魔王の妻になる!!(8)
机の上に片方の手のひらを乗せて立っておりとても困った顔をしているだろう人はこの国の王である。
アルファス・ディア・レナトゥ-スだ。
衛兵二人を無視し、勢い込んで乗り込んだは良いものの、
(どうしよ~ぅ。絶っっ対怒っているよねっ!)
心の中は雨模様。何も考えずに乗り込んでしまった。
いや、考えてはいたが、いざ会うとなると頭の中がスッカラカンになってしまった。
なんと言おうか考えた末の言葉は「お話しをしませんかっ!」だ。
我ながらバカだと思う。
でも初めて見た、陛下の顔。とても綺麗だ。
整った顔立ちに、水色の瞳、肩まである銀髪の髪はに一つにまとめれていた。
優しそうなのに何故恐れられているのだろう。
「それで、何の話をしたいのだ?」
あっ。見とれてたら忘れていた。
「えっと、その…」
何て言おう。
「私の事をどう思っているのか?」と聞いたらちゃんと答えてくれるだろうか。
でも、このままじゃ何も進展しないから来たのだ。
意を決して聞いてみる。
「あのっ。私の事嫌いですか?どう思っているんですかっ?教えてくれませんかっ?」
「えっ…」
あっ、困ってる。ちょっと質問が多すぎたか?
それとも、直球すぎただろうか?
どうしよう。
「君のことは嫌いじゃない。ただ…」
低い声で静かに答える。
「ただ、どうやって接すればいいのか分からないだけだ」
窓を眺めながら照れ臭そうに答えていた。しかもちょっと耳は赤くなっている。
(あっ、ちょっとかわいいかも)
なんだかこっちまで照れ臭そうになるが、それよりも彼は私のとを「嫌いじゃない」そう言ったのだ。
「そうだったんですか…。嫌われているわけじゃなかったんですか。良かったぁ」
私は安心してしまい地べたに座り込んでしまった。
「どうしたんだっ!」
陛下が慌てて駆け寄ってくる。
「いえ、ただ安心してしまって」
「あんしん……」
陛下が心配な顔をして来るから、慌てて笑顔を作り答える。
「あのっ。よければ陛下についていろいろ教えてくれませんか?」
「何故だ?メアリーに聞けばいいだろう?」
「メアリーには聞きました。でも、やっぱり
『陛下に直々に聞いた方がいいのでは?』と言われたので」
「そうか。実は、私も君に一つ聞きたいことがあるんだ」
水色の瞳には私が映し出されている。
なんだか吸い込まれそうだ。
「なにが聞きたいんですか?」
「その前にとりあえず座ろうか」
「っはい!そうですね」
彼に優しく手を取られ、三人卦のソファーへ促される。
なぜだか妙に嬉しかった。
私の目の前には陛下が座っている。
机の上には、女中に持ってこさせた紅茶が置いてある。
カップの取っ手を持ち、紅茶を口の中に含む。
するとすぐにジャスミンの香りが口全体に広りメアリーに負けない程の絶品の味だった。
「おいしいっ!」
「そうか。それは良かった」
私に向けて微笑んでくれた。
カップをソーサーの上に置き、姿勢を正す。
「それで、陛下。私に聞きたいこととはなんですか?」
「あぁ。それはだな…」
一拍置いてから私の目を見つめ、決心したように話しかけた。
「だだ、君は私が怖くないのかと思ってな」
「どうしてそのようなことを?」
「君の国や他の大陸では、私は魔王として恐れられているだう?自分の国に帰りたいとは思わないのか?」
顔を見ればよく分かる。
私の事をすごい気にかけてくれている。
(優しいなぁ)
「私は帰りたいとは思いません。陛下…」
この一週間はとても充実した日々だった、それをちゃんと伝えなければならない。
「この国はすごく豊かな国ですね。私、びっくりしちゃいました。この1週間、メアリーにはこの国の人々についてたくさんの教えて貰ったんです。最初は、とても戸惑いました。
私が読んだ本の中では、あまり良いことはい書かれていなかったので。実際に来てみないと分からないことも多いですねっ」
「そうか、ありがとう」
陛下の安心しきった顔を見て、私は嬉しかった。
やっぱり執務室に乗り込んで正解だった。
ここでようやく打ち解ける事が出来たのだ。
そして私はここで目的の一つである、あの言葉を口に出してみた。
「あのですねっ、陛下…」
「どうした?」
「私…。この国をもっと他の人達に知ってもらいたんです!!」
ついつい勢い込んで机をバンっ!と叩き、顔を前に突き出してしまった。
「この国を知ってもらう…か」
突如、陛下の顔が暗くなった。
もしかしたら地雷を踏んでしまったかもしれない。
どうしよ…。
もうダメかも思ったとき、
「この国を…外の世界の国々の皆に知って貰うことって可能だと思うか?」
「……………っえ」
私は思わずキョトンとしてしばらく思考停止してしまった。自分から問いかけたことなのにだ。
絶対なにかしら、「ふざけるな」とか言われると思っていたのだ。
彼ににその気があるのなら私が側で手伝いたい。
「はい。可能だと思います」
「そうか。まさかそういうのを言い出して来るとは思わなかったよ」
彼がが笑っているのを見ると私まで嬉しくなってくる。
「でも、意外でした。まさか他国との親交を深めたいと思っているとは」
「ふっ。そうか意外だったか?」
「はい」
「昔はな、よく他国に赴いていたことがあったんだよ」
「えっ。そうなんですか?!でも、どうやって海を渡って来るんです?船ですか?」
「いいや、魔法の力だよ。ごく一部しか使えない転送魔法があるんだ。それで何度か行ったことがある」
「そうなんですかぁ。すごいですね!!魔法の力って!」
「あぁ。でも、少しでも力の使い方を誤れば大変なことになる」
陛下の寂しそうな顔は、私の脳裏に焼き付いてしまう。
これ以上この話を続けてはいけないと思い、話題を変える。
「あっあのですね、陛下っ!私、この国の人々についてはメアリーに教えて貰いましたが、この国全体についてはまだなんです。よければ教えて貰えませんか?」
「あぁ、そうなのか。何から話そうか。君は何について知りたいんだ?」
「えっとですね…」
何について教えて貰らおうか、悩んでいたときに本で読んだある一節が頭に浮かんだ。
それは、『黒い雲について』だ。
「あの、この大陸の周りを囲んでいる、黒い雲について教えていただけませんか?人を寄せ付けませんよね?それは何かの魔法だったりするんですか?」
「確かにあれは魔法の一部である極大魔法だ」
すると、彼はは急に考え込んだ。
どうしたのだろう?
「あの、陛下」と言おうとしたとき、
「せっかくだ、ついでだし私の昔話を聞いてくれないか?この大陸について、大体のことが知れるだろう」
「えっ、いいんですか?!」
「あぁ、私の王妃だからな。出来るだけ知らない事が無い方がいいだろう?」
そう言って貰えて嬉しかった。
多分、楽しい話ばかりではないと思うが、こうして少しずつでも心を開いてくれてるんだなと思う。
「はい。お願いします。陛下のお話聞かせて下さい」
そうして、彼は静かに静かに語りだしたのだ。
ありがとうございました。
次回は、アルファスの昔話です。
よろしくお願いします。
追記 「魔王の妻になる!!(1)~」を第一章とさせていただき ます。
自分で気づいた都度、一部修正しております。
修正ばかりで申し訳ありません(>_<)