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エピナント国の呪い






 ここは応接室。

 ソファに座り私の隣にはアルファス、机を挟み向うのソファには茂みの中から突如表れた女の子。


 メアリーとヴァシェロンは後ろに控えている。

 テーブルにはメアリーに入れてもらった紅茶とお茶菓子がある。カモミールティーとスコーンだ。


「彼女は隣国に接するエピナント国の領主妃の侍女だ」

「初めまして、リリアーナ樣。先程は突然驚かしてしまい申し訳ありません。私の名はカトリーヌと申します」


 彼に紹介されたカトリーヌはつい先程の非礼を丁寧に深々と詫びてくれた。


「別に大丈夫よ。さすがに驚いたけれどね」

「ありがとうございます」


 笑顔で接する。

 正直に言って、本当に気にしていない。さすがに心臓は止まるかとは思ったけれど。


 それよりも私は彼女を観察していた。

 翠色の瞳で茶色の髪はポニーテールに結ばれており結び紐は黄色らしく頭からは兎耳になって見えている。


 でもなにより一番驚いたのが、耳が尖っていたのだ。アニメや漫画でも妖精やエルフのキャラクターはたくさんの出ていたが、実際に見るとエルフ族というだけあってさすがだなと思った。思わず興奮してしまう。


「ところで、突然すみませんね。いきなり押し掛けて来てしまって」

「別に構わない。だか、どうして一人で来たんだ?理由を訪ねても構わないだろうか」

「はい。もちろんです」


 テヘヘ☆と謝るカトリーヌに対し、彼は突然の来訪を気にしていない様子。隣国なので当然仲は良いのだろう。

 それにしても、カトリーヌの陛下に対する態度がめちゃくちゃフレンドリーだ。


「実は近々わが国、エピナント国で100年に一度の精霊祭が行われるんです。なので新婚のお二人には是非とも来ていただきたく、領主王と領主妃様からの命でここに来させて頂きました!」

「もうそんな時期か。早いな…」


 彼の言葉をよそに頭を回転させていた。

 『精霊祭』何処かで見たことがある。

 確かここに来てから一度本で読んだことがあった。それは、とても大事なお祭りだったはず。


 エピナント国はレナトゥース国の東北に位置する国。私たちがいる国よりもさらに緑がたくさんある。大陸一の自然豊かな国だ。それに伴いエルフ族は草魔法系統が得意とされている。

ちなみに、その国にはエルフ族が人口の約90%を占めているらしい。残りの約10%はどこからか嫁いで来た人なのかもしれない。


 そして、『精霊祭』は100年に一度開催される、エピナント国の大切なお祭り。

 エピナント国には国の象徴とされているとても大きな大木である『ソルマージュ』という木がある。

 ソルマージュの大木を囲みながらお祭りと同時に大切な儀式も行っていると言う。


「だそうだ。どうする?リリー」


 彼の顔が私に向けられる。

 私としては精霊祭、とても興味がある。行かない訳がない!!


「もちろん行きます!陛下!!」


 アルファスが目を輝かせている私を見て、ゆっくりと頷いた。


「カトリーヌ。後で詳細を教えてくれ」

「かしこまりました。アルファス様」



◇◇◇

 -夜


 私たち夫婦は結婚してからは同じ部屋に場所を移している。

 白と水色を貴重とした部屋で、壁にはレナトゥース国の紋様が金色で施させれたいる。

 ベットや机やソファは白色でとてもシンプルな部屋だ。


 今は私と旦那様と二人きり。

 ソファに並んで座り、机にはメアリーが入れてくれたジャスミンティーとクッキーが置いてある。

 何をしているかと言うと3週間後にエピナント国で開催される精霊祭について話しを聞いているのだ。


「エピナント国の精霊祭については知っているのか?」

「もちろんです。陛下。お祭りに伴い大事な儀式も同時にされるんですよね?」

「あぁ、そうだよ」


 質問に答える私に満足そうに彼が頷く。


「でも具体的にどんなお祭りなんですか?本でしか見たことがなくて」


そう、私は本でしか見たことがないのだ。詳しい詳細は全く分からない。


「まぁ、当たり前だよ。そのお祭りは基本的にはエピナント国で密かに行われる祭なんだ」


 当然だとの言わんばかりの内容に驚いた。

 まさかの内容に思ってもみなかった。

 「なぜなんですか!?」と言わずにはいられない。


 すると彼は少し遠いところを見ながら、気まずそうに口を開こうとしている。


「実は、エピナント国にはある呪いがかけられているんだ」

「呪い?!」


 思わず驚いてしまった。

 まさかここで、漫画やアニメみたいな展開になるとは思わなかったからだ。

 ドキドキと興奮する(勝手に)気持ちが抑えられない。でも確かにここは異世界だからと心を落ち着かせる。


「その呪いって何なんですか?」


 呪いには様々な種類がある。

 前世の記憶でしかないけれど、直接人にかける呪いや何かを身代わりにして間接的に呪いをかける。藁人形や黒魔術など・・・。


 でもさすがに大規模な呪いは無いだろう、と思っていると静かに彼が口を開いた。


「んーとね、実際にみた方が早いと思うけど。エルフ族には羽があるんだ。妖精の羽だね」

「へぇ!凄いですねっ!」


 妖精の羽!!興奮せずにはいられない。

 実際に飛んでる姿を目に入れられるなんて、実に運がいい!!

 だけど、どこか呪いなんだろう?そう首を傾げていると、


「エルフ族はね本当だったら好きなだけ飛べるんだよ。空を自由にね。でも、そんなに長くは飛べないんだ」

「つまり…時間制限みたいなことがあるってことですか?」


そうだよ、と肯定する。


「エルフ族だけが与えられる羽でね。エルフ族は飛べることに誇りを持っているんだよ。自分達にか出来ないことだとね」


 でも、と話を続ける。


「それはね。何千年と続く、続いている呪いなんだよ。決して解けることはない、エピナント国の永遠の呪いとも言われている」

「えっ………?」


 何千年?結構大規模な呪いだ。

 唖然とするしかない。まさかこんなに続くような呪いだとは思っても見なかったのだ。


「なぜ……」


 ぼーぜんとしながら下を向いてしまった私を彼が慰めるように頭にぽんっと手を置いた。


「リリーが気にすることはないよ。でもまぁ、私が話せるのはここまでかな?後はエピナント国の領主王たちに直接話を聞いた方が良いかもしれないね」

「そうですね」


 心のもやもやを残しながらとりあえず相づちを打っておいた。

 二人で話し込んでいるうちにいつの間にか朝になっていたらしい。

 太陽の光が窓からキラキラと差し込んでいた。







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