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一話
人には生まれついての運命がある。
成長するにつれ、夢は現実に打ち砕かれるものだ。
剣士となってみんなを守りたくても、強い体がなければそれはできない。
魔法を使って華麗に敵を粉砕したくても、魔力がなければ逃げ回るのが関の山だ。
この世界は不平等だった。
生まれつき体が大きく強い者。
人並み外れた魔力を持つ者。
容姿が優れている者。
様々な才能がある者。
他にもたくさんのことが生まれで決まる。
それは当たり前のことだ。
でも、運命に負けるのはイヤだった。
この世界は力なき者に厳しすぎた。
気を抜けば命を落とすような危険なダンジョン。
そこに救う数多のモンスター。
ダンジョンに挑戦するは命知らずの冒険者達。
彼らは富と名声を求め、時に儚く散り、時に想像以上の成功を収める。
強さには人が群がり、富める者を更に富ませ、やがて伝説となる。
だがほとんどの挑戦者が自然の厳しさや己の未熟さに耐えかね、冒険者ですらなくなっていく。
彼もまた自らに限界を感じた一人だった。