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魔王の妻になる!!(7)






「その道通して下さらないかしら。(わたくし)、陛下にお会いしたいの」


 ニッコリと微笑みながら、衛兵を見上げている。

 ここは陛下がいる執務室へと続く道。

大体、夜はいつもここに居るらしい。


私はピンクのキャミソールワンピース姿に金髪の髪は三つ編みにしている。

 そう、私はお風呂上がりなのだ。

 そして、自分の部屋に戻る前に陛下に会ってみることにした。


 だが、なかなか手強い。

 さっきから、「しかしこの先は誰も立ち入らぬよう、陛下から仰せつかっておりますので」の一点ばりだ。


 どうするべきか…。


 そう悩んでいるとき突如ある言葉を思い出した。

 私が初めて陛下に会ったとき言われた言葉。


『貴女の(めい)は私の(めい)となっている』


 これだ!!そう思い。

 衛兵の二人に「命令」という形で言い直す。


「いいからここを通しなさい」


 気品と風格がいかにあるであろう姿でもの申す。


 さすがに衛兵の二人もビクついていた。

 しかし、ここの衛兵を何十年もやっているのであろう。風格のある男が、


「それでもなりませぬ。」


 ちょっと声色を変えて言ってきた。


 どうしても通させたくないらしい。 

 「陛下に聞いてみます」の素振りも無い。

 衛兵でさえ入ることを禁じられているのだろうか。


 それでも私は陛下に会わなければならない。

 私の目的である本当の夫婦になるために。(今日決めたばかりだけど☆)


 なので私はある秘策を言ってみた。


「あらっ?陛下より聞いておられませんか?私の命令は陛下の命令に直結することを」


 ニヤニヤしなが言ってみる。


(さぁ、どうだ)


 案の定衛兵の二人はうろたえていた。

 その効果は絶大だったらしい。


 二人が固まって話し合っている。それを見計らい


「失礼っ」


 颯爽と陛下のいる書斎室へと駆けていく。

 もちろん、気品は忘れてはいない。

 この国の、陛下の妻らしく颯爽と…。


 ここは王宮のとある一角。


 大きな窓に、大きな本棚、机の上にはたくさんの書類が積み上げられている。


 そう、ここはこの国の王である。

 アルファス・ディア・レナトゥ-スの執務室だ。


 椅子に座っているアルファスの周りには机の上に置いてあった書類がフワフワと浮いている。


 これは使える魔法の一部である浮重力系統の魔法だ。


「コンヴィルツ国の経済状態がいまいちだな…」


 頭を悩ませながら思わず言葉に出てしまう。


 書類の内容はシャルエル大陸のそれぞれの国々の財政状態についてだった。


「はぁ…。休憩にしよう」


 椅子にもたれかかり、ため息をつきながら思い返してみる。


 この国にリリアーナが来てから丁度一週間。

 私の所へ嫁ぐよう言ったは良いものの、どう接すればいいのか分からない…。


 ため息ばかりが出るアルファスだ。

 仕事よりもリリアーナへの接し方をこの1週間ずっと考えていた。


 アルファスは仕事に行く途中にリリアーナとメアリーが一緒に東屋へ行く所を何度も見かけた事がある。

 その時の彼女は笑っていたのだ。メアリーとも打ち解けているみたいだった。

 自分なんかが間に割って入ってしまってはとてもダメな気がした。


 外の大陸内の国々では自分は魔王として恐れられている。

 恐れられるきっかけを作ってしまったのは自分がした事の自業自得なのだか。


 それでもあの時は仕方なかった。


 それでも彼女ならなんとか受け入れてくれるのでは?そう思う。


 あの時、あの場所で出会ったように…。


リリアーナは忘れているかも知れないがアルファスはいつまでも覚えていた。


 あの時、あの場所でくれた言葉。


『だって、黒の大陸には中に入ることは出来ないんでしょ?それって何だか私達を守ってくれてるみたいじゃない?』


 その時はただただ嬉しかった。


 またもう一度会いたい。

 その一心で探す。


 あの時、図書館からシャルエル大陸に戻ったら早急に子供の姿から元の大人の姿に戻った。


 仕事の合間を見つけては、自分が見たいものを見ることができる魔法、遠隔視魔法で探す。


 だか、なかなか見つからない。

 なんせ一回しか会っていないのだ。

 でもあの時は、自分が着けていた水色のリボンを彼女にあげた。


 今でも着けていてくれているだろうか。


 何度も何度も探すが見つからない。

 エストワール帝国に住んでいる町娘ならすぐに見つけられるだろう。

 そう思っていたが、考えが甘かった。

 全然見つからない。


 そう思って諦めていたとき、見つけたのだ。

 10年かけてやっと…。


 その時の彼女は居城のバルコニーに出て国民の前に姿を表していた。

 胸元には水色のリボンを着けていた。


(まだ、着けていてくれたのだな)


 とても嬉しかった。


 その後は、ヴァシェロンに彼女について早急に調べさせた。


 そうしたら、彼女はエストワール帝国の王女だったのだ。

 どうりで町の方を探しても見つからないはずだ。もっと、視野を広げれば良かったと思っている。


 エストワール帝国では18歳になると成人の仲間入りらしい。

 どうやったら会えるだろうか、どうやったら側にいてくれるかを必死に考えていたらある考えが浮かんだ。


 それは、手紙を出すこと。


 内容的には失敗だったなとヴァシェロンに指摘されて気づいたが、それでも彼女は来てくれた。


 謁見の場で会った彼女は、なんとなくだがあの時の面影が残っていた。

 怖がっているかと思ったが、城の雰囲気に圧倒されているようだった。


 会えたのは嬉しかったがとてつもなく緊張してしまい、ぶっきらぼうになってしまっていた。

 またまた失敗だったと思ったが、それが精一杯の自分なりの挨拶だったのだ。


「どうしたものか」


 コツ、コツ、コツ


 ん?


 何やら廊下から音がする。

 靴の音だ。


 この部屋には誰にも入れるなと言ったのに。

 どうしてやろうか…。


 そんな事を考えていると


 バンっ!!


 扉が勢いよく開かれた。

 でも、すぐに目を疑ったのだ。

 なぜなら


「陛下っ!私とお話しをしませんかっ!」


 彼女だ。彼女が私の部屋に表れた。でも、


「・・・」


 お話し…。何故か一気に脱落してしった。

 でも、せっかくなので


「あぁ。いいだろう」


 私は彼女の要求を呑むことにした。






ありがとうございました。

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