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黒猫虎 児童館

魔女とぬいぐるみのくまの騎士と呪われた兄妹

作者: 黒猫虎

 とおいとおい(べつ)世界(せかい)にある、(ちい)さな(くに)の、(ちい)さな(まち)出来事(できごと)です。


 この(まち)には、とても(なか)のよい(あに)(いもうと)2人(ふたり)兄妹(きょうだい)()んでいました。


 10(さい)(あに)名前(なまえ)はブルック。

 ブルックはすこし凛々(りり)しくて、すこしやんちゃな(おとこ)()です。


 8(さい)(いもうと)名前(なまえ)はベルタ。

 ベルタはとても可愛(かわい)らしくて、とても内気(うちき)(おんな)()です。


 ある(ふゆ)(さむ)()、ブルックはベルタからおくりものをもらいました。


「なになに?」


 ブルックは誕生日(たんじょうび)でもその(ほか)特別(とくべつ)()でもなかったのですがとても(よろこ)びました。


 (つつ)(がみ)をあけると(なか)からはとても美味(おい)しそうな(あか)(しろ)の2(しょく)(ぼう)つきキャンディが2(まい)()てきました。


「わぁ、おいしそう!!」


 ブルックが(よろこ)んで()べようとすると、お()きの(ひと)()めました。


「まず毒味(どくみ)をしますね」


 キャンディ2(まい)1人(ひとり)毒味(どくみ)するには時間(じかん)がかかるので、お()きの(ひと)1枚(いちまい)ずつ2人(ふたり)毒味(どくみ)をすることにしました。


 これは(いもうと)のベルタのていあんでした。


 まわりの大人(おとな)たちはベルタのかしこさをとても()めました。


 お()きの(ひと)2人(ふたり)1枚(いちまい)ずつペロペロと毒味(どくみ)をしてるのをブルックはよだれをたらしながら()ちました。


大丈夫(だいじょうぶ)です」


 毒味役(どくみやく)の2人が毒味(どくみ)()えて()いました。


「いただきます」


 ブルックは(おお)きくお(くち)をあけて()いました。


()って」


 まさにブルックが()べようとしている(とき)()ての(こえ)をかけたのは、魔法(まほう)のくまのぬいぐるみ『ナイト』です。


 ナイトはベルタが7(さい)誕生日(たんじょうび)をむかえた(とき)に、ブルックが(いもうと)(まも)騎士(きし)として(おく)ったくまのぬいぐるみです。


 くまのぬいぐるみの騎士(きし)のナイトは()いました。


(ねん)には(ねん)()れて、キャンディを交換(こうかん)してなめてみて」


 ナイトはベルタを(まも)騎士(きし)のつとめとして色々(いろいろ)なちしきを勉強(べんきょう)していたので、ひとつひとつは(どく)じゃなくても同時(どうじ)()べることで(どく)になるものがあることを()っていたのです。


 そして、ナイトはベルタに自分(じぶん)(おく)ったブルックにとても感謝(かんしゃ)していたので、ブルックのことも(まも)ろうと(かんが)えていました。


大丈夫(だいじょうぶ)です」


 また、毒味役(どくみやく)の2人が毒味(どくみ)()えて()いました。


「ナイト! わたしのていあんに意見(いけん)するなんてひどいわ」


 ベルタは内気(うちき)ですが、家来(けらい)のナイトにはちょっと強気(つよき)なところがありました。


 ベルタは自分(じぶん)のていあんがナイトのせいで採用(さいよう)されなかったので、とても不満(ふまん)そうです。


今度(こんど)こそいただきます!」


 ブルックはまた邪魔(じゃま)がはいらないうちにと(いそ)いでキャンディ2(まい)同時(どうじ)にほおばりました。


「お、おいしい」


 するとしばらくして、ブルックは()いました。


「く、くるしい」


 ブルックの顔色(かおいろ)はまっ(さお)(ちか)(いろ)になっています。


 それを()ていたベルタは「まあ、たいへん」と(ちか)より、背中(せなか)をさすってあげました。


一度(いちど)に2(まい)もお(くち)()れてほおばるからよ」


 ブルックは()いました。


「た、たすけて」


 まわりの大人(おとな)たちはやっとここで異変(いへん)(かん)じました。


 ブルックを(たす)けようと大人(おとな)たちが(ちか)づこうとすると、ベルタがいきなり豹変(ひょうへん)しました。


(ちか)づくんじゃないよ!」


 ベルタの(さき)ほどまでのかわいらしい(こえ)はガラガラの(おそ)ろしげな(こえ)変化(へんか)しました。


 そして()()()るからに(おそ)ろしい魔女(まじょ)姿(すがた)にみるみる()わっていきました。


「アタシは恐怖(きょうふ)魔女(まじょ)『ウィッチ』。ブルックとベルタの兄妹(きょうだい)があんまり(なか)がいいから(ゆる)せなくて2人(ふたり)(のろ)いを()けに()たのさ」


