バッチ取得
昨日も登校前にネコのバッチを狙ってみたけれど、ネコは現れなかった。
今日は頑張って1時間半も早起きした。
本日2回目、お願いします。そろそろ来てください。
祈るような気持ちで時間になるのを待つと、ゆっくりとネコが歩いてきた。嬉しくなって近づこうとすると、プイっとそっぽを向いて逃げて行ってしまった。ようやく会えたネコとのご対面は一瞬で終わってしまった。
手の中にバッチが握られていることを確認して、今後の餌付け計画を思案する。どこかにネコのおやつ売ってないかな……
≪始まりの街アテビにてバッチを3つ入手したので アテビのバッチと交換します≫
いきなり出たメッセージに慌ててキャンセルしようかと思ったけれど、≪OK≫というボタンしかなかった。せっかく入手したネコのバッチなくなっちゃった。ため息をつきながら手の中にあるバッチを確認した。
「なんで?」
思わず声が出てしまう。効果のない記念アイテムを集めていたつもりが、ステータスアップ&時間短縮のアイテムになっていた。どうしよう……。早朝だからクランメンバー誰もいないので、メッセージアプリでリリアンに連絡をとることにした。
【おはよう 起きてる?】
【おはよ。朝から何かった?】
【ネコのバッチ入手したら アテビのバッチに交換って言われて 効果付きのアイテムになった たぶん全プレーヤーが欲しがる気がする ごめん、混乱してて上手く説明できない】
【ゲームの話だよね?ログインしてるなら会議室で話聞きたいんだけど】
【まだいるよ 会議室で待ってるね】
【マスターにも声掛けた すぐ行く】
会議室に移動して待っているとマスターがやってきた。
「おはよ。ごめん、もう学校行かなくちゃいけなくて……アイテムだけ確認させて」
「おはようございます。これなんですけど……どうでしょう?」
アテビのバッチを見せるとマスターは一瞬悩んで
「しばらくは、この情報を話すのはクランメンバーだけにしよう。あとはリリアンが話を聞くから、もう少し待っててくれる?私、もう行かなきゃ遅刻しちゃうから。ごめんね」
「はい。行ってらっしゃい、気を付けて……」
マスターがログアウトすると入れ違いにリリアンが来た。
「おはよ。マスターもう行っちゃった?」
「おはよう。このバッチ見て、しばらくクラン内だけで情報を共有するって言ってたよ」
「全ステータス+3と作製時間10秒短縮か……絶対に必要なアイテムではないけど、誰でも入手可能なものだから、情報の出し方次第で大変なことになりそうだね」
「そうなの?」
「ネコのバッチが発見された時は、効果なしアイテムなのに順番待ちが出来たんだ。今回は効果付きのアイテムだから慎重にしないとね」
「分かった、先に場所だけ教えておくね。そろそろ学校行く準備しないダメだよね?」
マップを開いてリスとスズメの出現場所を教えると、リリアンはマップを拡大・縮小を繰り返し頭を傾けながら唸っている。
「ミーナ……迷子にでもなったの?ここって水路の所だよね?」
「そうだけど、なんで?普通に散歩してただけだよ。そろそろ家を出る時間だから、私もう行くね。続きは学校で話そう」
確かに人の少ない場所探していたから入り組んだ場所だったけれど、空間認知能力は高い自信がある。マップがあるのに迷子になんてならないよ。




