緑の国の領主様
エピナント国の城は大理石やコンクリートは一切使われてい。使われていたのはエルフ族のが住んでいる大木のようなものだか、規模が全然違った。幹の太さから高さまでとにかく太く大きい。
…とここで、この雑な説明だけでは想像しにくい方々もいるのではないかと思うので、今更ながらここで簡単な例を出しましょう。
そう、その見た目はまさに見た目はブロッコリーなのです。
全国どこにでもお店で売られている緑色のブロッコリー。茹でるのも良し、炒めるのも良し、サラダに入れても良し、そして栄養豊富な万能野菜なのではないでしょうか…………。
そのブロッコリーを何百倍にもした物を想像すると良いでしょう。(幼稚な考え方で申し訳ない)
と、ここで話を戻して
その大木の枝は横に流れるように成長しており所々には同じように穴があいている。穴からは同じようにエルフ族が出入りしているのが分かるのだ。
◇◇◇
私たち一行は短いツリートンネルを抜け、豪華な馬車を降りた。大木の下で待ち構えていたのは、この国を治めている領主王と領主妃だ。
「やぁ、皆さん。ようこそいらっしゃいました」
「遠い所からわざわざありがとうございます」
馬車の近くまで駆け寄って来てくれて丁寧に挨拶をしてくれた。こういうのは普通、従者などが出迎えるものだが、ここでは違うのだろうか。
「久しいなエリクシル、フローラルーン」
「あぁ!会えて嬉しいよ!我が友よ」
エリクシルと呼ばれている領主王は腰まである深い緑色の髪を後で一つにまとめおり、この緑の国らしく黄色と緑色と茶色の服をそれぞれ身にまとっている。後ろには、髪の色と同じ深い緑色のマントを羽織っているのが分かる。だけど特に私は、黄色い綺麗な瞳が印象的だった。そして、エルフ族の象徴であろう耳先が尖っている。
その領主王こと、エリクシルは両手を広げて私の大好きな人に抱きつこうとしている。
が、しかし
「へぶっっっ!!」
「ウザイ」と言いながら領主王となろう方のみぞおちに一発ある方の拳が入ったのだった。
「え、えぇ─!!?ちょっ、ちょっと陛下!?いきなり何をしてるんですか!!」
そう、拳をぶつけた犯人は私の旦那様であるアルファスだ。流石に驚いた私は慌てて、アルファスの腕にガッシリとしがみついたのだ。
「いきなり抱きつこうとしたあいつが悪い」
とそっぽを向きなが言っている。
(子供かっ!!)
正直言ってそう思わずにはいられない。領主王と呼ばれていたエリクシルの隣にいる領主妃であろうフローラルーンをチラリと見ると、みぞおちに一発喰らった領主王を余所に「フフフっ」と笑っていた。
(労らなくていいのかな……かなり痛そうだけど)
「エリクシル様、大丈夫ですか?」
どこか呆れた声で領主妃の代わりに声をかけたのは、フローラルーンの侍女であるカトリーヌだ。
「ぁ、あぁ。大丈夫だ。まぁいつもの事だからな・・・」
(いつもの事って……)
いつの間にかエリクシルはよっぽど痛かったのか、地面にうずくまっていた。どこか私も呆れ半分ながら二人の会話を聞いていた。
「全くもう、いきなり抱きつこうとするからですよ!」
「面目ない。でも、久しぶりに会えたんだぞ!嬉しいに決まっているじゃないかぁ!」
「会えて嬉しいのは分りましたけど、少しは落ち着いて下さいね!分りましたか?」
「うぅ。はい」
なんだろう。まるで子供を叱りつけている母親みたいな光景を目の当たりにしている気分だ。
「まぁまぁ、もうその辺にしておきなさいな。そろそろお客様を応接室へ案内いたしましょう?」
先程まで笑っていたフローラルーンが、「行きましょうか」と歩を進めた。
