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家族へ伝えたい私の思い

これは一応本編に繋がるようにしています。でもまぁ番外編ではありますが……。

よろしくお願いします。






 ここは私が最近一番のお気に入りの場所。

 インクの匂いが私の鼻をくすぐり、ページをめくればたくさんの知識が目に入っていくる。


 そう、ここはレナトゥース国の図書館である。城内の一角にある広々とした場所。数えきれないくらいたくさんの本がある。

 本の種類は様々で、魔法に関するものやシャルエル大陸の国々に関する知識、最近の地図や昔の地図、とにかくなにからなにまでたくさんあるのだ。



◇◇◇

「メアリー、紙と羽根ペンを持ってきてくれてありがとう!」

「いえいえ。ご家族にお手紙とはいいことではありませんか。紙は十分にあるのでたくさん書いて下さい」


 私達がなにをしているのかというと、家族に手紙を書くためだ。

 ここに嫁ぐ前に、必ず手紙を書くと妹であるフィオレロと約束をしている。そのために今日は、メアリーと共に図書館を訪れているのだ。


 図書館には読書スペースがあるので、私はそこをお借りしている。ちなみに今は誰もいない。ちょうど今は働き詰めなのかもしない。


 しかし、いざ手紙を書こうとなると内容に迷ってしまう。ついこの間、結婚式を挙げたばかりなのでそのことを書くとなると何十枚となりそうだ。


 出来れば簡潔に書きたい!


 そう思い、悩んでいると私の前で本を読んでいたメアリーが声をかけてくれた。


「リリー様。せっかく書くのですから、一番伝えたいことを書かれてはいかがですか?」

「一番伝えたいこと………」


 ポカンとしながら考える。


 私が一番伝えたいことはなんだろう。ここに嫁ぐ前、家族は物凄く心配していた。私は陛下のことを知ってるからなんとでも言える。

 「魔王であるアルファス様は、優しいお人なんだ」と口では言えるのだ。でもきっと信じないだろう。彼は本意ではないが、人を傷つけてしまった前科があるのだから。


 それでも私が一番知って貰いたいこと、それは今が一番幸せなんだということ。

 それを書きたい。


 大好きな家族に安心して欲しい。


 そう思うと、書くことが決まった。


「うん!書きたいこと決まったわ。ありがとうメアリー」


 私は間単にだか、いろんなことを書いた。

 私はここの国に来てとても楽しく過ごしていること、メアリーが入れてくれている紅茶のことや大好きな彼のこと、そしてなにより私は幸せなんだ、ということ。


「伝わるといいなぁ」


 その言葉を出したとき、ギィィと扉が開く音がした。誰かと思い扉の方に目を向けると、そこには私の旦那様がいたのだ。


「陛下っ!?」

「あっアルファス様っ!」


 と私よりもいきなり立ち上がったのはメアリーだった。立ち上がってすぐに頭を下げ、私の後ろに控えた。


「こんなとろころにいたんだな、リリー。何をしていたんだ」

「私の家族に手紙を書いていたんです」


 ご機嫌がよろしいらしい旦那様は私の側に来て、私の手紙を覗いた。


「家族思い、なのだな」


 私の手紙を見て、どこか寂しそうにする彼の腕の袖を握った。


「私、家族のことが大好きなんです。いつか陛下にも会ってもらいたいです」

「そう…か。ありがとう」


 笑顔になった陛下を見て私まで嬉しくなった。

 せっかくだから陛下と一緒にお茶でもしたい。

 なので、声をかけてみることにした。


「そういえば陛下は今、休憩中なのですか?」

「あぁ、そうだよ。ヴァシェロンがリリーはここに居ると聞いてね」

「そうだったんですか!あの、せっかくなので一緒にお茶でもどうですか?」


 すると陛下は目を見開いていた。まさか私がこんなことを言うとは思わなかったのだろう。

 一瞬の間を置いてから口に出した。


「・・・・そうだな。せっかくだから頂こうか」

「本当ですかぁ!嬉しいです!」


 よし来たっ!と心の中でガッツポーズしながら、メアリーの紅茶はおいしいんですよと言葉を続けた。

 私達の話を全部側で聞いていたメアリーが「では、いつもの東屋にお持ちいたしますので。ごゆっくりとお越し下さい」と言ってから姿を消した。


 これで私たちは完全に二人きりだ。別に馴れていないというわけではないが、やはりドキドキしてまう。何を喋ろうかなと頭を動かしていたら、


「この、手紙。今私がリリーの家族に送ろうか?」


 優しい顔を私に近づけさせて、言葉を発した。


「えっ!いいんですか?」


 手紙は全部書き終わっている。夜に陛下とは会うだろうからそのときに送ってもらおうと考えていた。なら、せっかくだからとお願いするこにする。


「あの、お願いします」


 うん、とゆっくり頷いてから陛下が手紙には手をかざす。すると、手紙の回りには黄色の魔法陣が浮かび上がった。その魔法陣は手紙を包み込んだ瞬間、白い鳩の姿になって空へ飛んで行ってしまったのだ。

 それを見た私は思わず、「すごい…」と呆然と鳩を見送っていた。


「手紙は鳩の姿にして送るんだよ」


 と、彼が声をかけてきた。


「すごいです。初めて見ました」

「ははっ、そっか」

「はい」


 二人で笑い合えるというこの瞬間こそが幸せだと常々そう思う。


「そろそろ行こうか、メアリーが待っている」

「そうですね!行きましょう陛下」


 先程から立っている陛下の手をとり、東屋へ向かう。



 届け、届け。家族に私の思いよ届け。

 そう思いながら書いた手紙。

 いつか他国の国々と分り合える日が来る。


 そう、私は信じている。






ありがとうございました。

次は、リリーの家族が出てきます。

21時掲載予定です。

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