 恐怖(きょうふ)魔女(まじょ)のウィッチはとても(たの)しい(こと)()こったと()わんばかりに満面(まんめん)()みでグシシと(わら)いながら()いました。


 ブルックはもう(うご)けない様子(ようす)です。


 まわりの大人(おとな)たちは、ブルックがもう()んでしまったと(おも)いました。


「バカどものおかげでアタシの目的(もくてき)はたっせいした。あばよ!」


 ウィッチはグシシと(わら)いながらコウモリに変身(へんしん)し、そのまま(まど)から(そと)()んでいきました。


 さて、(のこ)されたのは大人(おとな)たちとくまのぬいぐるみの騎士(きし)のナイト、(うご)かなくなったブルックです。


 本物(ほんもの)のベルタはどこにいるのでしょう。


 ◆ ◇ ◆


 ベルタは(おお)きな物置部屋(ものおきべや)にいました。


 恐怖(きょうふ)魔女(まじょ)のウィッチに()()められたのです。


 (おお)きな(こえ)(たす)けを(もと)めてもだれにも()づいてもらえません。


 でも、ベルタは8才(はっさい)(ちい)さな(おんな)()ですが、()いたりはしませんでした。


()っていたらきっとだれか()づいてくれるわ」


 でも、なかなか()づいてもらえません。


(なに)(たす)けを()べる道具(どうぐ)はないかしら」


 物置部屋(ものおきべや)には、使(つか)えなくなったり使(つか)わなくなったり、とても高価(こうか)だけど時代(じだい)おくれになった(いろ)んなガラクタが、いーっぱい(やま)のようになっていました。


 するとこわれて(おと)()なくなったたて(ふえ)()つかりました。


 このたて(ふえ)(むかし)ベルタが学校(がっこう)音楽(おんがく)授業(じゅぎょう)使(つか)っていたのですが、やんちゃな(あに)のブルックがチャンバラをしてこわしてしまったのです。


