8話 尊、クエストを受ける
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俺達はビーチさんと話していると、ビーチさんから”これからクエストカウンターに、納品するんだけど来るかい?”と誘われる。
俺達は”イーストダンジョン”から食料は自給自足出来るが、それ以外の必需品(衣服や日用品や武具等)はお金が必要になってくる。だが現在の状態では、お金を得ることが出来ていない。俺はメイプルとミュートの方を向いて。
「メイプル、ミュート。俺はビーチさんと一緒に、クエストカウンターへの納品を見せて貰おうと思う。2人はどうする、疲れているなら鍵を渡すから家で休んでくれて構わないぞ。」
「尊様、お気遣いを頂きありがとうございます。私は大丈夫ですので、お供致します。」
「私も大丈夫です。山で狩りをしている方が、疲れますから。」
俺達はビーチさんと、”クエストカウンター”がある酒場へ歩き出した。酒場へ到着するまでに、ビーチさんにいくつか質問する。
「クエストカウンターで、ティーさんから、
①”野菜や麦等の食物や糸や布等の服飾系の材料、こちらの採取及び販売による方法”
②”材料を料理や衣服への加工して販売する方法”
③”草むしり等の住民達の要望を叶えて報酬を得る方法”
3つがあると聞きました。
クエストカウンターに納品するのは、③の住民達がお願いしたクエストになるのですか。」
「大体そんな感じです。①と②は市場で販売する方法ですが、③は販売先は”クエストカウンター”になります。因みに依頼をしてくる人は①、②、③全ての人が該当します。」
「②と③は理解できるのですが、①はどういう意味でしょうか。加工する前の材料を買ったら、儲からない気がするのですが。」
”イーストダンジョン”で狩れば、入手が0Gで売った金額がそのまま利益になる。しかし、”クエストカウンター”に依頼することは買うことになるので、どんなに安くしてもお金が掛かってしまう。
俺が悩んでいるので、ビーチさんが正解を教えてくれる。
「この場合の依頼人は住民ではなく、”行商人”が依頼を出します。野菜や果物は料理すると、ほとんど痛むのが早くなってしまいます。糸や布にしたって大きな町の服屋へ運べば、貴族達の着る立派な衣服の一部になりますから。
それに”行商人”が扱う量は大量ですから2~3人が市場で購入なんかしたら、市場の物は無くなってしまうでしょう。」
「確かに個人が出しているお店では、荷台一杯の量を毎日準備するのは大変そうですね。」
”仰る通りです”と、ビーチさんが褒めてくれる。
因みに”行商人”は1ヶ月~2ヶ月の周期で訪れるらしい。大きな町へ行くのは1週間もあれば十分なのだが。大きな町で食料等を販売した後”イーストウッド村”が要望するものを購入して戻ってくる、となると時間が掛かる。
「その時間が掛かる間に”行商人”はクエストカウンターに依頼して、私達に売り物を準備させておく。のが主な流れになってます。」
「ありがとございます、勉強になりました。」
そんなことを言っていると、俺達は酒場に到着しました。中に入ると俺達以外にお客はおらず、いつもどおりティーさんが迎えてくれる。
「いらっしゃいませ、クエストカウンターへようこそ。」
「クエスト依頼No15にあった、”小麦”を納品しに来ました。」
「少々お待ちください。」
ティーさんがカウンターの下から何枚かの紙面を取り出して、目的の紙面を探している。その間に、ビーチさんが話しかけてくる。
「尊さん。あそこに壁に、何枚も紙面が貼ってあるのがわかりますか。」
俺はビーチさんが指をさす方を見ると、壁に沢山の紙面が乱雑に貼られていた。
「あそこに貼られているのが、クエストの依頼書です。あそこから希望する依頼書を探して、受けたい依頼書Noをクエストカウンターに言えば依頼が受けられます。」
”良かったら見てきて下さい。”と言われたので、メイプルとミュートの2人を連れてクエスト依頼が貼らている壁を確認する。
「おっ、ビーチさんが受けていたクエストはこれかな。」
俺はクエスト依頼No15の内容を確認する。
”クエスト依頼 No15”
小麦 ✕ 100個 1個 ✕ @10G
依頼人 ハードウッド
おお、安過ぎる。完了しても1,000Gとか俺のロングソードの購入価格じゃないか。そんなことを考えていると、ビーチさんが後ろに立っていた。
「尊さん、安過ぎる!とか思っているでしょ。(苦笑)。」
