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気持ちよくていつの間にか寝てて起きたら過去最高の美少女が目の前にいた。

好きなキャラクターとほぼ同じ髪型にしてみた。

 寝そべる。仰向けになる。少し硬めのソファーのような感触がバイト疲れの体を受け止める。初めての美容院での初めてのシャンプー。良く気持ちが良いと聞くがお値段がお値段なので一度も行ったことがなかった。緊張から体が固まる。無意味に力が入っている。それ以前にマルマルさん一人だけで目からの情報量がとんでもない事になっているのに店内のカラフルな内装でリラックスも何ない。自然と目を閉じたくなった。


「今からシャンプーしますから、楽にしててね。目に入るといけないから閉じてね」


 目を閉じる。目からの情報が無くなった瞬間、頭の上から聞こえるシャワーの音が鮮明に聞こえた。家にあるシャワーと比べて弱い音。それでも聞き慣れて、疲れが取れる音。髪が優しくシャワーに当てがれている。髪に痛覚があるわけじゃない。それでも根元に伝わってくる。手が髪の毛を傷つけずに、柔らかく、優しく、撫でるように、伝わってくるマルマルさんの手付き。気持ちが良い。眠くなる。目を閉じているからこのまま眠ってしまいそうだ。床屋で髪を切りに行くときの何倍もの気持ちよさ、眠くなるタイミングで髪が切り終わるのとは訳が違う。1分もたたずに睡魔が訪れた。


 長い髪、それがわかっているから、時間がかかるのもわかる。この気持ちよさ、心地よさが長く続く。そう考えたら、いっそ全て任せて意識を飛ばしたいと思ってしまう。


「寝てても良いですよ」


 そう思ったタイミングで優しく言われる。目を覚まさないように柔らかく、少し小さめの声。寝ても良いのだろうか、そんな思考は一瞬で吹き飛び、ただただ髪の毛を洗われている心地よさに集中して雑念も存在しない、何も考えず。


 ワシャワシャ、シュワ~。そんな音が聞こえる。泡の音だ。先程とは違い根本から洗われる。頭皮をマッサージするような洗い方は、先程とは違う心地よさがあり少し楽しい。少し睡魔が飛びその感覚を味わう。髪の毛を洗われている筈なのに、リラックスしているせいか全身が綺麗になっていく錯覚を起こす。


 ゆっくりと、毛先にかけて洗われていく。ほんの少し揺さぶられている感じがまるで揺り籠で、安心感があって、いつの間にか意識を手放していた。








 _______________










「終わりましたよ」


 聞き慣れない声が聞こえて、一瞬にして意識を取り戻した。


「んん、ん〜」


 心地よくて寝ちゃってた。ええっと、何で寝てたんだっけ? そうだ、蓬さんに連れられて美容院に……………。


 顔を上げる。




 この3日間で何度も見た顔。それでも現実離れした美しさが未だに慣れをくれない。だからいつ見ても美しいと思ってしまう。けれど今回は鮮明に新鮮に、目を見開いた。息を吸うのを忘れるほどに、目を奪われた。


 長い長いストレートの髪の毛には僅かに癖っ毛が付いていた。膝辺りまで真っ直ぐだった髪の毛はふんわりと、少し丸美を帯びていて太ももの上らへんまでになっている。優しい風が吹いて髪を靡かせている感じがする。あえて少し離れた左右3箇所から三編みされた2つの束は途中で細いストレートになっていて肩に軽く乗って前に出ている。それだけじゃない。その三編みは根本から編まれているのではなく少し余裕を残している。それによって束になっているのにも関わらず重くなく、窮屈感もない。


 つい触りたくなって手が髪の毛に触れた。手が風みたいに髪の毛の間に入り込む。一本一本がサラサラしていて指でくるくる巻いても離せばすぐに元に戻る。絡まる感じもない。


 手で弄っていた時に気づいた。良い匂いがする。まるでお日様のような、日向ぼっこしていたような、自然な良い匂い。いつまでも嗅いでいたい。





 髪型が少し変わっただけなのに、目が離せない。


「綺麗」


 口から漏れていた。


「でしょう? 貴方、今とっても綺麗よ。人間髪で決まるのよ」


 この姿、髪の毛が長いからこそのモノ。オシャレってこういう事なんだ。


「どう? 髪の毛は切りたくなくなった?」 


 マルマルさんが既に帰ってくる答えはわかっていると自慢気に聞いてくる。


「切りたく………なくなりました」


 可愛いし美しいし綺麗だし、印象も変わるし、暫くは、切らないでおこうかな。


「でしょ。女は髪が命」


「すみません。ありがとうございます。あの、いくらでしょうか」


「お代はいらないわ。むしろ定期的にモデルになって欲しいぐらいだわ。貴女みたいな子、そうそういないわよ。テレビでも見ないぐらいだわ」


 流石はAPP17。モデルかぁ。カットモデルとかそっち方面のやつだろうけど。ずっとこの体と言う保証もないし、定期的にって言うのは多分無理だろう。


「多分、急に来れなくなると思いますけど、それでも良いのでしたら」


「ぜんっぜんオッケーだわ」




 なんやかんやでお礼を言ってお店を出る。シャンプー、気持ちよかったな。あれはお金を払ってでも体験したい。月1で通うかな。


 蓬さんとも別れる。予定も無いしどこか出かける時間もありゃしない。買い物とかちょっと遊びに行く時間はあるな。そうだ、ちょっとこの髪を煌に見せてこよっと。バイトは終わってるだろうし。

















瘉。

一目惚れした子(自身)のオシャレ姿をもっと見てみたい。髪を切るのはやめよう。マルマルさんのお店に定期的に通う事を決めた。


蓬。

大満足。


マルマル。

あの奇跡の美少女の髪を触れた事にとても興奮している。しかも定期的にモデルになってくれる。最高。

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