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私と彼女のお茶会(3)






 魔女…超自然的な力で人畜に害を及ぼすとされた人間、または妖術を行使する者のことを指す。


 というのが私の前世での魔女の言い伝えでもある。そして、私の認識の範疇では、一人で森の中にひっそりと暮らしておりどこか怪しげな薬を作っているイメージがあるのだ。


 この世界での魔女という認識は、特別な力を持った女性でことであること事態は変わらないらしい。ここでも似たような感じではあるのだが、少しだけ違う部分もあるようだ。


 大昔はシャルエル大陸の町のど真ん中に住んでおり、時には相談役になったり、時には様々な場所に出向いてはお菓子を配ったり、またまた人間と魔族が喧嘩をすれば仲介役にもなっていたという。


 なんともフレンドリーな魔女だ。


 私の認識が大幅崩れさって行く音がする。


 しかしそれは結構大昔の話らしいのだ。今ではどうなっているのかと言うと、


「今では魔女が生きているのかすら分からないの。昔は、魔女はこのシャルエル大陸のそれぞれの国に一人はいたらしいんだけどね。本当に今はどうなのかしらね」


 フローラが少しだけうつ向きながら話している。見つめている先は、ティーカップの中に入っているカモミールティーだ。風が少しだけ吹いており、中を見れば少しずつゆっくりと波紋が広がっていっている。


 カチャ


 フローラがティーカップの取っ手を持ち、静かに口をつける。少しだけ飲んだらフゥーと息を吐きながら、どこか寂しげな表情をしながらカップをソーサーの上においた。


「心配なんですか?」

「えっ………?心配って、何がかしら?」

「ここに住んでいた魔女たちについてです」


 私の勝手な推測でしかないが、恐らく彼女は何らかの形で今はこの世を去ったかも知れない魔女について心配なのだ。私の質問に対し彼女はキョトンとした表情をしていたが、寂しげな表情は消えていなかった。


「そう、ねぇ。確かにそうなのかも知れないわね。本当は自分で気づいていないだけで……、いいえ、気づかないふりをしていただけで、心の底から心配しているのだと思うわ。見たこともないのにね」


 フフフと笑いながら、ソルマージュの木を眺めているフローラの姿は相変わらず寂しげだ。どうしてなのだろう、と思う気持ちは私の中では変わらない。

 そりゃそうだ。身知らずの人のことをそこまで心配そうにする人は世の中にはそうそういないだろう。それと同時に不思議なお方だなとも思った。


「あぁそうだわ、リリー様。エピナントの言い伝えってしってるかしら?」

「言い伝え…ですか?」


 フローラから発せられたことに関しては、私の中では一切知らない情報だった。はじめて聞いたことなので、思わず首を傾げてしまった私に対しフローラは、「じゃあ」と言って話を進めた。


「じゃあ、説明するわね。よーく聞いておくのよ。これが呪いの解呪方法とも言われているのだけれど、あの頃から2000年以上たっても解けてないの」

「解呪方法……とても気になります!!」


 私は思わず前のめりになりつつも、フローラに話を進めさせた。


「実はね。呪いを国にかけたのは、ここのエピナント国に住んでいた魔女だと言われているのよ」

「え?魔女がですか?なんで…」


 しゅんと落ち込む私をフローラが慌てて、慰めた。


「そんなに気落ちしなくても大丈夫よ!これには理由があるんだから!」

「理由?ですか」

「ええ、そうなのよ」


 顔をあげ、続きをお願いします!と目で訴えたのが届いたのか、うんとフローラ頷き続きが再開した。


「実は、昔住んでいた住人たちはクーデターを起こしたあと、魔女が住んでいた家に行ってお願いをしたのよ。『あの暴君をどうにかして欲しい』とね。それを聞いた魔女は皇帝に会いに行き、何度も制度を変えた方がいいとか、重課税すぎやしないのかと今の帝国の悪いところを他にもあげて、もう少し住人たちが、楽な生活を出来るよう配慮して欲しいと訴えたのよ。その結果、どうなったと思う?」

「えぇっと、ですね………」


 うーん、と考えながら言葉を濁す。今のエピナント国は魔女によって呪いをかけられている。もしかしたら交渉が上手くいかず、最悪の結果がこれなのではないかと簡単にだが結論付けた。


「その言葉を皇帝が聞き入れなかったと思います」


 するとフローラが笑顔で、うんと頷いた。


「その通りなのよ。魔女は何度も何度も交渉したわ。けれど結果は同じで全く聞き入れなかったの。それに対してとうとう痺れを切らした魔女は、この国の秘宝である水晶玉に呪いをかけてしまったのよ。ちなみにだけど、秘宝である水晶玉は私達エルフ族が空を飛ぶためのお守りみたいなものたの。元々の色は綺麗な緑色だったらいけれど、今の水晶玉の色は黒く染まってるのよ。その水晶玉はいつしか見せるわね」

「はい、見てみたいです!」


 そこまで話した後は、カップにの残っていたカモミールティーを口に含み、続きを語った。


「呪いをかけた後に魔女はある言葉を言ったのよ。『この呪いを解きたければ、人が(みな)持っている愛する心が1つになることで希望の光りは導くだろう』とね。それが私達に課せられたお題でもあるの。そらからと言うものの何代にも渡って、この呪いの解呪の方法を探したらしいわ。その結果が儀式という名の、お祭りなのよ」

「なるほど、そういう経緯があったんですね。ちなみになんですけれど、あのあと魔女はどうなったんですか?」


 頭の中では色々な情報が飛び交っている。だか今は整理するのはあとにして、気になっている疑問を口にした。


「魔女は先帝と言い争いになった後は行方をくらませたらしいわ。町にあった家も跡形なく消えていて、魔女の姿は一切誰も見ていないらいのよ」

「……そうなんですね。沢山教えていただきありがとうございます。私も私で色々と考えてみます!」

「本当に!ありがとう!リリー様」


 ぱぁと明るくなったフローラの顔を見てどことなく安らぎが芽生えてきたところで、そうそうリリー様と違う話もしていったのだった。



◇◇◇

 それからというものの世間話や国の政治についての真面目な話をしつつも、それぞれの旦那のノロケ話にも花が咲いたことは、陛下にもエリクシル様にも内緒だ。


 気がつけば楽しい時間というものはあっという間で、空は朱色に染まっていた。

 いったい何時間話していたのだろうと、時間が経つのは早いと感じたのは久々だ。


「そろそろお開きにしましょうか」


 パンと両手を叩いたフローラはお茶会の終わりを告げた。


「そうですね。陛下たちもそろそろ大丈夫だと思いますし、戻りましょう」

「フフフ、そうね。朝は二人とも酷かったものね」

「ほんとですよー!お二人とも机の上に張り付いて、動けない状態でしたもんね」


冗談を言いつつも私もお茶会終了合図をおくり、二人の元へ戻ることにしたのだった。







ありがとうございました。また来月に掲載しますので、よろしくお願いします(о´∀`о)

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