「この(ふえ)がなおって(おと)()るようになったら、きっとだれかに()づいてもらえるわ」


 ベルタは(ちい)さな(まど)からさし()んでくる(ちい)さな(ひかり)(した)で、こわれたたて(ふえ)調(しら)べます。


 はじめの(うち)はどうして(おと)がでないのかまったくわかりませんでした。


 しかし、とうとう「ふぅ~」と、(すこ)しだけ(おと)()りました。


「あ、わかった!」


 ベルタは、たて(ぶえ)のある部分(ぶぶん)にひび()れを発見(はっけん)しました。


「きっと、このひび()れから空気(くうき)がぬけているのが原因(げんいん)だわ!」


 ベルタは今日(きょう)自分(じぶん)はとても()えていると(おも)いました。


 ひび()れをベルタは()(ふさ)いでみます。


「ふぉ~っ」


 さっきと(おな)じぐらいの(ちい)さな(おと)しか()ません。


 ひび()れが(おお)きすぎて、ベルタの可愛(かわ)(ちい)さな()では(ふさ)ぎきることができないのです。


「どうしたらいいのかしら……」


 またガラクタの(やま)(さが)してみると、(ふる)救急箱(きゅうきゅうばこ)()つけました。


 するとベルタの()えた頭脳(ずのう)高速回転(こうそくかいてん)します。


「ひらめいたわ!」


 ベルタはいそいで救急箱(きゅうきゅうばこ)をあけました。


「ケガの(とき)()いたりする包帯(ほうたい)があれば、ひび()れを(ふさ)げるわ!」


 救急箱(きゅうきゅうばこ)(なか)(さが)してみると包帯(ほうたい)発見(はっけん)しました。


「やったわ!」


 しかし、だいぶ使(つか)われてしまったのか(なが)さが(みじか)く、たて(ぶえ)のひび()れを(ふさ)げそうにありません。


「どうしたらいいの……」


 ベルタは(すこ)()()みましたが、また元気(げんき)()して救急箱(きゅうきゅうばこ)(なか)(ほか)使(つか)えるものがないか調(しら)べてみました。


 すると、ケガをしたときに()絆創膏(ばんそうこう)を5(まい)()つけました。


「そうだ、これで(ひと)(きず)()るみたいにたて(ぶえ)のひび()れにはればいいわ!」


 ベルタは絆創膏(ばんそうこう)を5(まい)(みじか)包帯(ほうたい)全部(ぜんぶ)使(つか)って、たて(ぶえ)のひび()れを(ふさ)ぎました。


今度(こんど)こそうまくいくはずよ」


 ベルタはおもいっきりたて(ぶえ)()きました。


「ふぁあぁああああ~~~っ!」


 すると、今度(こんど)はとてもとても(おお)きな「ファ」の(おと)()ました。


「ふぁあぁああああ~~~っ!」


 ベルタは「今度(こんど)こそだれか()づいて!」と(ねが)いをこめて何度(なんど)もたて(ぶえ)()きました。


 ◆ ◇ ◆


「ふぁ~~~っ」


 その(おと)最初(さいしょ)()づいたのは、ぬいぐるみのくまの騎士(きし)のナイトでした。


 どこからかかすかにたて(ぶえ)の「ファ」の(おと)()こえてきます。


 ナイトがその(おと)発信源(はっしんげん)(さが)すと、物置部屋(ものおきべや)()()たりました。


 (いそ)いで物置部屋(ものおきべや)(とびら)()けようとしますが、(かぎ)がかかっていて(ひら)きません。


「だれか、(かぎ)()けて!」


 でも、(きゅう)()われたところで、(だれ)物置部屋(ものおきべや)(かぎ)をもっていません。


 ナイトはベルタに(さず)かった自慢(じまん)騎士(きし)(けん)()きました。


「ベルタ(さま)(とびら)(まえ)からは(はな)れておいてください!」


 (とびら)()こうのベルタに的確(てきかく)指示(しじ)(おく)ります。


 そして、ナイトの(けん)がキラリと(ひか)りました。


「えいっ」


 気合(きあ)いとともに見事(みごと)錠前(じょうまえ)()()き、(とびら)(ひら)きました。


 流石(さすが)ぬいぐるみ剣流(けんりゅう)(だん)剣技(けんぎ)()(おとこ)です。


「ベルタ(さま)!」


 ナイトがまさに(とびら)()()もうとしたその(とき)(なか)から(だれ)かの姿(すがた)(あらわ)れました。


 右手(みぎて)包帯(ほうたい)やら絆創膏(ばんそうこう)やらで修理(しゅうり)されたたて(ぶえ)をもったベルタです。


 ずっと(くら)いところにいたからでしょうか、(ひかり)(まぶ)しいのか()(うえ)左手(ひだりて)をかざしています。


「あぶない、ベルタ(さま)!」


 ベルタが(すこ)しふらついていて(たお)れそうなところをさっとナイトが騎士(きし)らしく(ささ)えました。


「ベルタ(さま)無事(ぶじ)でよかった!」


 ナイトはほっとして()()けて、安心感(あんしんかん)からおいおい()きました。


 ぬいぐるみなので(なみだ)(なが)機能(きのう)はありませんが。


「ナイト、ありがとう」


 ベルタは自分(じぶん)のからだを(ささ)えてくれているナイトにお(れい)()いました。


「わたしを物置部屋(ものおきべや)()()めたのは恐怖(きょうふ)魔女(まじょ)のウィッチよ」


 ベルタは自分(じぶん)()()こった出来事(できごと)をかいつまんでナイトに説明(せつめい)しました。


 そこでナイトはブルックのことをベルタに説明(せつめい)しなくてはいけないことにやっと()づきました。


「ベ、ベルタ(さま)……ブルック(さま)が……た、大変(たいへん)なことに……」


 ナイトはブルックを(まも)()れなかったことで面目(めんぼく)がありません。


 しょげこんだナイトの説明(せつめい)はまったく要領(ようりょう)をえないものでした。


「ナイト! しっかりして! さっきは見事(みごと)にわたしを()つけ()してくれたじゃない。あなたへの信頼(しんらい)(なに)(うし)なってないわ。ブルックお(にい)さまに(なに)大変(たいへん)なことが()こったのね。(なに)()こったのか()()いて説明(せつめい)しなさい」


 ナイトはベルタにはげまされて、普段(ふだん)どおりとまではいきませんが、(すこ)()ちつきを()りもどしました。


恐怖(きょうふ)魔女(まじょ)のウィッチがベルタ(さま)()けてブルック(さま)(のろ)いのかけられた(ぼう)つきキャンディを()べさせました。その結果(けっか)、ブルック(さま)(くる)しんでおられます」


 ナイトは今度(こんど)こそ、しっかり(なに)()こったのかをベルタに報告(ほうこく)することが出来(でき)ました。


「それは大変(たいへん)じゃない! いそいでブルックお(にい)さまのところに案内(あんない)して!」


 2人とまわりの大人(おとな)たちは、またブルックのところに(いそ)いで()(かえ)しました。


「それにしてもウィッチめ。わたしに()けるなんて、してやられたわ。(いま)()ていなさい!」


 そんなベルタが内気(うちき)だったなんて、まわりの大人(おとな)たちはもうだれも(おぼ)えていませんでした。


 ◆ ◇ ◆


 ベルタとナイトがブルックの(もと)(いそ)いで()けつけた(とき)、ブルックはもうぐったりと(よこ)たわり、顔色(かおいろ)青白(あおじろ)く、ピクリとも(うご)けなくなっていました。


 もしかしたらブルックはもう()んでしまったのかも。


 そんな(わる)(かんが)えがナイトの(あたま)をよぎります。


「ブルックさま! ブルックさまー!」


 ナイトが顔面蒼白(がんめんそうはく)になり、ブルックを()すりながら名前(なまえ)必死(ひっし)()びかけます。


「ナイト、()()きなさい! こういう(とき)病人(びょうにん)()らしちゃいけないのよ」


 どこまでもベルタが(たの)もしいとナイトとまわりの大人(おとな)たちはまた感心(かんしん)しました。


「ナイト、どうして恐怖(きょうふ)魔女(まじょ)のウィッチが(どく)じゃなく(のろ)いをかけたと()かったの? ウィッチ本人(ほんにん)がそう()ったの?」


 ベルタが疑問(ぎもん)(おも)ったことをナイトに(たず)ねます。


 ナイトは頑張(がんば)って、その(とき)記憶(きおく)(さぐ)ります。


「え~っと、それはウィッチがこう言ったからです。"アタシは恐怖(きょうふ)魔女(まじょ)『ウィッチ』。ブルックとベルタの兄妹(きょうだい)があんまり(なか)がいいから(ゆる)せなくて2人(ふたり)(のろ)いを()けに()たのさ"」


