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君と初めて出会った日

今回は番外編ということで、二人が初めて出会ったときの話です。






 -アルファス・ディア・レナトゥ-ス


 彼は魔王として人々に恐れられている。


 私が記憶喪失になった後(ここに来た後)一番最初に教えてられたこと。

 それは『黒の大陸』と『アルファス・ディア・レナトゥ-ス』についてだった。

 この世界に住んで居る者は誰しも知っている。一般常識みたいなものだ。


 前に一度、大陸のことについて話したのを覚えているだろうか?

 私達が住んでいるヴィアインツ大陸よりも多いのが『黒の大陸』である。


 他の3つの大陸とヴィアインツ大陸はさほど距離は離れていない。他の大陸に行こうと思えば船で5時間程度のところにある。

 案外近い。


 しかし、『黒の大陸』だけは違うのだ。


 大陸の周りは厚手の黒い雲で覆われており、中には入ることができず、全く見えない。人々からは気味悪がれている。


 私は一度そのことを聞いて気になったことがあったのだ。

 それは「魔王とは一体どんな人なの?」「黒の大陸の中には何があるの?」と。

 しかし、皆の答は「知り得ません。」や「さぁ?」などの回答が多かったのだ。


アニメ好き&妄想好きの私にとっては、こんなことあり得るだろうか?と不思議に思っていた。


 私はある時ジュリーに図書館に連れていってもらったことがある。

 エストワール帝国にある国立図書館は、とても広く種類が豊富だ。


 今私が読みたかった『黒の大陸について』という本がある。


 でも、私は子供だ。高い本棚に手が届かない。

 一緒に来たジュリーは、自分の本を探すのに夢中だ。


 近くに踏み台は無いかと探してはみたが、残念ながら無かった。


 (あぁ、子供の背の低さは不憫だなぁ)


 と心の中で嘆いていると、後ろから声がしたのだ。


「何か読みたい本があるの?取ってあげようか?」


 声がした方を振り向いてみると、私と同じ8歳くらいの男の子だった。

 背は私より少し高く、短髪の銀髪で、水色の瞳。とても綺麗だ。

 服装はいかにも、お坊ちゃまです!というような感じだった。(実際はどうなのかは分からないが)


 私はせっかくなので取って貰うことにした。


「はい。これでいいかな?」

「うん。ありがとう」

「あのさ、よかったら僕も一緒に見てもいいかな?」


 私は一瞬驚いてしまったが、


「うん!もちろん。一緒に読みましょう!」


 そして私達は、場所を移動し窓から近い席を選んだ。


 本のページを次々めくる。でも、情報は同じようなものばかり

 ・アルファス・ディア・レナトゥ-スという名の恐ろしい魔王が住んでいる。

 ・黒の大陸は厚手の雲で覆われている

 ・中に入ることは出来ない

 ・大陸に向かって進んでも近づくことは出来ない。

 ・元々は1つだった大陸を一瞬にして5つにし た。


 それ以上は何も出て来なかった。


 本を読み終えた後、「君は魔王についてどう思う?」男の子からの質問だ。


「う~ん。『大陸を一瞬にして5つにした』っていう、言葉は気になるけど、本当は悪い人じゃないんじゃないかなって、思うな」

「何で?」

「だって、黒の大陸には中に入ることは出来ないんでしょ?それってなんらかの理由があるんじゃない?それに、なんだか私たちのことも守ってくれてる感じがする。だって、『大陸に向かって進んでも近づくことはできない』って、載ってるしね」


 その言葉に男の子は、驚いた顔をしていた。

 そのあと少し頬が赤くなりながら下を向く、


「そうだね。そんなことを言ってくれたのは君が始めてだよ」

「ん…?それどういう意味なっ…」


 なの?そう言おうとする前に「お嬢様ー。そろそろ帰りましょう」と声がする。

ジュリーだ。


 気づけば空は朱色に染まっていた。


「私、そろそろ帰らなきゃ。貴女、名前は何て言うの?」


 すると男の子が立ち上り、服に着けていた水色のリボンをほどいた。

 一体何をするんだ?と思っていたら、私の首に手を回しサッと、結んでくれた。


「今日君に会えたて良かったよ。また会えたらいいね。じゃあね」

「っえ、待って…………」


「お嬢様。ここに居らしたんですか。帰りますよ」


 声をかけようとしたのだか、ジュリーの声によって遮られてしまった。  


「あっ、ねぇ。見てジュリー。このリボン、男の子から貰ったの」

「へぇ。良かったですね。大切にしないとですね」

「うん。私の隣に居る子なんだけど…。あれっ?居なくなってる」


 いつの間に居なくなったのだろう?不思議だ。ついさっきまで隣に居たのに。


「とりあえず帰りましょうか。お嬢様のご家族が待っておられますよ」

「うん。そうだね。また会えるかな?」

「きっと会えますよ」

「うんっ!」


 ジュリーと手を繋いで帰る。

 空には真っ赤な夕焼日が見える。とても綺麗だ。



『そんなことを言ってくれたのは君が始めてだよ』

 あの言葉の意味は子供の頃だった私には分からなかった。



 けれど数年後には、その言葉は私がその人の前に現れ、ようやく意味をなす。


 その時の私は、まだ知らなかったが………。






次回は通常に戻ります。

お楽しみに~(⌒‐⌒)

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