すると私は彼女の歩く姿が何故だか目を奪われてしまい、とても美しく綺麗だなと思ってしまった。しっかりと背筋が伸び、なんというか王妃らしいのだ。もちろん、容姿もあるのだろう。髪は太ももぐらいのところまであり青緑色で、顔も整っている。目は金色の瞳。頭には王妃の象徴であろう黄金の骨組みの細い髪飾りが頭に乗せられている。
(綺麗だな……)
何度も見ても惚れ惚れしてしまう。私が生まれ育った環境もあるのか、それとも私自身がガサツなせいかのかいまいちよく判断は出来ないが、とても美しく見えてくる。私もあんな風に歩き方からを一から見直してみようと思う瞬間でもあったのだ。
彼女を先頭にしてエリクシル、アルファス、私、メアリー、カトリーヌ、ヴァシェロンと続いて行った。
◇◇◇
ここは応接室だ。なんともすごい。
私達がいる場所は大木の中なので回りを見渡せば木の木目が綺麗に見える。しかも、深呼吸をしなくても自然に空気を吸えば木の良い香りが私の鼻をくすぐる。
とても居心地が良い場所だ。
応接室じたいも、木の格好に倣って空間は丸く作られている。中身だけをくり貫いた状態だ。
机や椅子も木で作られており、とても温かな場所だ。
「さて、改めてようこそ。我がエピナント国へ。私はここの領主王であるエリクシル・キアラ・エルセレフだ。アルファスとは旧知の仲だ!ヨロシクな」
「私はこの人の妻のフローラルーン・キアラ・エルセレフよ。精霊祭までは後1週間くらいあるけれどゆっくりしていってね」
木で作られた椅子に座り、お互いの挨拶を交わす。
「ありがとうございます。私はリリアーナ・ディア・レナトゥースと申します。今回は、私達をお招き頂き本当にありがとうございます」
国の代表として恥じぬよう丁寧に挨拶をし、深々と頭を下げた。……私だけは。
「俺とこの二人は昔からの知り合いだ。そう固くならくても大丈夫だよ、リリー」
「流石にそう言う訳にはまいりません。私にとっては初めてお会いしたのですから」
「うん、まぁそうだよね。少しずつゆっくりと馴れていけば良いよ」
「はい!」
私の頭にポンッと手を乗せて反応を楽しんでいる旦那様は、私の頬が照れて赤くなったのを確認した後は何やら表情は満足そうだ。
(全くこの人は私の反応を楽しんで、しょうがない人だなぁ)
と思っている私も結局はこういう何気ないスキンシップが妙に嬉しいのだ。
いつの間にか二人だけの世界に入っていたのか、エリクシルが私たちを見てニヤニヤしていた。
「いやぁ~。散々、結婚しないとか言い張っていたお前が嫁さんを迎えるとはなぁ。驚いたよ」
「本当よね。私もビックリしたわ」
二人して驚いているとは。よっぽど衝撃的だったんだなと思った。
「別にいいだろう。いつ結婚しようかしまいが。やっと運命の相手を見つけた。それだけだ」
「ふぅ~ん。アルファスったらリリアーナ妃のことをこんなに溺愛してるとは、なんだかかっわいい~」
「うるさいぞ!エル!」
「あはは!怒った~」
なんだろう。エリクシル様は見た目はとても大人しそうで賢明な感じに見えるのに、実際はとてもお茶目で陛下をからかうことが大好きなお人なんだと感じとった。
「フフフ。見た目とのギャップがすごいでしょう?実際はこんな感じの人なのよ」
まるで私の心を見透かした見たいに話しかけてきたフローラルーン。いや、本当は見透かされてたりして………。
「あはは。最初は驚きましたが、とても気さくでいい方ですね」
「えぇ。あの人はとても素晴らしい方よ。ああ見えてもこの国のことを一番に考えていらしているの。アルファス様もそこは同じではないかしら?」
「はい。陛下も自分の国のことを一番に考えて行動しております」
お互い旦那ラブな私達はいつの間にか親近感がわいて、あの人達を余所にさまざまな話をして言ったのだった。