恐怖(きょうふ)魔女(まじょ)のウィッチは『2人(ふたり)(のろ)いを()けに()た』と、(たし)かにそう()ったのね」


 ベルタはなるほどとうなずき、また質問(しつもん)します。


「どういう(ふう)にキャンディで(のろ)いを()けたのかしら」


 ナイトはまた頑張(がんば)って(おも)()します。


「う~んと、(あか)(しろ)の2(まい)(ぼう)つきキャンディを毒味役(どくみやく)(ひと)が1(まい)ずつ、それから交互(こうご)になめても(のろ)いは発動(はつどう)しなかったのですが、ブルックさまが2(まい)同時(どうじ)になめると、しばらくしてブルックさまが(くる)しみだしました。きっと2(まい)同時(どうじ)になめたら発動(はつどう)する(のろ)いが仕掛(しか)けられていたと(おも)います」


 頑張(がんば)って(おも)()したナイトをベルタは(あたま)をなでなでしてあげました。


「きっと、それが正解(せいかい)ね! だとすると……」


 この(あと)もベルタはナイトに色々(いろいろ)事情聴取(じじょうちょうしゅ)しました。


色々(いろいろ)()かってきたわ」


 今日(きょう)のベルタの(あたま)()えまくりです。


「ということは、恐怖(きょうふ)魔女(まじょ)ウィッチのところには、わたしだけでいかないといけないということだわ」


 この世界(せかい)(のろ)いは、(のろ)いをかけられた本人(ほんにん)または一番(いちばん)身近(みじか)(ひと)()かないといけない性質(せいしつ)のものがほとんどでした。


 また、この性質(せいしつ)(のろ)いは(ほか)(ひと)(たす)けを(もと)めることが出来(でき)ないのです。


 今回(こんかい)(のろ)いもきっとそれだろうとベルタは目星(めぼし)をつけました。


 そして今回(こんかい)場合(ばあい)、ベルタは(のろ)いを()けられたブルックの一番(いちばん)身近(みじか)(ひと)であり(のろ)いを()けられた本人(ほんにん)でもあります。


 自分(じぶん)ひとりだけで解決(かいけつ)するにはどうしよう……とベルタが思案(しあん)しかけたところに、ナイトがいいました。


「ぼくはぬいぐるみだからベルタ(さま)についていっても大丈夫(だいじょうぶ)ですよね?」


 ベルタもはっと()づきました。


「ナイト、名誉挽回(めいよばんかい)ね! ナイトの()うとおりだわ。ナイトはぬいぐるみだからわたしを手伝(てつだ)えるわ!」


 ナイトはもうひとつ提案(ていあん)しました。


魔女(まじょ)(やかた)(ふゆ)雪山(ゆきやま)であるスノーマウンテンにあると()われています。ここからベルタさまの(あし)では到底(とうてい)たどり()けないでしょう。お(とも)にぬいぐるみロバのロバートもお()れください。雪山(ゆきやま)では(あし)(しず)()んでしまって(ある)きづらいですが、ロバートにソリを()かせれば平気(へいき)です」


 ベルタはナイトに感心(かんしん)しました。


「ナイト、素晴(すば)らしいていあんだわ。さっそく準備(じゅんび)()りかかって!」


「ははっ!」


 ナイトはベルタに敬礼(けいれい)をすると、準備(じゅんび)のためにびゅんと広間(ひろま)(とびら)から()びだしていきました。


 ◆ ◇ ◆


 広間(ひろま)(のこ)されたベルタも、自分(じぶん)出来(でき)ることは(なん)だろうと(かんが)えをめぐらせます。


呪い返し(のろいがえし)をしなくてはいけないわ」


 今回(こんかい)のような(のろ)いを()くには、相手(あいて)(のろ)いを(かえ)呪い返し(のろいがえし)必要(ひつよう)でした。


 過去(かこ)魔法(まほう)先生(せんせい)から(なら)った呪い返し(のろいがえし)のやり(かた)(おも)(かえ)します。


恐怖(きょうふ)魔女(まじょ)のウィッチはきっと呪い返し(のろいがえし)想定内(そうていない)でしょう。きっと簡単(かんたん)呪い返し(のろいがえし)とはならないはず……」


 ベルタはウィッチの性格(せいかく)想像(そうぞう)してみます。


 今回(こんかい)状況(じょうきょう)から、最初(さいしょ)からブルックとベルタの兄妹(きょうだい)用意周到(よういしゃうとう)(ねら)いうちした(のろ)いだと(かんが)えられます。


 だって、ブルックが(ぼう)つきキャンディを2(まい)同時(どうじ)にほおばるだなんて、ブルックのことをよくよく()ていないと絶対(ぜったい)()づかないはずですもの。