「はい、失礼ですが。1,000Gって、酒場で2食分食べれば無くなってしまうぐらいですよね。」
「はい、その通りです。」
俺は会話が続かないと思い、違う話題を振ってみた。
「そういえば、ビーチさんのお仕事って何をしているんですか。初めて会った時は門番で、今日は”イーストダンジョン”にいましたよね。」
「私の職業ですか、ハードウッドが出している、不人気依頼の消化ですね。」
どうしよう、地雷踏んじゃった気がする。俺が無言になってしまったのを察したのか、ビーチさんが会話を続けてくる。
「まあ、仕方ないですね。若者は”こんな田舎じゃやっていけない”って言って、”イーストウッド村”を出て行ってしまいますから。」
「そういえばティーさんから空き家の話を聞いた時も、そんなこと言ってましたね。苦笑いを浮かべて。」
「珍しいですね。ティーがそんなセリフ言うのも、苦笑いをするのも。」
「あの、失礼かもしれませんが。ビーチさんとティーさんは、友人か幼馴染みたいな関係ですか。」
ビーチさんが驚いた顔をして、”よくわかりましたね”と言ってくる。俺はビーチさんが男の俺にさえ”さん”を付けるに、ティーさんには”ティー”と呼び捨てしていたことを指摘する。ビーチさんがティーさんを話す時は、少し嬉しそうに話していると言うのは止めておく。
「なので、親しい間柄なのは間違いないと思いました。
なので気を付けた方がいいですよ。ティーさん美人ですから、一目惚れの輩からいらない嫉妬を買いますよ。」
「わかりました、ご忠告感謝します。」
俺はビーチさんからクエスト依頼が貼られた壁に視線を戻す、手頃なクエストがないか探してみると発見した。
”クエスト依頼 No05”
りんご ✕ 10個 1個 ✕ @30G
依頼人 ハードウッド
俺はクエストカウンターに行って、ティーさんに”クエスト依頼No05にあった、”りんご”を納品しに来ました。”と言ってから、ショルダーバッグからりんごを10個を取り出す。
ティーさんは”少々お待ちください”って、カウンターの下から依頼書を取り出す。そして、りんごの数と依頼書の数が合っているのを確認する。
「尊様、クエスト達成おめでとうございます。300Gをお持ちしますので、お待ちください。」
ティーさんは奥に消えると、300Gの袋を持って現れる。”中身をご確認ください”と言われたので、確認して間違ってないことを報告する。俺はメイプルとミュートの所に戻ると、2人にそれぞれ100Gずつ渡す。
「メイプル、ミュート。今日は”イーストダンジョン”に付き合ってくれてありがとう。少ないけど、これは受け取ってくれ。そして、これからもよろしくな。」
「はい、ありがとうござます。尊様。」
「尊様、ありがとうございます。これ大事にしますね。」
俺は酒場のおばちゃんに、15Gで飲めるものをあるかと聞くと。ホットミルクなら15《ゴールド》で可能だと言ってくる。俺はおばちゃんにホットミルクを”6つ”注文してクエストで貰った100Gで払う、お釣りはチップとして渡して少しお願いをする。おばちゃんから”わかったよ”と了解を頂きしばらく待っていると、ほんのり湯気が上がっているホットミルクを持ってくる。そしておばさんは俺達にホットミルクを配っていく、”俺”と”メイプル”と”ミュート”と”ビーチさん”と”ティーさん”そして”酒場のおばさん”。
皆にホットミルクが行き渡ったのを確認すると、俺達しかいない夕暮れ時の酒場で話始める。
「今日、俺は初めてクエストを達成できました。そして、達成出来たのはここにいる人達のおかげだと思ってます。ささやかなのホットミルクですが、俺が出来る感謝の気持ちを受け取ってください。」
俺はホットミルクのカップを少し持ち上げて、皆の姿を見ながら。
「皆さん、ありがとうございました。そして、これからもお世話になります。乾杯!!。」
「尊様。こちらこそ、お世話になります。」
「尊様。私、今日のことは一生忘れません。」
「お酒でしか乾杯したことがなかったけど、ホットミルクの乾杯も悪くないね。」
「尊様、ありがとうございます。お持ちしたことは何度もありましたが、こちらで自分が飲むのは初めてですね。」
「年甲斐もなく、心が浮き浮きしちまうよ。兄ちゃんの心遣い有難く頂くよ。」
スローライフとは違うかもしれないが、こんな心躍る日々も過ごしていきたい。そう思いながらホットミルクに口をつける、体だけでなく心も温かいと感じる不思議な一杯だった。
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