君と初めて出会った日
今回は番外編ということで、二人が初めて出会ったときの話です。
-アルファス・ディア・レナトゥ-ス
彼は魔王として人々に恐れられている。
私が記憶喪失になった後(ここに来た後)一番最初に教えてられたこと。
それは『黒の大陸』と『アルファス・ディア・レナトゥ-ス』についてだった。
この世界に住んで居る者は誰しも知っている。一般常識みたいなものだ。
前に一度、大陸のことについて話したのを覚えているだろうか?
私達が住んでいるヴィアインツ大陸よりも多いのが『黒の大陸』である。
他の3つの大陸とヴィアインツ大陸はさほど距離は離れていない。他の大陸に行こうと思えば船で5時間程度のところにある。
案外近い。
しかし、『黒の大陸』だけは違うのだ。
大陸の周りは厚手の黒い雲で覆われており、中には入ることができず、全く見えない。人々からは気味悪がれている。
私は一度そのことを聞いて気になったことがあったのだ。
それは「魔王とは一体どんな人なの?」「黒の大陸の中には何があるの?」と。
しかし、皆の答は「知り得ません。」や「さぁ?」などの回答が多かったのだ。
アニメ好き&妄想好きの私にとっては、こんなことあり得るだろうか?と不思議に思っていた。
◇
私はある時ジュリーに図書館に連れていってもらったことがある。
エストワール帝国にある国立図書館は、とても広く種類が豊富だ。
今私が読みたかった『黒の大陸について』という本がある。
でも、私は子供だ。高い本棚に手が届かない。
一緒に来たジュリーは、自分の本を探すのに夢中だ。
近くに踏み台は無いかと探してはみたが、残念ながら無かった。
(あぁ、子供の背の低さは不憫だなぁ)
と心の中で嘆いていると、後ろから声がしたのだ。
「何か読みたい本があるの?取ってあげようか?」
声がした方を振り向いてみると、私と同じ8歳くらいの男の子だった。
背は私より少し高く、短髪の銀髪で、水色の瞳。とても綺麗だ。
服装はいかにも、お坊ちゃまです!というような感じだった。(実際はどうなのかは分からないが)
私はせっかくなので取って貰うことにした。
「はい。これでいいかな?」
「うん。ありがとう」
「あのさ、よかったら僕も一緒に見てもいいかな?」
私は一瞬驚いてしまったが、
「うん!もちろん。一緒に読みましょう!」
そして私達は、場所を移動し窓から近い席を選んだ。
本のページを次々めくる。でも、情報は同じようなものばかり
・アルファス・ディア・レナトゥ-スという名の恐ろしい魔王が住んでいる。
・黒の大陸は厚手の雲で覆われている
・中に入ることは出来ない
・大陸に向かって進んでも近づくことは出来ない。
・元々は1つだった大陸を一瞬にして5つにし た。
それ以上は何も出て来なかった。
本を読み終えた後、「君は魔王についてどう思う?」男の子からの質問だ。
「う~ん。『大陸を一瞬にして5つにした』っていう、言葉は気になるけど、本当は悪い人じゃないんじゃないかなって、思うな」
「何で?」
「だって、黒の大陸には中に入ることは出来ないんでしょ?それってなんらかの理由があるんじゃない?それに、なんだか私たちのことも守ってくれてる感じがする。だって、『大陸に向かって進んでも近づくことはできない』って、載ってるしね」
その言葉に男の子は、驚いた顔をしていた。
そのあと少し頬が赤くなりながら下を向く、
「そうだね。そんなことを言ってくれたのは君が始めてだよ」
「ん…?それどういう意味なっ…」
なの?そう言おうとする前に「お嬢様ー。そろそろ帰りましょう」と声がする。
ジュリーだ。
気づけば空は朱色に染まっていた。
「私、そろそろ帰らなきゃ。貴女、名前は何て言うの?」
すると男の子が立ち上り、服に着けていた水色のリボンをほどいた。
一体何をするんだ?と思っていたら、私の首に手を回しサッと、結んでくれた。
「今日君に会えたて良かったよ。また会えたらいいね。じゃあね」
「っえ、待って…………」
「お嬢様。ここに居らしたんですか。帰りますよ」
声をかけようとしたのだか、ジュリーの声によって遮られてしまった。
「あっ、ねぇ。見てジュリー。このリボン、男の子から貰ったの」
「へぇ。良かったですね。大切にしないとですね」
「うん。私の隣に居る子なんだけど…。あれっ?居なくなってる」
いつの間に居なくなったのだろう?不思議だ。ついさっきまで隣に居たのに。
「とりあえず帰りましょうか。お嬢様のご家族が待っておられますよ」
「うん。そうだね。また会えるかな?」
「きっと会えますよ」
「うんっ!」
ジュリーと手を繋いで帰る。
空には真っ赤な夕焼日が見える。とても綺麗だ。
『そんなことを言ってくれたのは君が始めてだよ』
あの言葉の意味は子供の頃だった私には分からなかった。
◇
けれど数年後には、その言葉は私がその人の前に現れ、ようやく意味をなす。
その時の私は、まだ知らなかったが………。
次回は通常に戻ります。
お楽しみに~(⌒‐⌒)