 とても慎重(しんちょう)執念深(しゅうねんぶか)性格(せいかく)であるとけんとうをつけました。


「そういう性格(せいかく)だから……こういう(かん)じにして……」


 呪い返し(のろいがえし)のおおまかな設計(せっけい)のレシピが出来(でき)あがりました。


 そして、呪い返し(のろいがえし)素材(そざい)には、ウィッチと(おな)(ぼう)つきキャンディを選びました。


「シェフー、シェフー!」


 シェフを()んで、呪い返し(のろいがえし)スペシャル(ぼう)つきキャンディを2(まい)(つく)るように指示(しじ)します。


(いろ)(あお)とオレンジにして、可愛(かわい)くラッピングしてね。リボンもつけて」


「ははっ!」


 シェフもベルタに敬礼(けいれい)して、びゅんと広間(ひろま)(とびら)から()びだしていきました。


(ほか)準備(じゅんび)したほうがいいことは……」


 ベルタはまだまだ(かんが)えます。


「そうだわ、物置部屋(ものおきべや)(なに)使(つか)えるものがないか()てみましょう」


 物置部屋(ものおきべや)(いそ)いで()(かえ)します。


 そこで()つけたのは『遠見の双子水晶とおみのふたごすいしょう』という魔道具(まどうぐ)です。


「これはきっとウィッチとの交渉(こうしょう)(やく)()つわ。()っていきましょう!」


 ◆ ◇ ◆


 (ふゆ)雪山(ゆきやま)(そな)えてベルタはばっちり厚着(あつぎ)をしました。


 最新(さいしん)冬服(ふゆふく)なのでおしゃれ()もばっちりです。


 ナイトとロバートはぬいぐるみなので、そのままの毛皮(けがわ)大丈夫(だいじょうぶ)です。


 ロバートはソリをつないで2人(ふたり)()()むのを(いま)(いま)かと()っていました。


用意(ようい)はばっちりね。(あらた)めて確認(かくにん)だけど、ウィッチがいる場所(ばしょ)はどこ?」


 ベルタが再確認(さいかくにん)(ため)質問(しつもん)をしました。


雪山(ゆきやま)のスノーマウンテンと()われています。恐怖(きょうふ)魔女(まじょ)別名(べつめい)(ふゆ)女王(じょおう)』とも()ばれています」


 ナイトがその理由(りゆう)説明(せつめい)しました。


本当(ほんとう)にあそこにいるのかしら」


 ベルタが右手(みぎて)人差(ひとさ)(ゆび)(しめ)した方角(ほうがく)には雪山(ゆきやま)のスノーマウンテンがそびえ()っていました。


雪山(ゆきやま)頂上(ちょうじょう)があれだけ吹雪(ふぶ)いているということは、きっといるでしょう」


 自信(じしん)たっぷりにナイトが(こた)えます。


「あの雪山(ゆきやま)のどの(あたり)魔女(まじょ)(やかた)があるのかしら」


 (ねん)には(ねん)をいれます。


中腹(ちゅうふく)くらいにあるという情報(じょうほう)をつかんでいます。また、雪山(ゆきやま)のふもとの住人(じゅうにん)魔女(まじょ)(やかた)食料(しょくりょう)をよく(とど)けているらしいので、その(かた)(くわ)しい(やかた)位置(いち)()きましょう」


 ナイトもきちんと調査(ちょうさ)していたようです。


十分(じゅうぶん)食料(しょくりょう)(みず)用意(ようい)してあるかしら」


 ベルタは()かりありません。


「ロバートなら魔女(まじょ)(やかた)まで2日(ふつか)でいけますので、往復(おうふく)予備(よび)を考えて6日分(むいかぶん)食料(しょくりょう)(みず)用意(ようい)させました」


 ナイトもベルタの信頼(しんらい)(こた)えます。


「ナイト、ばっちりね。それでは出発(しゅっぱつ)よ!」


 ベルタとナイトはロバートのソリに()()みました。


出発(しゅっぱつ)!」


 ◆ ◇ ◆


 ぬいぐるみのロバのロバートは久々(ひさびさ)仕事(しごと)にはりきっています。


 ブルックとベルタがもっと(ちい)さいときには子守(こも)りの仕事(しごと)をしていたのですが、最近(さいきん)はすっかり引退(いんたい)していました


「ぶるふー!」


 気合(きあ)いが入ります。


「ロバート、こら、もっと速度(そくど)()とすんだ!」


 ナイトが悲鳴(ひめい)をあげます。


 ブルック(さま)のピンチに(なに)()ってるんだこのクマは。


 ロバートは()こえないふりをして、さらに速度(そくど)()げました。


「こわいよー、ゆれるよー」


 ナイトは()(ごと)()っているようです。


「あはは、これもう()んでるんじゃない?」


 ベルタは(ぎゃく)にはしゃいでいるようです。


 流石(さすが)ベルタ(さま)(きも)(ふと)くていらっしゃる。


 もしかしたら最後(さいご)ロバ生(ろばせい)()舞台(ぶたい)


 そう(おも)いながら、ロバートは(いのち)をかけて(はし)りました。


「ぶるふー!」「やめてー!」


 ベルタはこの(あと)(ひか)えている恐怖(きょうふ)魔女(まじょ)のウィッチとの対決(たいけつ)緊張(きんちょう)しながらも、一面(いちめん)銀世界(ぎんせかい)段々(だんだん)(ちか)づいてくる雪山(ゆきやま)壮大(そうだい)姿(すがた)()(こころ)感動(かんどう)(ふる)わせていました。


 わたし、ブルックお(にい)さまが(あこが)れていた冒険者(ぼうけんしゃ)をしてるみたい!


