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第0話 剣士シロヴィアと剣士ライディア 第三場面

交流戦、佳境入り。結末やいかに。


 シロヴィアとライディアの二人が乱入してから数分が経過した。

 状況が混乱したのは乱入者たる二人が奇襲を仕掛けた最初だけで、何者が攻撃してきたかを認識した後の交流戦参加者は、通常通りの戦闘機動へと戻っていた。しかし、注意を向けるべき敵が増えたことに違いはなく、敵の敵が味方ではないという状況では、一分の油断も許されなかった。


『…ですが、事前登録済みの第三勢力の参戦タイミングや作戦は、それぞれの本部の判断に委ねられています。最初から攻撃するのか、途中で参加するのか。奇襲か、正攻法か。各ガーデンの特色が垣間見える部分です。ただし、第三勢力ガーデンには、参戦したタイミングに応じて使用できるHNの総機数に制限が掛かる。参加時間に制限がある。交流戦参加者を全滅してはならない。撃破数は個人記録に留まり公式記録としては残らないなど、多くの制約が課せられています。今回の二人の撃破数についても、例外なくこのルールが適用されます』

 実況者の声が、交流戦におけるルールの説明を入れている。基本的にルールで認められた権利とは言え、交流戦を知らない、或いは余り見たことのない人間には状況が飲み込めない場合もあるからだ。


 シロヴィアとライディアは、アクアリオ・ノア、ヴィル・フランメのHNを継続して攻撃し、隙を見せた機体には容赦なく損傷を与えていく。アグリィとクリムゾルの振るうシャープ・ブローの軌跡は共に正確で、常に敵の攻撃力を削ってゆく。

 無論、相手も無抵抗で攻撃を受けていたわけではなく、小回りの利く機体ならば死角に回り込むように移動したり、予測の難しい軌道で接近ないし距離を取って二人を迎撃したりと実に多彩な戦術を見せ、重装甲の機体ならば敢えて正面から攻撃を受け、反撃に転じようと二人を注意深く洞察していた。

 そのまま交流戦は恙なく行われ、結果としてシロヴィアたちは、二人の制限時間いっぱいまで戦闘を継続したのち、撤収した。


『リグノ・デイ・キャバリー、ここで制限時間が来ました。鮮やかな奇襲攻撃からの、戦場の撹乱。見事に第三勢力としての仕事を果してくれました。今すぐにでも、剣士のお二人に喝采を送りたいところです、が!しかし!交流戦も主力同士がぶつかる佳境に入り、間もなく決着を迎えようとしております!ゆえに、今は心の中でのみの喝采と致します。本物の喝采は全てが決着した後で、これをお聞きの皆様と共に、参加者全員に向けて、行いたいと思います!』

 さらなる盛り上がりを見せる戦況を交えながら、実況者の声が通信機を震わせた。


 それから数十分が経過した後。

 シロヴィアとライディアは戦場の端、最初に二人が居た廃ビルの屋上から戦いの趨勢を眺めていた。後方には二人のHNが降着状態で待機しており、DMの二人は、それぞれ担当のHN内部で電算系のメンテナンス作業を行っていた。


 そして上空には、鞘に納められた両手剣を想起させる空中戦艦が浮遊、飛行している。それこそが、王女の守護剣士たるシロヴィアが、“本部”であるガーデン「リグノ・デイ・キャバリー」から与えられた母艦、空中戦艦「ディ・グロリア」である。


「やっぱりアクアリオ・ノアの勝ちかぁ。ま、勢いからして違ったもんね」

 疲れた体を伸び伸びと動かしながら、ライディアが笑う。

「余勢をかった集団は普段の倍以上の力を出すらしいからな。とは言え、私たちが掻きまわした時に崩れなかったという事は、最初から結果は見えていたか…」

 シロヴィアはそう言うと、腰にしている剣を抜いて、軽く演武をするように運動を始めた。緩やかに刻まれる剣閃が、陽の光を反射した跡を残しては消えていく。

「それにしても、普段から剣の鍛錬好きだよねぇ、シロヴィアは。飽きてこない?遊び重視でも私は気にしないよ?むしろ遊んで欲しいし」

 横目でシロヴィアの動きを追いつつ、半分呆れ、半分感心したような口調でからかうように問いかける。

「飽きることはないな。それに私には、キミを守るという大事な役目がある。手を抜きたくない。二人きりでも安心してキミをエスコートするのにも、やっぱり必要だから」

 シロヴィアは、ライディアのからかい口調を受けて剣を動かす手を止め、正面から彼女の目を見据える。

 シロヴィアの海のように透き通った青色の瞳が、ライディアの炎のように鮮やかな赤色の瞳と交差する。片方は揺らぎ一つなく、もう片方は揺らめいていた。

「…そ、そっか。うん、シロヴィアは真面目だね」

 ライディアはそっと視線を逸らし、シロヴィアは上空の空中戦艦を見上げた。

「一生懸命なだけさ。恩返しでもあるんだから…。さ、それよりも帰る支度を始めよう。上の連中が待っているよ」

 そうして、ふっと笑うのだった。


ここまでのお付き合い有難う御座いました。これで0話は終了となります。

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