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十八話



 リンカー郊外に広がる草原に三人はいた。


 目の前には巨大なトゲイノシシの群れが歩いている。


 トゲイノシシは全身を棘のような体毛で覆っており、口には大きな牙が生えている。


 身長百八十センチメトルとクレイより高く、体重は六百キロを優に超えていた。


 モンスターランクはE。


 シルバー帯のギルドがどうにか仕留められるという程だ。


「本当にあれを狙うの?」


 クレイは草陰に隠れながら不安そうだ。


 しかしマリイにその様子はない。


「お金がいるんでしょ? だったらちまちま稼ぐよりあれくらいを相手にした方が早いわ。あのブタちゃんを仕留めたらいくらだっけ?」


 マリイの隣にいたアリアが市場で聞いた値段を思い出す。


「たしか十万ゴルって言ってました」


「それだけあれば少しの間お金の心配しないでいいわね」


 すると群れの内一頭がクレイ達の方にやってくる。


 それに狙いを付けてマリイは立ちあがった。


「じゃあ、行ってくるね」


「き、気を付けてね」


 本当はクレイも戦いたいが、最低ランクのツノウサギでさえ倒せない実力では足手まといにしかならないのは火を見るより明らかだった。


 マリイは草むらから出て行くとトゲイノシシの前に立ち塞がった。


 余裕を持って両拳に付けたガントレットを胸の前でゴンッと合わせる。


 ビキニに包まれた大きな胸がたぷんと揺れた。


 マリイの拳にはクレイの紋章が刻まれていた。


 マリイは自分の後ろで隠れるクレイとアリアに言った。


「怪我しないように離れてね」


 トゲイノシシは突然現れた人間を警戒するが、逃げることまではしなかった。


 離れている群れはマリイの存在にすら気付いてない。


「クレイの紋章もあるし、まあなんとかなるでしょ」


 マリイは紋章にキスをしてから構えた。


 すると周囲の空気が一変したことにクレイとアリアは気付く。


 それをトゲイノシシも察知した。


 野生の殺気が注がれる中、マリイは動じなかった。


 先に動いたのはトゲイノシシだった。


『グゴオオオオオオッ!』


 叫び声を上げながらマリイに突進してくる。


 大柄ながら瞬発力はすごく、一瞬で間合いが詰められた。


「あぶないっ!」


 クレイが叫ぶのも無理がない。


 クレイとアリアから見ればマリイの体はトゲイノシシに轢かれたように見えた。


 だが実際は直撃する一歩手前でマリイは回避していた。


 トゲイノシシの真横に回り込み、胸を揺らしながら左腕を引いた。


 その拳に魔力が集まり、放つ瞬間発火する。


「フレイムナックル」


 炎を纏った左フックがトゲイノシシの腹部を抉るように打ち抜いた。


『ゴガッ……!』


 トゲイノシシは悶絶するが、それでも棘に覆われた体は頑丈にできている。


「まだか! そんじゃあもう一発!」


 今度は右のフックが炎を絡めて飛んでくる。


 しかし危険を察知したトゲイノシシはそれをギリギリのところで回避した。


 そして仲間を呼ぶために咆哮する。


『ブゴオオオオオオオッ!』


 異変に気付いた群れが一斉にマリイの方を向いた。


「うわ。やばいかも」


 さすがのマリイも何十頭ものトゲイノシシは相手にできない。


 討伐失敗かと思われた時、草むらからクレイが出てきてなにかを群れの方向に投げた。


「それっ!」


 クレイが投げた丸い包みが地面に落ちるとそこから匂い付きの煙幕が広がる。


 視界に加え、嗅覚まで遮られ、群れは完全に足を止めた。


 群れとはぐれたトゲイノシシは一時的だが分断された。


「今のうちに!」


 クレイの叫びにマリイが呼応する。


「ありがと!」


 両拳に炎を纏い、トゲイノシシへと向かった。


 トゲイノシシは最初に喰らったダメージで動きが鈍い。


 それでも野生の本能でマリイに突進する。


『グガアアアアアアアアッ!』


「よっと」


 マリイはトゲイノシシの突進を避け、さらに前足に一撃を喰らわせる。


 トゲイノシシはその場で転けた。


「ごめんね」


 マリイはそう呟くと今度は足に炎を纏い、跳び上がる。


「うりゃああああぁぁっ!」


 落ちていくと同時にトゲイノシシの額にかかと落としが放たれた。


 ゴッ! と鈍い音がするとトゲイノシシは力尽き、その場で動かなくなった。


 煙幕が切れ、その光景を見たトゲイノシシの群れは速やかに逃げ去る。


「すごい……」


 たった一人でEランクモンスターを倒したマリイに対し、クレイとアリアは驚くしかなかった。


 マリイはパンパンと埃を払ってから振り返るとニコリと笑った。


「ま。こんなもんかな」


 格好良く決まったかと思ったが、激しい動きのせいでビキニから張りのある左の胸がこぼれている。


 それを見たクレイは顔を赤くして横を向いた。


 クレイの異変に気付いたマリイは自分の胸が露わになっていることに気付く。


「きゃっ!」


 マリイは慌てて手で隠すが、クレイの記憶にはっきりと刻まれていた。


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