「ロバート、もっと(はし)れー!」「やめてー!」


 ロバートの頑張(がんば)りで、雪山(ゆきやま)まで2日(ふつか)の予定が1(にち)到着(とうちゃく)しました。


「ロバートお(つか)れさまでした」


 ベルタがロバートを(ねぎら)います。


「ロバート、よくやった」


 ナイトも一応ロバートを(ねぎら)います。


雪山(ゆきやま)のふもとの(むら)で、魔女(まじょ)(やかた)場所(ばしょ)(おし)えてもらいましょう。それから()めてもらえる宿(やど)がないか()いてみましょう」


 3(にん)はふもとの(むら)(はい)っていきます。


 ◆ ◇ ◆


 その3人のようすを魔法(まほう)(かがみ)にうつして()ているのは恐怖(きょうふ)魔女(まじょ)のウィッチです。


「どんな(いや)がらせをしてやろうかね?」


 ウィッチは(かんが)えをめぐらせます。


 (むら)()ている(あいだ)に、(やま)(たか)くしてやろうか?


 それとも雪山(ゆきやま)(べつ)場所(ばしょ)()()してやろうか?


 しかしウィッチは、(のろ)いを()けた制約(せいやく)により、あまり(たい)した(いや)がらせはできないことを(おも)()しました。


 すぐそばにひかえていた使(つか)()(カラス)のクロウがアドバイスします。


地味(じみ)なワナしか仕掛(しか)けれないと(おも)いやすぜオヤビン! おとしあなを()る、(きり)をはっせいさせる、雪崩(なだれ)はあぶないからダメ、間違(まちが)った(みち)を教える、(とお)せんぼする……」


 クロウの(くち)からすらすらと次々(つぎつぎ)にいやがらせの数々(かずかず)()てきました。


「クロウ、わたしのことは親分(おやぶん)じゃなくて『おじょうさま』とお()び! あと、いやがらせの(あん)全部(ぜんぶ)採用(さいよう)!」


 よく(あさ)、ベルタ、ナイト、ロバート3(にん)(むら)からでるとものすごい(きり)雪山(ゆきやま)(おお)われていました。


「この(きり)はきっとウィッチのしわざね」


 でも、ベルタたちは(むら)(ひと)たちから(きり)()たときの対策(たいさく)もしっかり()いていました。


(きり)()ているときは、しっかりこのロープを(さわ)りながらロープづたいに(ある)くのよ」


 そのまま(すす)みしばらくすると、魔女(まじょ)(やかた)への案内標識(あんないひょうしき)(あらわ)れました。


 標識(ひょうしき)(みぎ)()いています。


「これもウィッチのしわざね。(むら)びとの情報(じょうほう)によると魔女(まじょ)(やかた)(ひだり)方向(ほうこう)よ」


 それを魔法(まほう)(かがみ)()ていたウィッチがくやしがります。


 またしばらく(すす)むとロバートが()まりました。


 ナイトに「ぶるふ」と(なに)かを(つた)えます。


「ベルタさま、『その(さき)(ゆき)がなんか(へん)』だそうです。おとしあなかもしれません」


 それを()たウィッチはまたくやしがります。


 3(にん)がおとしあなと(おも)わしき付近(ふきん)をさけて安心(あんしん)しかけたところで、使(つか)()(カラス)のクロウが「いまだ!」と号令(ごうれい)をかけました。


 何者(なにもの)かが3(にん)()(さき)をふせぎました。


「わしは雪男(ゆきおとこ)のスノーマンと(もう)す。おまえらに(うら)みはないが邪魔(じゃま)させてもらう!」


 ナイトがソリから()びおり、すばやくソリとスノーマンの(あいだ)に入ります。


 2人(ふたり)のはげしい(たたか)いが(はじ)まりました。


「ナイト、スノーマンにけがはさせないで!」


 ベルタはきっと雪男(ゆきおとこ)のスノーマンは魔女(まじょ)命令(めいれい)仕方(しかた)なく邪魔(じゃま)をしているのだろうと(おも)いました。


 (じつ)は、ナイトの騎士(きし)(けん)はこういう時のために、片側(かたがわ)()はけがをさせないようなつくりになっています。


 ナイトとスノーマンの(たたか)いは(はげ)しさを()していきます。


 その(とき)、ベルタが(うご)きました。


雪男(ゆきおとこ)さん、わたしをつかまえたらこの(たたか)いは()わりよ!」


 スノーマンの()がキランと(ひか)りました。


 スノーマンがベルタの(ほう)(はし)()します。


「ああっ、ベルタ(さま)!」


 ナイトが悲鳴(ひめい)をあげたその(とき)、スノーマンは見事(みごと)におとしあなに()ちていました。


「そこで()っていたら(あと)(たす)けてあげるわ」


 見事(みごと)、ベルタの頭脳(ずのう)勇気(ゆうき)勝利(しょうり)です。


 ()けをさとったクロウは魔女(まじょ)(やかた)()げもどっていくのでした。


 ◆ ◇ ◆


 ベルタとナイトとロバートの3人はとうとう魔女(まじょ)(やかた)にたどり()きました。


 ここまで来られたら、魔女(まじょ)のウィッチもおとなしく(とびら)をひらいて(まね)き入れます。


 もちろん、魔女(まじょ)(やかた)(とびら)自動(じどう)(ひら)きます。


「くまに(とびら)(こわ)されたらかなわないからね」


 ウィッチは()()しみの台詞(セリフ)を口にします。


魔女(まじょ)『ウィッチ』、わたし『ベルタ』がここに呪い返し(のろいがえし)宣言(せんげん)するわ!」


 ベルタが調(しら)べたところ、正々堂々(せいせいどうどう)宣言(せんげん)するのが一番(いちばん)呪い返し(のろいがえし)成功率(せいこうりつ)があがるということで、真正面(ましょうめん)からベルタは宣言(せんげん)をしました。


