」


 隣でアリアが微笑んだ。


「そうですね。わたし、一生節約生活だと思っていました」


 喜ぶ二人を眺めてマリイは呆れていた。


「そんなにギリギリだったわけ?」


「それはもう」


 最近は次の日食べる物すらあるのか怪しい生活だ。


 残金を気にせず買い物できるなんてクレイにとっては久しぶりだった。


 楽しげなクレイにマリイは尋ねる。


「ところであの話。シャロの話だけど」


 シャーロットはみんなにシャロと呼ぶよう言っていた。


「うん。どうかした?」


「どうかしたじゃないわよ。あれが本当ならあいつはこの国にとってのテロリストじゃない。そんなのを匿うつもり? もしバレたらどんなことになってもおかしくないわよ?」


「それはそうだけど……。でも僕を頼ってくれたわけだし、なによりシャロの言ってることは間違ってないと思うんだ」


「奴隷の解放? それはまあ、そうなってくれたら嬉しいし、あたしも自由がほしいけど……。でも本当にそんなことが可能だと思う?」


 クレイやマリイ達が生まれるずっと前から奴隷制度は続いている。


 それはもはや日常となり、亜人にとっては差別されることすら当たり前の感覚だった。


 そんな常識を変えられるなど本気で考えている者は少ない。


 自由を求めたマリイですら、心の中では諦めながらも行動していた。


 クレイは首を横に振った。


「分からない……。でもそうなったら素敵だとは思う。僕にできることなんてあまりないだろうけど、協力はしてあげたいんだ。……でないとシャロは一人ぼっちになっちゃうかもしれないし」


 クレイは寂しそうにギルドで使うカップを手に取る。


 マリイは呆れ笑いを浮かべた。


「まったく、危険に巻き込まれるかもしれないってのに呑気なんだから。ま。そこがクレイの良いところなんだけど。だからあたしもクレイを選んだんだし」


「あはは……。ありがとう。アリアもごめんね? 巻き込んじゃって」


 アリアは首を振ると柔らかく微笑んだ。


「わたしはクレイ様が決めた道に従うだけですから。それにいつの日かこの首輪が取れるようになるかと思うと嬉しいですし」


 アリアが自分の首輪に触れるとクレイは寂しそうにした。


(本当のところでは奴隷の気持ちは分かってあげられない……。だからこそ、なるべく寄り添うようにしないと)


 クレイは気合いを入れ、次なる課題に取り組む覚悟を決めた。


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