表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

12/19

不安定な心。

実はこれ、一日目です。

ブクマ、高評価ありがとうございます!

どっかいったかき氷。

「瘉! しっかりしろ! おい!」


「こう……………………」


 僅かに反応はある。でも目の焦点があってない。体温も高い。熱中症だ。でもなんで、瘉はちゃんとこまめに飲んでたのに。とにかく、外は日陰でも暑すぎる。どこか涼しい場所、今デパートの冷房壊れてるんだ! それでも外よりは幾分かマシだ。


 瘉を持ってデパート内に走る。どこのエリアが涼しいか係員に聞けばわかるはず! いた! 


「すみません! 涼しいところってありすか?!」


「うお?! びっくりした?! 涼しいところって、もしかして熱中症かい!」


「はい!」


「医務室とかは非常時にも備えられるように設備が違うから冷房はついてる! 付いてきて!」


「はい!」


 すぐに察してくれた係員が医務室へ案内してくれる。一階の迷子センターの横。その入り口を乱暴に鍵を開けてくれた。


 すぐに瘉をベッドに寝かせる。大量の汗で濡れた空だ。体温は高く、顔が火照っている。意識は朦朧としているのか開けているがどこを見ているのかわからない。息が荒い。


「ええっと」


 熱中症てどうすれば良いんだ?! いつも瘉が対策してるから近くで倒れたことなんて無かったからまともに覚えてない。授業をまともに聞いてたつもりでいたのに! 冷やすって事は覚えてる。そうだ! 医務室なら冷えピタの一つぐらい!


「と言うか看護師さんは?!」


「ここのデパートの医務室は関係者向けなんだ。ここのお客さん向けは看護師さんが多い時にしかやってない。一応連絡するから、とりあえずこれで冷やして! 」


 部屋の奥からペットボトルと冷えピタが投げられる。冷たい。冷蔵庫に入ってたやつだろう。


 冷えピタはおでこに貼って、ペットボトルは、とりあえず首に。


「はい! 君! 繋がった! 服を脱がせて冷やす場所は付け根を重点的にって!」


「はい! これぐらい我慢してくれ!」


 半袖のパーカーを脱がせる。シャツのチャックを外して胸が隠れる程度に広げる。

 複数のペットボトルを脇、股関節付近に当てる。


「意識確認!」


「先程しましたが反応あり! 目の焦点があってないです!」


「受け答えは!」


 それはまだ確認してない!


「瘉! 俺の名前をフルネームで言ってみろ!」


「……………天宮煌」


「受け答えできます!」


「そしたらこれ飲ませて! 自力で! できないなら医療機関だって!」


「瘉! 手を動かせるか?! これを飲むんだ! 少しずつでいい!」


 受け取った少し濁った水。スポドリか何かだろう。蓋を開けて渡す。背中とお腹に手を添えてゆっくりと起き上がらせる。

 瘉は受け取るとゆっくりと口につける。


 体外からも体内からも一気に冷やされたおかげか瘉の目線は俺を捉え始めていた。少し時間が立つ。


「…………煌?」


 まだ弱々しい声。けれど症状は軽くなっていた。


 暫く医務室で休み、さらに体調が良くなったので帰る事にした。









「ねえ、どうしておんぶしてるの?」  


 瘉は疑問を浮かべながらも抵抗無く俺に捕まっている。


「念の為だ。瘉弱いから」


「………なれてるから良いけど」


 俺はなれていない。背中に柔らかいモノが当たってるからだ。それにいい匂いする。触れている足がスベスベ。もう大丈夫と安心感があると意識してしまう。けれど瘉だからまだ心配と言う不安もある、


「煌、」


「なに?」


「ごめん。熱中症になったの、僕のせいだ。ちゃんと塩分を取ってなかった」


「言われてみれば」


 外に出てから天然水しか飲んでない。アイスも塩分少ないし。いつもの瘉ならそんなミスは絶対にしない。女の子になって楽しんでいる事もあれば不安もある。いや、無意識のうちに当たり前の注意ができてない。不安定なんだ。心が。そりゃそうだよな。いきなり性別が変われば。こうやって触れているのに、今だにどこか受け入れられない自分もいる。当事者の瘉からすればまだうけ入れられるものじゃない。何せ心と体の性別が違う。


 もっと気遣えば良かった。一人にしなければよかった。二人いるからって欲張って一気に買い物しなければ良かった。


「瘉…………少しずつ慣らしていこう。大丈夫、俺がいるし雨宿先生もいる」


「ありがとう…………でも」  


 瘉の抱きついてくる力が強くなる。震えている。俺の言葉じゃ、今の瘉の不安は取り除けない。俺は瘉と違って、言葉ではどうしようもない。


「一人は怖いよ」


「………………」


 瘉にとって俺が転校する前の学校はトラウマだ。一人だったから、頼れる人がいなかったから。親が滅多に帰ってこない一軒家、瘉の帰る場所で、安心する場所であっても、不安から開放される場所ではなかった。


 俺も一人は怖い。味方がいなくて、俺の言葉は弱いから一人にしかなれなくて、何が間違いで、何が正しいかもただ押し付けられるばかりで。


 スマホを取り出す 


「母さん、今日は瘉の家に泊まる。………わかった。それじゃあ」


 あっさり快諾してくれる辺り俺の親は優しすぎる。だから親にだけは手を出せなかったんだろうな。


「明日は何しよう。家にいてできるやつ」


「…………ソシャゲ、明日からコラボで『日白』さんが登場する」


「天井確定だわ。よっしゃ」


「課金するからコンビニよって」


「このままで?」


「流石におろして」 


 いつもどおりの明日にしよう。



瘉。

落ち込んだりすると頼れる人がいなかった為喋らなくなる。今は煌に本音を話せるしおかげで立ち直れる。


天宮 煌。

落ち込んだりしても自身で立ち直れる。引っ越してくる前は小、中学生にして人を信じられなくなっていた。瘉には信頼を寄せている。


雨宿 信。

後日、一日で指負傷、手首負傷、熱中症と言う3連コンボを聞かされて心配を通り越して呆れている。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