「これが『おくりもの』よ!」


 可愛(かわい)くリボンがかけられた(つつ)みをウィッチに手渡(てわた)します。


 ウィッチは呪い返し(のろいがえし)のおくりものなのにも(かか)わらず、すこし(うれ)しく(おも)いました。


 (おも)(かえ)せば、おくりものをもらったのは彼女(かのじょ)人生(じんぜい)(はつ)出来事(できごと)でした。


 (つつ)みを()けると、とても可愛(かわ)(あお)とオレンジのキャンディがはいっています。


 そのまま()べようとしましたが、はっと()づきました。


「クロウ、毒味(どくみ)をしなさい。最初(さいしょ)は1(まい)ずつ、次に2(まい)同時(どうじ)に」


 (じつ)はカラスにも(した)があるのです。


 クロウはおそるおそる、(ちい)さな(した)でペロペロと(ぼう)つきキャンディをなめました。


 最初(さいしょ)(あお)


 (つぎ)にオレンジ。


 最後(さいご)に2(まい)同時(どうじ)に、(ちい)さな(した)一生懸命(いっしょうけんめい)なめました。


 ウィッチはしばらくクロウが(くる)しんだりしないか()ちました。


 大丈夫(だいじょうぶ)です。


 魔女(まじょ)のウィッチは(はじ)めてのおくりもののキャンディなので、もうたまりません!


「じゃあ、どっちから()べようかしら。(あお)からいただくわ」


 ペロペロペロペロ。


 あっというまに(あお)(ぼう)つきキャンディがなくなりました。


(つぎ)はオレンジをいただくわ」


 ペロペロペロペロ。


 あっというまにオレンジの(ぼう)つきキャンディもなくなりました。


「ふぅ、うまかったわい」


 魔女(まじょ)のウィッチは(はじ)めての(しあわ)せな気分(きぶん)(あじ)わっています。


「く、(くる)しい!」


 しばらくして、ウィッチが(くる)しみ(はじ)めました。


「ア、アタシは()けがないように調(しら)べたはず……い、いったいどうやってアタシに(のろ)いをかけたんだい?」


 魔女(まじょ)のウィッチは(くる)しみながらも疑問(ぎもん)(おも)ったことを(たず)ねます。


「じつは1枚ずつたべると(のろ)いになり、2枚同時にたべると(のろ)いを解除するキャンディなのよ! もうキャンディはなくなったから、わたししか(のろ)いは()けないわ!」


 ウィッチは、してやられたという(ふう)にポツリと「なるほど、そうか、ちくしょー」とつぶやきました。


「あなたにもこれで(のろ)いがかかったわ。あなたがわたしたちにかけた(のろ)いを()いたら、わたしがあなたにかけた(のろ)いも()くわ!」


 ウィッチはとうとう降参(こうさん)しました。


「うーん、()かった! えい! ()いた! おまえたち2人にかけた(のろ)いは()いたから(はや)(なん)とかおし!」


 ベルタはこの(とき)のためにもってきた遠見の双子水晶とおみのふたごすいしょうをポケットから()()しました。


 この水晶(すいしょう)(はな)れたところに()いてある片割(かたわ)れの水晶(すいしょう)(とお)して、その場所(ばしょ)光景(こうけい)()える魔道具(まどうぐ)です。


「ブルックはまだ倒れているわ。(のろ)いはまだ()けていないわ」


 魔女(まじょ)のウィッチは今度(こんど)こそ本当(ほんとう)降参(こうさん)です。


「なんと準備(じゅんび)のよい、わかった()けた()けた。アタシの()けだよ。なんて(かしこ)いおじょうちゃんだい。はい()きましたよ」


 ウィッチはブルックとベルタにかけた(のろ)いを今度こそ()きました。


「ブルックが()()がった。(うご)いたわ。確認(かくにん)したので、あなたの(のろ)いも()きます」


 ベルタは魔女(まじょ)のウィッチにかけた(のろ)いを()きました。


 するとどうでしょう。


「アタシどうしてこんなことしちゃったのかしらん」


 なんと、魔女(まじょ)のウィッチは意地悪(いじわる)になる(のろ)いがかかっていた、いい魔女(まじょ)だったのです。


 ベルタはどうやら(のろ)いを()きすぎてしまったようです。


「お茶でものんでいって?」


 ウィッチのとなりでは使(つか)()(カラス)のクロウがよろこんでいます。


「ウィッチさまが(もと)にもどったー! もう意地悪(いじわる)しなくてすむんだカー!」


 これまでの苦労(くろう)(おも)いだし、(なみだ)(なが)してよろこんでいます。


 魔女(まじょ)(やかた)での(はつ)のティーパーティが(はじ)まりました。


 ベルタたちはあまった食料(しょくりょう)をていきょうして、パーティを()りあげます。


 スノーマンも(たす)()しました。


「わしはあったかいティーを()んだら()けてしまうので遠慮(えんりょ)させてもらう」


 スノーマンはつめたい(ひがし)(くに)のお(さけ)をのむようです。


 夜遅(よるおそ)くまでティーパーティはつづきました。


「もう、今日はアタシの(やかた)()まっていったら?」


 まさか魔女(まじょ)(やかた)()まることになるなんて!


