交差点の土が要る
「もう何ヶ所目?」
「五くらい?」
「交差点って沢山あるよねえ」
「だね」
「でもどこも舗装されてる」
「きっちりね」
「行こっか」
「うん」
「そのほうが通りやすいもんなあ」
「舗装の話?」
「うん」
「車?」
「とか、自転車とかバイクとか、タイアついてるやつ」
「ああまあ、そうか」
「でしょ?」
「たしかにでこぼこ道って走りにくいよね」
「そうそう。だからまあわかるんだけど」
「うん」
「でもなあ」
「うん」
「交差点の土が必要なんだよなあ」
「そうだね」
「そう」
「呪いにね」
「ほんとにきくのかな」
「それはまあやってみないと、なんとも」
「ほんとにこっちにはなにもないの?」
「みたいだよ」
「ひとを呪わばーとかいうじゃん」
「外国のだから関係ないんじゃないのあの呪いには」
「そんなもん?」
「多分」
「多分かよ」
「だってやったことないし、やったってひとも見付けてないよ」
「ああ」
「そんな、いいふらさないでしょ、呪いマジできいた~なんて」
「それもそうか」
「で、六ヶ所目ですけど」
「また舗装されてるね」
「これはもうないんじゃない?」
「どこの呪いなの、それ」
「アフリカだったと思うけど、南欧かも」
「ナンオウ?」
「ヨーロッパの南の方」
「ああはい」
「あの本、ちょっと不親切なんだよねえ、ざっくりした地域で載せてる場合もあってさ」
「そっちじゃまだ舗装されてないのかな、交差点」
「いやあどうだろうね? 古い呪いなんでしょ」
「そっかあ」
「どうする?」
「どうって?」
「もうそろそろ朝だよ。帰らないとじゃない?」
「ああ。うん。そうだねえ」
「今日は学校あるし、夜のうちにとらないと意味ないみたいだし」
「じゃあ、辞めようか。帰ろう」
「うん」
「さっきの話だけどさ」
「うん?」
「タイアついてると、舗装してるほうが楽って」
「ああうん」
「それもそうだけどさあ、もしかしたら、僕らみたいに呪いにつかおうとするやつ対策かもね」
「ああ、四つ辻にとかあるもんね」
「そう」
「犬を殺すのはハードルが高いな」
「でもやるひとも居るでしょ」
「それをさせない為ってこと?」
「そんな感じ」
「そっかあ。そうだよね。呪いなんて、ばかなことしなくて、よかった」
「でしょ」
「やだなあ、子どもみたいだね」
「子どもだよ、まだ」
「呪いなんて、きくかどうかわからないもんね」
「やっぱり最初に話してたみたいに、僕らの手でちゃんと殺そう」