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私と彼女のお茶会(2)






「そうねぇ、どこから話そうかしら。結構、大昔から続いているのよねぇ」


 うーん。と可愛らしい表情をしている。私としては大体のことを教えてもらえればそれで良いのだ。


「っあ、そうだっ!あそこに大きな木が見えるでしょう?」


 フローラが指をさした方に首を向ける。私の目に入ったものは、ソルマージュの木だ。


「はい。見えます」


 大木の周りには若草色が見えるので、草に囲まれているのが分かる。そして、その草木の周りには大きい湖が見えるのだ。ソルマージュの所まで住人達が歩いて行けるようにと、道も土と草で出来ている。


「あそこで、お祭りと儀式が行われるの。朝から夕方までが、精霊祭。真っ暗になった夜からは儀式をするのよ」

「夜に儀式をするのですね」


 別にお昼頃からでも良いのではないかと思った私はすぐさま口に出す。


「儀式なら夜に拘らなくてもお昼でも良いのではないですか?」

「フフフ。まぁ、明るい内にするのがいいのでしょうけど、これには理由があるのよ。順番に話していきましょうか」

「はい、お願いします」


 これから領主妃直伝にエピナント国の歴史が語られる。


 長い長い歴史の始めの一部であるまだ、呪いがかけられる前のお話………。



「今から約2000年前、ここのエピナント国は最初は『エピナント帝国』という名前だったの。そこには帝国をまとめていた、皇帝陛下と皇后陛下の二人がいたわ。子宝にも恵まれており、話だけを聞けば何事も無かったかのように思えるでしょう?」

「まぁ確かに、話だけを聞けばそうですね」


 案外普通だなって思っていたら、ここからの話がすごかった。


「でもね、その皇帝はとてもわがままの人だったと聞いているわ。妻がいるのにも関わらず、側室に手を出したり、住んでいた住人には無茶な要求ばかりをくり出した。まさに、評判は最悪よ」


 うへぇー、最悪な皇帝だなぁ。と顔には出さないが心のなかではこっそり思う。私ならそんな人さっさと放り出すなぁ、と思いつつ話を促す。


「とうとう我慢ならなくなった住民達は結託して、宮殿の前に並んではクーデターを起こす事にしたのよ」



───────



「今すぐ皇帝を替えてくれー!!」

「もう我慢ならない!!」

「あんたがこの国にいる限りこの国は終わったも同然なんだよ!!」


 どこからか民衆の声が聞こえる。ここはエピナント帝国の宮殿の中。城の作りは白の大理石一色だ。


「あぁ!もう、うるざいぞ!!さっさと殺してでも黙らせろっ──!!」

「はっはい!!只今っ」


 近衛兵に向かって命令を繰り出したのはこの帝国の皇帝陛下、ジャバイカル・エドラス・エルセレフ。白の装束に身を包んだ、癖っ毛の茶髪だ。


 彼は今、非常にイライラしていた。いきなり宮殿の階段前に民衆が集まったかと思えば、さっきからこの調子だ。


 「皇帝を替えろ」、「無茶な要求ばかりするな」「税が重すぎる」など。不満が溜まりに溜まった民衆共はとうとう爆発したのか、殺されると分かっていながら私の前に現れた。


(クソッ!どうにかしないと─。このままでは私が殺されてしまう!)


「あなた、ここは大丈夫なのですか?」


 どこか不安げに声をかけてきたのは私の皇后である、ヒンストリア・エドラス・エルセレフだ。彼女もまた白の装束に身を包んでおり、青色の髪は後で一つにされている。


 彼女の顔より下に目を向けると、そこには怯えきった息子と娘たちがいるのが分かる。五男四女の子宝に恵まれた二人にとっては大変喜ばしいことであったのだ。

 男児は次期皇帝を次ぐものとして、女児は貢女として他国に送り出し、今まで以上により良い関係を築くとともに自分の磐石の安定ために。


「陛下!!民衆が波の押し寄せて来ております!もう、どうすることも出来ません!」

「なんだとっ!!もういい!儂が行く!」


 必死に宮殿の中にへと入らないようにしていた衛兵からのからの言葉に、さらに苛立ったジャバイカルは自ら前に立つことを選んだのだった。



***


 ザッ…………。


 皇帝が階段の前に立った瞬間に今まで騒いでいた民衆はシーンと静かになった。民衆たちの目は、敵意や殺意でいっぱいだった。


「皆の者!よく聞け!この帝国にいる限りは儂の言うことは絶対である。儂の言うことを聞き、儂の命令に従うのだ!それがここの掟である」


 スゥと息を吸い最後の言葉をかける。


「それでもまだ続けると言うのであれば今すぐ皆の者を斬首の刑に処す!!この帝国から逃げた者も同じだ。フンッ、よく考えて行動するんだな」


 その言葉を最後にジャバイカルは、さっさと自分の城へと帰っていったのだった。



────────



「まぁ、ざっとこんなものかしら。最低よね?この皇帝。自分でしでかした事なのに、最終的には斬首刑にするとか。皇帝として、国の頂点に立つものとしてありえないわ。そう思わない、リリー様?」


「た、確かにそうですね」


 アハハと苦笑いをしながら答える。確かに最低だ、こんな皇帝がいれば直ぐに帝国として崩れそうなものなのにに良く持ったなと感心せざるおえない。


「住民達はね。殺される覚悟でクーデターを起こしたはずなのに、いざ斬首刑にすると言われたら体が硬直して動かなかったと言われているわ。それもそうよね、誰だって死ぬのは嫌だもの」

「そうですね。それにしても、昔のお城は大理石の作りだったのですね。今とは違うみたいなのでびっくりしました」


 今と昔が違うのは十分に承知ではあるが、それはとても歴史的に残る建物になるはずだ。ここから360度見渡しても、大理石のお城は一切見えない。


「ちなみに今はそのお城は残されていないのですか?」


 私の質問に対し良いところを突いてきた、というような顔をしている。


「実はね、大理石のお城は皇帝が亡くなったときに住民達によって壊されてしまったのよ。あのときの悪夢が二度と蘇らないように、とね」

「そうなのですか。無くなってしまったんですね。何だか残念です」

「そうねぇ。私も見てみたかったわ。どんなお城なのかを……」


 手を組ながらどこか遠くを見つめる姿は、どこか昔を懐かしむようにも見えた。当然、私の気のせいであるには間違いようはないのだか。


「そうね、ここら辺で話を戻しましょうか」

「っあ、はい!そうですね。すみません」

「いいのよ。気にしないで、気になるところがあればいつでも聞いてね」


 私の謝罪に対して笑顔で受け答えてくれた。



 しばらくして、すっかり話に夢中になっていたフローラは、今の今ままで忘れていたことを思い出したか、あっ!と呟きながらちょいちょいと手を振りながら領主妃自らテーブルの上に軽く身をのりだしたのだった。私も彼女と同じようにテーブルの上に軽く身を乗り出し、まるでナイショ話をするかのように、私の耳打ちでこっそりと話したのだった。


「そうそう!今思いだしたのだけれど実は、…昔はこの国に魔女がいたらしいのよっ!」

「え………っま、魔女ですか?!」


一度フリーズしてしから、思わずすっとんきょうな声をあげてしまった私は、椅子から転げ落ちそうになったのである。






ありがとうございました(о´∀`о)

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