 ベルタはおどろきつつも(おも)いっきりたのしんでます。


 魔法(まほう)のお風呂(ふろ)魔法(まほう)のベッド!


「アタシの(やかた)、たのしんでもらえたかい? (はつ)のお(きゃく)さまだからもてなさないとね。グフフフ」


 ウィッチもはじめてのお(きゃく)さまをおむかえできてうれしそうです。


 さあ、明日(あした)はブルックやみんなの()(いえ)にかえらなきゃ。


 もう()ますよ!


 ◆ ◇ ◆


 (かえ)りみちもロバートは()ぶように(はし)りました。


「たのしー!」「もう、勝手(かって)にしろー!」


 ベルタ、ナイト、ロバートの3人が無事(ぶじ)(まち)にかえると、(まち)はお(いわ)いのパレードの準備(じゅんび)をしていました。


 ブルックもすっかり元気になって3人出迎えます。


 ベルタがブルックにかけよります。


「お(にい)さま、すっかり元気(げんき)になったのね!」


 ブルックもベルタにかけよります。


「ベルタだけ冒険(ぼうけん)してきたんだな、うらやましい!」


 ブルックは大冒険(だいぼうけん)をしてきたベルタがうらやましいようです。


「ぼくもベルタをたすける冒険(ぼうけん)がしたい!」


 ベルタは「お(にい)さま、わがままをいわないで」と苦笑(くしょう)しています。


 そんな祝賀(しゅくが)ムードの(なか)、ロバートがよろよろと()ちどまりました。


「! ロバート、どうしたの!?」


 ベルタがあわててロバートに(ちか)よります。


「ぶるふ……」


 ナイトが翻訳(ほんやく)します。


「わしはもうだめだと()っています……」


 ナイトの()(なみだ)がうかんでいます。


「そんな、ロバート……ありがとう……! ゆっくりやすんで……」


 ベルタの()にもみるみる(なみだ)がたまっていきます。


「ロバート、よくやったな、ありがとう」


 ブルックもロバートの(ろう)をねぎらいました。


 そうして、ブルックとベルタがロバートのからだをやさしくさすっていると、ロバートが「ぶるふ!」と()きました。


 ナイトが翻訳(ほんやく)します。


何々(なになに)、もう(やす)めたから元気(げんき)になった……だって!?」


 ロバートはまた元気(げんき)(ある)きはじめました。


「え、ロバート元気(げんき)になったの! よかったわ」


「おい、ロバートおまえ……いや、元気(げんき)になってよかったよかった!」


 ロバートはまた「ぶるふ!」と()きました。


 ナイトは翻訳(ほんやく)します。


「これからもよろしくおねがいします、だそうです」


 (じつ)をいうとロバートはもう(すこ)しで黄泉(よみ)(くに)旅立(たびだ)とうとしていたのです。


 でも、ベルタとナイトとロバートの3人(さんにん)頑張(がんば)りを()ていたこの世界(せかい)(かみ)さまがロバートに()きる(ちから)をひそかに(おく)ったのでした。


「さあ、今度こそ家にかえるわよ!」


 すっかり強気(つよき)(おんな)()になったベルタのかけ(ごえ)で、(だれ)ひとり()けることなく、みんなで(いえ)(かえ)りました。


 それからしばらくして魔女(まじょ)のウィッチからブルックとベルタあてにおわびのおくりものの(はこ)がとどきます。


(なん)だろう?」


 ブルックが(はこ)()けると、とてもおいしそうな(むらさき)()いろのケーキが入ってました。


「えー、もう勘弁(かんべん)して!」


 ブルックが悲鳴(ひめい)をあげます。


「あはははは」


 (たの)しそうなベルタの(わら)(ごえ)があたりにひびきました。


 それからというもの、ブルックとベルタの兄妹(きょうだい)魔女(まじょ)のウィッチは(かぞ)えきれないくらいおくりものをお(たが)いにおくりあったそうです。


 とおいとおい(べつ)世界(せかい)にある、(ちい)さな(くに)の、(ちい)さな(まち)出来事(できごと)です。


 ~fin~



 作:黒猫虎/クロネコタイガー

 編:Nj




さいごまで読んでいただき、ありがとうございます!

誤字、脱字、その他の読みづらいなどのごしてきお待ちしております。

ご感想・評価などもよろしければお願いいたします!


2020.05.11 23:20 ルビ修正。

2020.01.10 20:47 ルビ、行頭空白文字など修正、文章微調整。

2020.01.10 10:58 文章区切り用の飾り文字を修正。

2020.01.10 11:45 前書き削除、あらすじ修正。

2021.06.24 11:20 本文、あらすじ微修正。

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― 新着の感想 ―
[一言] 大冒険でしたね! 悪い魔女が実は、という展開が面白かったです。
2023/12/28 23:36 退会済み
管理
[良い点] 企画より拝読いたしました。 ストーリーもキャラも良いです。 よく考えられているし、ルビやひらがななどの気遣いも良いと思いますね。 [気になる点] あらすじに、企画後削除予定の文章がまだあ…
[良い点] 大人が読んでも面白いです! 子供ならもっとワクワクするかもしれない笑
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