魔王の妻になる!!(4)
昨日の騒動があり忘れ去られていただろが、私の誕生日から翌日。
今は朝食中だ。
今日のメニューはベーコンとスクランブルエッグ、サラダ、フランスパン、バターと紅茶だ。
昨日のことがあるからしょうがないが、空気が重い。とにかく重い。重すぎる。
皆、覇気の無い顔をしている。
まぁ、当たり前なのだろう。
あれから昨夜の晩はフカフカのベッドの上で私も色々と考えた。考えまくった。(妄想は抜きにして)
そして、ある結論に至ったのだ。
それは、私が魔王の元へ嫁ぐこと。
何故なら、私が胸元に着けているリボンの紋様とレナートゥス国から来た手紙の表の紋様は同じで、あれっ?と思ったのだ。
あのリボンは私にとってはとても大切なもの。
昔、一度しか会っていないが仲良くなった男の子の物。
もしかしたら、その国に行けば会えるのでないか。
そう、期待に胸が膨らむ。
あの時図書館に行った時に出会った男の子。その声が脳裏に蘇る。
『そんなことを言ってくれたのは君が始めてだよ』
今さらながら思うのだけれど、どういう意味なのだろう。
レナトゥ-ス国に行けば何か分かるのではないか、そう思う。
*
私が紅茶を飲み終え。一息入れた後に本題に入った。
皆の視線が私に集まってくる。
「魔王の妻になることについてなんだが…リリアーナ、お前はどうしたい?お前が嫌ならば、魔王に懇願してでもお前をここに留まらせたいと思っている。できる限りお前の意見を尊重したい」
その優しげな父の物言いに本気で心配なんだなと伝わってくる。でも、
どうやって魔王に懇願するのよ、といらないツッコミを挟みつつなのだか。
私は私だけど私じゃない。
中身は全くの別物だ。
父は「やはり嫌だよな。」と母とアイコンタクを取る。
それでも、と思う。
「私は行こうと思います。お父様、お母様、私に行かせてはくれませんか?」
昨日の夜、必死になって考えた。
私の将来のこと。
妄想の中だけではなく、きちんと自分の事として。
もしかしたら殺されるかもしれないし、幽閉、生け贄などにもされてしまうかもしれない。
けれど、何も知らずに死ん行くのはもっと嫌だと思った。
父は私の顔を見て今にも泣きそうになりながら、
「分かった、リリアーナ。嫁ぐということは、もう戻って来れないかも知れないんだそ」
「はい、承知しております」
「・・・・」
「お父様?」
「分かった…。明日は盛大に送り出そう。皆もそれでいいね」
「はい、そうですね」
母はどこか物寂しげな声色のまま父に問い掛ける。
「寂しいですわね。いつかは二人もリリーみたいに嫁いでいくのでしょうか」
「そうだなぁ、娘の成長というものは早いものだな」
話は決まったはずなのに、シーンとしている。
何故だろう。
私は余りにもこの重苦しい重圧に耐えられず。
「お父様もお母様もそんなに心配しないで!
向こうに行ったら、必ず手紙を出しますからっ。ねっ!」
私が見せる笑顔に少しは気が緩んだのか、さっきまでの空気が軽くなったような気がする。
「リリーがお嫁に行くなんてね。信じられないわ。本当に…」
いつもは嫌みったらしの姉もどこか寂しげだ。
「リリーお姉さまぁぁ」
私の隣では涙ぐんでいる妹がいる。
皆に心配されて愛されるてるなぁって、思う瞬間。いつまでも忘れないでいよう。
「明日の朝にレナートゥス国に行こうと思うの。いいかしら?」
「そうだな。明日で、3日目だからな。荷造りが終わったら、今日は家族で1日過ごそうか」
みんな父の言葉に、うなずく。
家族に私の思いを話したあとに、お嫁に行くんだなとやっと実感出来る瞬間だった。
次ぎは二人が初めて出会ったときの話です。
次回もよろしくお願いします。