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ただでさえ美味い手料理に『美少女の』なんてついたら最高すぎる

瘉は弱い。

「話し方的には瘉っぽいんだけどやっぱ信じられない。漫画とかならともかくいざ実際に『女の子になりました』って頭おかしいと思うわ」


「ならこの前のゲーセンでやった格ゲーで煌がやったコンボするときの入力ミスを順番に一つ残らず言ってやろうか」


「ああこれはお前だわ人のコンボとか入力とか画面越しでわかるのお前ぐらいだわ」


 涙目で必死に訴えてくる。画面越しで人の入力が完璧にわかる凄い特技は多分こいつだけだ。それでそんなん言われたら信じるしかない。


 少し濡れた目が光に照らされて宝石のように綺麗に見える。不安そうな顔から笑顔に変わった。 


 可愛い。え? 笑顔可愛すぎない? 天使がおる。可愛い。信じてなくても信じるって言うわ。だって美しすぎるんだもん。


「ありがとう。信じてくれて」


 俺が信じた事で泣き止んだ。だけれど性転換の問題は解決した訳じゃない。一度話し合いをする為にリビングに行く。元々親と3人暮らしのリビングは広く高校生二人なら余裕でくつろげる。ソファをベッド代わりに使えるぐらいだ。


「『朝一番』に来てくれたって事はまだ朝食を食べてないよね。すぐに作るから少し待ってて」


 俺が信じたことで安心したのだろうか。先程の泣き顔とはうってかわって笑顔でエプロンを付けている。

 ちょっとした言葉で俺がまだ朝食を取ってないことに気づいていた。いざ意識するとお腹が空いてきた。


 卵を割る音。ベーコンを焼く音。コンロを付ける音が2回する。冷蔵庫からジャスミン茶のような物色の液体が入ったガラスポットを取り出していた。よく見ると人差し指が赤くなっていて、ポットを持つ指として使われていない。


「人差し指どうしたんだ?」


「軽く突き指しちゃって、使わなければ大丈夫だから」


「その指じゃ包丁とか危険だろ」


「僕が何年料理してると思ってるの」


 本人が言うから大丈夫だろうけどやっぱり気になるので見に行く。豆腐や油揚げを人差し指を使わず包丁で切っている。それを目玉焼きと並行でやっているから相変わらず器用だ。


「そこにいるなら食器を用意してくれると嬉しいな」


「ん」


 戸棚から食器を取り出す。当然のように俺の茶碗や箸もある。数え切れないぐらい泊まりに来てるから色々と俺のものがおいてある。


 チラッとみると味噌汁の味見をしていた。片手に小皿を持って口に入れているだけなのに様になっている。これだけでもう美味いだろうなと期待ができた。作るの早いな。


「…………もうちょっと濃いほうが煌好みかな」


 ドキッとした。自分も食べる朝ごはんなのに俺に合わせてくれるなんて。小声で俺の返事を求めてないことから独り言だということはわかる。俺に気を使っているとかじゃなくそれが当たり前化のように自然と出たような口ぶりだ。



 食卓に目玉焼きと焼きベーコン、味噌汁、漬物、ご飯が並ぶ。


「「頂きます」」


 ズズ………


 味噌汁は俺の好みの味付けになっていた。美味い。僅かに濃い味噌に僅かな甘みがある。鰹節のダシかな?


「ダシなんて取ってたっけ?」


「うん。作り置きしたやつ」


「さっきのジャスミン茶みたいなやつか」


「正解」


 箸で目玉焼きを半分に切る。黄身がトロっと出てきてそこに醤油と絡めてご飯と一緒に食べる。シンプルだけど美味い。


 ふと瘉のほうを見る。少し嬉しそうにしながら食べている。友人(美少女)の手料理。あれ? この状況って、シチュエーションとしては最高じゃね? 美少女が俺の為に手料理を振る舞ってるんだよ、しかも好みまで合わせて。


「僕の顔に何か付いてる?」


「いや………突き指、病院行ったほうが良くないか?」


「突き指で病院って大袈裟だと思うけど」


「去年バスケで突き指して剥離骨折したの誰だっけ」


「………いつもの先生の所に行ってきます」


「い つ も の せ ん せ い」


 苦笑いで病院に行く意志を見せる。


 俺達にとっては変わりない会話。それのおかげでバレなかったが顔を凝視していた。


 こいつ男の筈なのに女子力高いから一瞬この美少女が『瘉』だって事を忘れた。そうだ。常に忘れないでおかないと。ただでさえ一目惚れしたんだ。見た目が別人のように変わっている。


「今の声じゃ電話してもイタズラだと思われるだろうし俺がするよ」


「ありがとう。いきなり性転換の弊害が」


「服も買わないとな。朝起きたら変わってたそれ一着だけだろう」


「………………………………………」


 ついで感覚で出した服の話をしたらご飯を箸で口に入れたまま止まって何か考えてると思ったら僅かに震えながら目から涙が溢れ始めた。


「なぜに泣く?!」


「良く考えたら、着てた寝間着消失してる」


「瘉弱い! それで泣くとか弱いよ?!」










瘉。

両親が共働きの為コンビニ弁当で済ませて料理はたまにだったが煌と友達になってから毎日料理して腕が上がっている


煌。

初めてあったときから瘉の弱さには驚きを隠せていない。その為「瘉弱い!」が口癖になっている。周りからは聞き慣れた言葉として認識されるレベル。


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