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『手のひら。』  作者: 日向理
4/64

Episode.4、Episode.5



3がつ8にち


ママとパパとゆえんちいた


たのしかた


















「…はぁぁ…」









「…はぁぁ…」




 「にじゅう」


「ん?なにが?」


 「飯食い終わって、

  ここでねーちゃんがついたため息の『か・ず』」


「なに、数えてたの!?」

 「何悩んでんだか知んないけど、

  部屋せめぇんだから」


 「マンガに集中できない」



「ごめん…」







「…はぁぁ…」



 「はい、にじゅういちぃ」



「…ゆうちゃん読んでんの漫画でしょ!」

「漫画なんていつでも読めるんだから、

 ゲームとか他の事してくればいいじゃない」

 「親父が野球観てるから、ゲームは無ぅ理」


 「マンガも好きで読んでんじゃなぁいの」

「?」

「じゃぁ、なんで読んでんのよ」

 「これ読まないと、クラスの話題に乗り遅れんの」

「そなんだ」


 「男は男でいろいろあんの」

「ふーん」


「ゆうちゃんって頑張り屋さんだもんね」



 「それと…」


 「俺もう高1だよぉ!?」

 「その『子供扱い』はやめてよぉ」


 「呼び方もさぁ」

「じゃ、なんて呼べばいいの?」


 「普通に呼び捨てでいいって」


 「裕太…って?」

「ああ」


「無理無理!」

「だってゆうちゃんはゆうちゃんだもん」


 「無理ならしょーがないけどさぁ、

  せめて外ではその呼び方はやめて・・」

 「こないだファミレス行った時も、

  ねーちゃん普通に呼んじゃうしさぁ」


 「おんなじ高校がいるかもしんないっしょ」

「それはお姉ちゃんもこれから気をつけるけどさ…

 でも呼び捨てはやっぱり無理だよ」



「あ!わかった!」

「『おとーとちゃん』は?」

 「は!?」


「ゆうちゃんだってお姉ちゃんのこと

『ねーちゃん』って呼んでるんだし」

 「そっちのほうがもっと恥ずかしいわ!」

「そか 笑」



 「裕とか、そういう呼び捨てとかは?」

「裕…ゆう…ゆぅ…」


「案外いいかもしれないね」

 「…マンガの続き、読んでもいい?」

「あ!ごめん」





…2アウト満塁のこの場面で打席に立つのは濱中! 

  吉田さん、今日の濱中、どう見ますか?

   ドンドンドンッはーまーなーかっ

   いやぁ彼はね勝負強い選手ですけど、

 今日はまだ勢いに乗れてない感じはありますね~

   ドンドンドンッはーまーなーかっ

 2アウト満塁、マウンドの吉岡、サインに頷いて 

     第1球~…投げました!!

   ドンドンドンッはーまーなーかっ…








「…はぁぁ…」




 「…ふぅ…」

 「んで、そのため息の『原因』はなんなのさ」

「ん?」


 「だぁかぁらぁ、ため息のげーいん」


 「相談相手にはなれないけど、話すだけでも

  減るんじゃない?その『た・め・い・き』」


「優しいね、ゆう…



…ちゃん」


 「少しずつ慣れてこ」

「うん」




「んじゃ話すね」

 「正座して話すような事!?」


「ん゛ん゛…ゴホンッ 話すよ」

 「い、いいよ」


「あのね、ゆうちゃん…じゃなくて、ゆう」

「今日は何の日?」

 「『ねーちゃんの誕生日』」


「それもだけど…みんなが知ってるほうの」


 「…『バレンタインデー』?」

「そう、『バレンタインデー』」


「でね、お姉ちゃん今日、告白したの、好きな人に」

 「ええぇえ!?」

「シーッ!!声が大きい!

