第1話
主人公:右堂 風幸 Udo Fuyuki(18)4月3日生まれ
幼馴染:晴気 智景 Haruki Tomokage (17)8月22日生まれ
私は記械人として18年前この世に生を受けた。具体的には、稼ぎのいいサラリーマンの父親と、(今となってはレッドデータブックにのっていてもおかしくはない)専業主婦の母との二人の間に長男として生まれ、2歳年下の妹が一人いて、猫(5歳♀)を含めた家族4人(と一匹)で郊外に建った5LDKの一軒家に暮らしている。隣には同級生の幼馴染家族が住んでいて,家族ぐるみの付き合いをしている 。
私が記械人であることを除けばだが、なんてことのない(しいていえばちょっと裕福なだけの)普通の家族だ。
80年ほど前、ある男児が記械人に生まれたために両親から金蔓として”教育”される事案が起こったために制定された「記械人保護法」に則った定期的な家庭調査に引っかかることもなく、ごく”普通”に育ってきた。幼馴染と同じ幼稚園に通い、同じ小学校に通い、同じ中学校に通い、同じ高校に通って次の冬に卒業を迎えようとしている。けして意図してこうなったわけではないので、みごとな腐れ縁具合だと思う。
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この幼馴染の名前は晴気智景という。”普通”の人間で、学業成績は上の下だが地頭はかなりきれるタイプ。運動センスが非常に高いが気分屋で、再三実力のある部活に勧誘されるも全て断り、時折ふいに、「したいことできたからお前も付き合え」と笑って私を連れまわす。
彼のそういう面を私も楽しんでいたし不満はなかったのだが、ある金曜日の夜に「なぁ!山登りたくなったから今からいくぞ!」といって本当に登山に連れていかれた時は正直ふざけんなと思った。いや、頂上から見た日の出は綺麗だったけども。いつのまにうちの両親から外泊の許可を得て荷物をそろえて遠出の準備をしたのか……流石に帰ってから両親にちょっとお説教した。本人の同意なしに、しかも初心者の私をいきなり標高3500m超えの山に連れていくとかありえない。ガイドなしだぞ。そんでもって次の週の学校に間に合わなくて二日も無断で休むはめになった。あの時ばかりは、智景のことを馬鹿だと思わずにいられなかった。結局許してしまう私も私なんだけども。
……そんなこんなで、とかく色んなことを経験することができたために、私の容量は他の記械人と比べても異常に増えた。智景に連れまわされたひとつひとつを詳細に記憶しても有り余るくらいに。あまりの規格外さに、国から「将来、政府の仕事に就いてくれないだろうか!」とお願いされたがとりあえず丁重にお断りしておいた。まだ18歳なのでよくわかんないです。就活の時期になったら検討しますので。
そういうわけだから、今の自分の容量を考えると、どんだけ濃いことしてきたんだよって我ながら呆れてしまう。いっそ笑える。
「なぁ、ユキ。何気持ち悪い笑いうかべてんの?」
「うるさい」
「おっ真顔に戻った。なぁなぁ、何考えてたんだよ。もしかしてエロいこと~?いやんユキのエッチぃ」
「違う。妙なこと言わないでくれ。」
「悪い悪い。」
軽く笑い飛ばす智景の額をはたいてやった。……力加減はちゃんとした。
「登山に連れてかれたときのことを思い出したら笑えてきてね。」
「あん時のことか。でも笑う要素あったか?」
「やっぱり智景はどうしようもないやつだと思ってさ?」
酷ぇ。そう言って眉尻を下げる智景の顔は笑っている。
「でも笑ってくれるっていうことは、ユキはそんな俺を受け入れてくれてるってことだろ?」
「……。」
「ほら、否定しない。」
満足気に口角をあげた智景はお決まりの誘いを投げかけてきた。
「というわけで、今日は駅前にできた焼き肉食いにいくぞ」
拒否されるなんて微塵も思っちゃいない。智景のドヤ顔に、安心感すら覚えてしまう自分はもう手遅れなのだろう。
「金おろすから先ATMね。」
「おーけーおーけー。」
「一昨日に新作アイスクリームでてたけど、もう食べた?まだなら焼き肉の後に行く?」
途端に目の輝きがます智景に、一度引き締めた口元が緩む。でかい図体して甘いものに興味なんてありません、って顔してるわりに、アイスには目がないんだ。かわいいやつめ。
「行く!さっすがユキ!」
俺のことわかってんなぁ!そう言う智景の全身からは俺嬉しい!オーラがあふれ出している。
「……当たり前だろう。」
だって、私たちは腐れ縁なのだから
BLにするつもりはないんです……ほんと……ないんです……。




