パーティー
ホームで読書をしているとリリアンから「会議室に帰ってきたんだけれど、どこにいるの?」というメッセージが来た。「マイホーム買ったから、そこにいるよ。パーティーの準備して待ってるよ」と返すと、すぐにメンバーがなだれ込んできた。みんなの表情は晴れやかで、エリアボス討伐が上手くいったことは明らかだった。
「みんなのおかげでマイホーム買えたんだ。ありがとう。まだこの部屋しかないけれど2~3日で読書用の部屋を作れそうだから、いつでも遊びに来て。この部屋は自由に使えるようにしておくからね」
みんな喜んでくれ、部屋を見回して褒めてくれた。
夏南ちゃんに手伝ってもらえて良かった、私一人だったらこんなに可愛い部屋に出来なかったよ。
「エリアボス討伐、成功したんでしょ?パーティー始めよう!」
私が声を掛けると、みんながテーブルを囲んで座る。飲み物を手に取ったのを確認して、マスターが立ち上がり乾杯の挨拶をする。
「みんな、お疲れ様でした。ゲーム開始から1か月ちょっとだけれど、思うように狩りが出来なくてゲーム辞めようかと思うこともあったよね。そんな時にミーナちゃんが来てくれて、レベル上げも順調に出来るようになったんだよね。イベントで悔しい思いもしたけれど、今日全員で無事にエリアボスの討伐に成功しました!本当、お疲れ様。一応攻略のトップになっちゃった訳だけれど、これからも『楽しむ』ことを大切にしていきたいと思います。みんな、それでいいかな?」
一斉に拍手が上がる。マスターはみんなを見回して一度頷いた。
「じゃ、カンパーイ!!」
「「「カンパーイ!!」」」
パーティーが始まった。ジュースを飲んでお菓子を食べるだけなのだけど、みんなと一緒だと楽しい。以前は気が付かなかった。人間関係は煩わしいと思って最小限にしていたし、楽しいことは本の中だけしかないと思っていた。私は自分の物語を歩き始めたばかりなんだろう。自分の決断しだいで変化する物語……こんな面白い物語は他にないよね。思いっきり楽しもう!
そんなことを考えていたら、マスターに声を掛けられた。
「ミーナちゃん、バッチのことだけれど。少し情報を出していこうと思ってるんだけどいいかな?具体的に言うと……ネコ以外にも動物がいてバッチを3つ集めると『アテビのバッチ』になるって事と、アテビのバッチの効果を公表する。交換の時のメッセージから考えると、ネコ・スズメ・リスの他にも動物がいる気がするんだよね。プレーヤーが競って探せば新しい動物が見つかると思うんだ。3つ揃った後にスズメ・リスを公表すると、他にもあるかもって更に探す人もいると思う。どうかな?」
「いいですよ。他の動物が見つかれば、わざわざ水路に飛び込む人が少なくなりますもんね」
「うん、ありがとうね」
「そうだ。みんながボス討伐行ってる間に基礎レベルが10になったんです。これでクランの正式入団出来ますよね?」
「予想していたより早かったね。おめでとう。これからは本当の仲間だから『ミーナ』って呼ぶね」
「ありがとう」
「せっかくだから、ミーナに目標でも発表してもらおうかな。まずは認定書のEランク?」
「Eランクはもう持ってるよ。イベントの後、2~3日は大丈夫って言われたからその間に取ったから。小さな目標は、さらに上のランクを取ることかな。大きな目標は……みんなが賛成してくれたらなんだけど……新しいクランを作りたいな。こっそりと趣味や勉強の場としてゲームを利用していて場所やお金に苦労している人がいたんだ。そんな人のマイホーム取得を手助けすることで、狩りするプレーヤーのポーションを量産できたらいいなって思うんだ。そして、堂々と趣味や勉強を楽しめる世界になって欲しい。だから……私は、ポーション作製の専門クランを作りたい!!!」