 お母さんたちに聞こえちゃうでしょ!」




「・・・」「・・・」




…この危ない場面よく吉岡抑えましたねぇ、吉田さん 

   彼は球種も多いし勢いもありますからねぇ

今日の彼を攻略するのは難しいんじゃないでしょうか

 その辺も注目ですね! さてここで視聴者の皆様に…





「…ふぅ 大丈夫みたいね」

 「ごめん、いきなりの急展開だったから」


「自分でもビックリしてるの、

 チョコ渡すだけのつもりだったから」

 「んで誰に渡したのよ、チョコ」



「…部活の先輩、ゆうちゃんの知らない人」


「1年の頃から仲良くしてくれてる先輩でね、

 なんか話の流れで告白しちゃってたの」


 「…『独り言を聞かれちゃった』ってパターン?」

「なんでわかるの!?」


 「だってねーちゃんの独り言、

  ボリュームデカいもん」

「…それ早く言ってよぉ…」


 「ほら、デカい」

「今ので聞こえてるんだ!?」

 「うん、わりと普通に」


 「夕飯とき、自分の誕生日なのに

 いつもとちげーなとは思ったけど」


 「まさか告白してたなんて…

 さすがに弟でもわかんなかったわぁ」


「そ、そっかぁ、ゆ…ゆうには

 気付かれてたかぁ・・」


 「親父は気づいてないかもしんないけど、

  母ちゃんも気づいてるよきっと」




 「んでなんでため息なのさ」

「ん?」


 「普通オッケーだったら浮かれるし、

  ダメだったら落ち込むでしょ」



 「なんでため息なのさ」




「…はぁぁ…」


 「にじゅうさん」

「もう数えなくていいの!」



「…「考えさせてくれないか」って言われたの」

 「なにそれ」


「わかんないから悩んでるの!」




 「ん~…」



 「…あれじゃね?」

 「『先輩・後輩のままがいい』とか」

「…どうしてそう思うの?」


 「だってさぁ、その先輩がねーちゃんの事

  好きだったら、その場でオッケー出すでしょ」


 「でも「ごめん」ってフラれたわけでも

  ないんでしょ?」


 「って事は『今のままがいい』って

  感じなんじゃない?」

「でもでも先輩、

『誕生日のプレゼント』用意してくれてたんだよ!」


「チョコ渡すつもりだけだったのに、

「僕からサプライズ」ってプレゼント渡されたら…

 なんかいけそうな気がしちゃうじゃない」


 「そんでスイッチ入っちゃったんだ」


「…うん」




 「そのプレゼント、実は、

 他の女の子からもらったやつだったりして」

「先輩はそんな人じゃない!!」

「ゆうは先輩の事なんにも知らないのに、

 勝手に決めつけないでよ!」

 「ごめんごめん、ちょっと

  浮かんじゃっただけだから」

 「そんな怒んないでよぉ」


 「姉弟喧嘩してるって思われちゃうでしょ」

「あ」


「ごめん…」




「あぁ~」

「なんでバレンタインなんかに生まれたんだろ~」


「そしたら頭ん中こんがらがらなくて

 済んだかもしれないのに」

 「いいじゃん、2月14日、

 みんなに覚えらえれやすくって」


 「俺なんか『敬老の日』だよぉ!?」

 「何日か決まってないし、

  おじいちゃん扱いされるし」

「よっちゃん昔っからゆうの事、

『ゆうじい』って呼んでるもんね」

 「あいつこの前、昼休みんとき、

 「はい、おじいちゃんご飯の時間ですよ~^^」

 なんて言ったんだぜぇ!?」


「あはは、よっちゃん相変わらず面白~い 爆笑」

 「笑い事じゃねぇよ!」

 「スッゲー恥ずかしかったんだからぁ」

「あははは、ごめんごめん 笑」


 「でも本当にねーちゃんの事

  考えてくれてるかもしれないし…」


 「…待ってあげれば?」



「…そうだね」



「ゆうに話したら少し楽になったし」


 「『ゆう』って呼び方にも

  慣れてきたみたいだしね」

「ホントだ」



 「智子ぉ~!裕太ぁ~!お風呂沸いたわよ~!」



「はーーい!」「はーーい!」



「おじいちゃん、お先にどうぞ」

 「だぁかぁらぁ!」



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