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髪を切りたいと言ったらバイト先の先輩に手を引かれた。

瘉ちゃんの髪の長さってマジで結構長い設定なんですよね。

「「お疲れさまでした。お先に失礼します」」


「お疲れ様。今日もありがとね」

 

バイトが終わった。給料日は明後日、夏休み何しようかな。同人即売会、夏祭り、ゲームのイベント、計画的に使わないとお小遣いの上限に達してしまう。ただでさえ必須リストによって買った色々なもの……あ、結局煌に昼ごはん奢ってない。どっかで奢らなきゃ。


「星流君………で、良いのかな、何かすっごく違和感がある。その顔で君付けで呼ぶのは」


「それは友人にも言われました。一人称の方ですが」


「『私』じゃないの?」


「普段は『僕』です。僕の名前は星流瘉です」


「うわすっごく違和感がある。その顔でそれは………ギャップ? 微妙。厳つい男がケーキ好きとかならまだいっそ清々しいけど、髪が明るい清楚系で可愛いからギャップより違和感が強い」


「えぇ」


まあ僕も私も使い慣れてるからどっちだって良いけど、出来れば僕を使いたい。


「店長が君付け呼んでもなんともだけどわたしは………星流ちゃんで良いかな?」


「はい。大丈夫です」


「え? いいの?」


少し申し訳無さそうに言ってきたら豆鉄砲でも当たったような顔になった。


「男の時から(煌のお母さんに)ちゃん付けでは呼ばれてましたし」


「元々可愛い部分があったとはいえ、男にちゃん付けは良いの?」


「慣れれば平気です」


「慣れかぁ。話は変わるけど女の子として必要なものとかあるけど大丈夫なのかしら?」


「それなら行きつけの病院の先生に必要な物のリストを作ってもらいました」


「行きつけって、星流ちゃん、病気か何かあるの?」


「無いです。熱中症だったり、怪我だったり、怪我だったり、怪我だったり倒れたりでよく行くんです」


「体、弱くない?」


「強くなりたいんですけど、体質がそうさせてくれないんですよ」


「それは、ご愁傷さまです。お医者さんの用意したリストがあるなら大丈夫そうだけど、女としてわからないことがあったら相談してね。女性歴19の私がどんと教えるわ!」


ある胸を張ってドヤ顔で手で胸を叩く。凄く頼りになりそう。流石蓬さん。


「ありがとうございます。早速ですが悩みがあるのですが」


「早速。何かしら」


「髪の毛を早く乾かすコツを教えてください」


「髪の毛をタオルで拭いたあとにとかすと水滴が毛先に集中するからそこを拭いて最後にドライヤーで早く乾くわ」


「それでも面倒ですね」


「いきなりやる人にとっては面倒に思うかしれないけど続ければ大して気にならないわ」


「もういっそ切ってしまいたいと思う程です」


「待ちなさい」


「へ?」


両手で肩をがっしりと掴まれた。軽く睨まれている、いや真剣な顔で止められてる。


「ちょっとこっち来なさい」


手を引っ張られどこかに連れられる。なんで? 髪切るのってそんなにだめ? いや、逆にどこか良い床屋に連れてってくれるとか? まだわからないけどとりあえず抵抗せず連れられる。


「ついたわ」


「あの、ここって」


「私の知り合いがやっている美容院よ。ここに入れば髪を切るなんて発想は無くなるわ」


大通りにある美容院。ガラス張りに書かれている値段を見ると5400とか高い。ちょっとまって、ここでその出費は痛い。


「あの、財布がとても軽くなる値段なのですが」


僕の言葉を無視して店に入っていく。店内は何というか、カラフルだ。十色の水玉模様があたり一面に散りばめられている。目がチカチカする。


「マルマル〜来たわよ」


「あら〜、蓬ちゃんじゃな〜い。いらっしゃい」


鶏のような髪型で筋肉質でドレスを着てサングラスをつけた人が出迎えてくれた。情報量が多い。またせたなと言いそうな渋い声でオネェみたいな喋り方。あれ? ここってどこだっけ?


「あら? 蓬ちゃん、この前きたばかりじゃないかしら?」


「今日は私じゃなくてこの子。同じバイトの子なんだけど」


「あら、どれどれ?」


俺の方をじっくりと見ている。サングラスで隠れている筈なのに眼力が強い。なんでわかるんだろう。


「カッ!」


「??!!!!」


「わかる! わかるわ! その髪、ハーフアップで結んであるけれどその長さは足のフトモモまである長さだわ。なのに枝毛の一つもない。それもケアして防いでいるのでは無い。一度も分かれず自然に伸びていった髪。そのサラサラ具合、髪の毛一本一本に毛先までちゃんと栄養が行き届いていて、その髪がどれも途中で絡まることのない質感。それが正しく結ばれていてまるでシルクの糸で縫われたような安定したふわふわ、そして光の反射、ヘアスプレーなんてものは使われていない髪本来の美しさ。何よりその色! 光の当て方によってはピンクとか、灰色、肌色、十色になりうるベージュを基本にした白色。まさに理想の髪! まさに天使だわ! 触って良いかしら?! その髪を解いて触って良いかしら?!!!」


「は、はい!」


「じゃあそこに座って!」


めっちゃ怖いけどなんかこの人だけでカオスすぎて逆に安心感があるのはなぜ?!


椅子に座ると物凄いスピードで髪が解かれていく。ブラシで解かされていく。なんだろう、凄く気持ちいい。


「こ、これほどの髪は見たことも触ったこともない!」


「この子、長いのが面倒で切ろうとか言ってたわ」


「なに?! こんな理想的な髪を?! だめよ!」


「だから切りたくないと思う程にお願い」


「任せた」


一瞬にしてトーンの低い渋い声になる。これから何されるんだろうか。


「まずはこの特性シャンプーでその髪を洗うわ」


椅子が動いた。凄い。


「さあ、始めましょう」






 






 


瘉。

この3日間で髪の毛を洗うのも乾かすのも面倒と感じている。 


蓬。

星流君の髪を切るのはもったいない! 凄く可愛いしこれを気にオシャレにしてやる!


マルマル。

美容院の店員。物凄く腕が良い。が見た目の情報量が凄い。それが原因で店に入る人が少ない。蓬の義兄。マルマルはなんか可愛いから自分から名乗っている。瘉の髪の毛を見て絶賛発狂中



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