イベント
夜、ログインして会議室に行くとジャネットさんがいた
「あれ?まだイベント中ですよね?」
「うん、開始5分で死に戻りしちゃった」
「やっぱり敵強かったんですか?」
「うん、レイドバトルっていうプレイヤー全員で1体のモンスターを倒すんだけど、イベントマップにたどり着いた人のほとんどが記念参加だったみたいで一撃で殺されてたよ。ボクももう少し粘りたかったんだけど、やっぱりレベルが足りなくてね」
「他のみんなは、まだ戦ってるんですよね?」
「うん。ミーナちゃんのポーションがあるから頑張ってるよ。他のプレーヤーがあまり残ってないから心配だけど……ほら、一緒にライブ観戦しない?」
そう言って隣の椅子を進めてくれた。ジャネットさんの観ている画面を覗くとモンスターが暴れている映像が映し出されていた。よく見ると周囲を数十人のプレーヤーが囲んでいる。隙をついて攻撃しているけれど、大丈夫なのかな?
「巨大化したゴーレムだよ。攻撃は遅いけどパワーがあるし、岩石落としの範囲攻撃がやっかいなんだ。一番の問題はHPが高いこと。なんとか凌いで攻撃も少しは当ててるけど時間内に倒すことは難しそうだよ」
「じゃあ、負けちゃうんですか?」
「うーん、このゲームのイベントは初めてだから断定は出来ないけれど……公式のイベント告知では『ゴーレムの暴走を止めろ』だったからね。倒さなくても何かしらの結果が出ればいいんだけど……」
結局ゴーレムを倒すことは出来なかった。イベント終了時間になるとゴーレムは山へと帰っていき、『撃退成功』の文字が大きく表示された。
傍には悔しそうにしているクランメンバーの姿が見えた。
落ち込んで帰ってくるメンバーを迎えようとジャネットさんと話をしていると、みんながやる気に満ちた表情で帰ってきた。
全員が到着したのを確認して、マスターが真剣な表情になり決意表明をする。
「我がクラン【paradisum】はエリアボスの撃破に挑むことに決めました。みんな、今日の悔しさを忘れないうちに目標に向かって突っ走るよ!今回のイベントで攻略トップ組との差が大きくないのは分かったよね。私達ならきっと出来る。頑張ろう!」
「はーい」
「頑張りまーす」
「次は絶対に勝つよ!」
みんなやる気満々。ジャネットさんは少し不安そうだったけれど、傍にいた人に声を掛けられて表情を引き締めた。きっとサポートしてもらえるのだろう。
私はそっと手を上げ、声をあげる。
「すいません。イベントが終わったら認定書とバッチの取得しようと思っていたんですが、それを優先してもいいですか?」
「私達も明日はギルドのクエストをやってみることにしたの。2~3日ならポーション余ってるから問題ないよ。認定書の取得を最優先してね、頼りにしてるからね」
「わかりました、頑張ります」
自販機が空っぽだったから今作っているポーションは納品しようと思っていたけど、これも認定書取得用にまわさせてもらおう。




