7話 尊、”イーストダンジョン”に入る
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家に荷物を置き帰った後、俺達は買ってきた荷物を片付ける。
それから、メイプルとミュートに、”短剣”(商人の遺品)と”革の胸当て”を渡して、3人共”短剣”と”革の胸当て”を装備する。
伊吹 尊 ♂ 人族 20歳
装備
短剣 旅人の服 革の胸当て(旅人の服) ショルダーバッグ 旅人のズボン 旅人の靴 極運の指輪
メイプル ♀ 狼人族 20歳
装備
短剣 旅人の服 革の胸当て(旅人の服) ショルダーバッグ 旅人のズボン 旅人の靴
ミュート ♀ 猫人族 18歳
装備
短剣 旅人の服 革の胸当て(旅人の服) ショルダーバッグ 旅人のズボン 旅人の靴
家に鍵をかけてから、俺達は”イーストダンジョン”へ向かい中へ入っていった。
俺はスキルを使って”イーストダンジョン”のマップを開く、マップ上には色々なアイコンが映っていたが”小麦”のアイコンの場所を探す。
「今日は初めてのダンジョンなので、”静物”だけの取得を行おうと思う。2人はどう思う。」
「尊様の決定に、異存はありません。」
「私も賛成です。弓は得意だけど、短剣は初めてです。」
ミュートの返答に疑問が湧く。ミュートって出会った時から、スキル”短剣術”は持っていたような。
俺はミュートに、疑問に思ったこと聞いてみる。
「そうなんですが・・。でも山では弓を使って獲物を狩っていたので、本当に”短剣”は使ってないです。」
「そうなのか。じゃあ、刃物を使うのも初めてなのか。」
「いいえ、母様の手伝いで”包丁”は使ってました。」
なるほど、この世界では”包丁”は”短剣術”の範囲になるらしい。俺達はマップを頼りに”小麦”の群生地まで進む。そして、”鑑定”を使って見つけた”小麦”の感想は・・。
「デカいな。」
「大きいですね」
「私の背より高いですよ。」
なんとこの世界の”小麦”は見た目は小麦なのだが、大きさが1.5m~2.0mぐらいで前世のトウモロコシぐらいあった。
試しに”短剣”で3~5回程度切ってみると倒れてきて、地面に倒れた瞬間に茎や葉を消えて2個の麦穂になっていた。持ち上げ見るとそこそこ重く、手のひらでは収まらない大きさがあった。
すると、ミュートが嬉しそうに。
「尊様、凄いです。ラッキードロップですね。」
「ラッキードロップ?」
ミュートの話だと、通常植物や魔物を倒しても”落ちないか””1個落ちる”らしい。だが稀に2個同じモノが落ちることがあるので、それを”ラッキードロップ”というらしい。そういえば、ビーチさんがパーティーを組んでいると”パーティードロップ”あると言っていたがどうだろうか。俺はメイプルとミュートに、足元に麦穂がドロップしてないか聞いてみた。
「尊様、私の足元にドロップがありました。しかも2つあります。」
「こっちもです、尊様。私にも2つドロップしてました。」
パーティードロップの効果も無事確認することができた。それから10本程”小麦”を狩ってみたが全て、2個の麦穂がドロップした。”俺はラッキードロップが普通なのだろうか”と思って、手を見てみると指輪の存在を思い出した。
”極運の指輪”・・装備者はあり得ない程の運勢の上昇を授けてくれる。
本当に”あり得ない程の運勢の上昇”でしたと、驚いているとメイプルとミュートが俺の所にやってくる。
「尊様、ショルダーバッグが一杯になりました。2/3は”パーティードロップ”です。」
「尊様、”小麦”を狩ろうとしたら”パーティードロップ”で足元が一杯になっちゃいます。」
俺は取りあえず、”すまない”とメイプルとミュートに謝っておいた。3人で話していると思いついたことがあるので、協力してもらうことにする。
俺はアイテムボックスを開いて、自分のショルダーバッグの中身を麦穂10個に調整する。その後ショルダーバッグを装備から外して、ミュートのショルダーバッグに入れるようにお願いする。結果、俺のショルダーバッグはミュートのショルダーバッグには入らなかった。
次にミュートのショルダーバッグから、”麦穂”を1個取り出して俺が受け取る。もう一度俺のショルダーバッグを入れるようにミュートにお願いすると、今度はミュートのショルダーバッグに入っていった。
「あれ。さっきは尊様のショルダーバッグは、私のショルダーバッグには入らなかったのに。」
「ミュート。今度は俺のショルダーバッグを、返してくれないか。」
ミュートは自分のショルダーバッグから、俺のショルダーバッグを取り出す。その後ミュートから預かっていた”小麦”と俺のショルダーバッグを交換する。今度もミュートのショルダーバッグの中に、”麦穂”は消えていった。俺はショルダーバッグを装備して、中身を確認すると空っぽだった。
俺は自分の仮説を、メイプルとミュートに説明する。
「始めのミュートのショルダーバッグの中は、30枠の内20枠は”麦穂”が入っていたんだ。
その後俺のショルダーバッグ、30枠の内10枠に”麦穂”が入ったショルダーバッグを入れようとすると入らなかった。
つまりミュートのショルダーバッグに、俺のショルダーバッグを入れようと思うとするなら。”1枠、俺のショルダーバッグを入れるスペース”が必要だったわけだ。」
「なるほど。始めは残り10枠の中に、”麦穂”が10枠分と”尊様のショルダーバッグ”が1枠で合計11枠で容量がオーバーしたから入らなかったってことですね。」
「そして私のショルダーバッグから”小麦”を1枠分取り出したから、尊様のショルダーバッグと”麦穂”が10個が入ったんですね。」
「最後に付け加えるなら。俺のショルダーバッグの”麦穂”が、ミュートのショルダーバッグにバラバラに入ったから、返して貰った時の俺のショルダーバッグは空っぽだったわけだ。」
2人が”なるほど”と頷いていると、ミュートが質問してくる。
「尊様、これって何か意味があるんですか。”麦穂”の数は変わってないですよね。」
「確かにミュートの言う通りだ。だけど・・・。メイプル、悪いがメイプルのショルダーバッグを俺に渡してくれないか。」
メイプルはショルダーバッグを装備から外して、俺に渡してくる。俺は”アイテムボックス”と念じると、手に持っているメイプルのショルダーバッグが消える。そしてアイテムボックスの画面からショルダーバッグを選択すると、胸の前に”空っぽの”ショルダーバッグは現れる。俺はメイプルにショルダーバッグを返して、続きを話す。
「このように手早く”ショルダーバッグ”から”アイテムボックス”への中身の移動が可能になり、”持ち物が一杯で収穫物を諦める”ということが無くなる。」
ビーチさんが言っていた、”パーティードロップ”のデメリットである、
”同じモノを狙うなら効率がいいですけど、複数で違うモノを狙う場合だと本命までに荷物が一杯になったりしますから。”
の部分が解消されことになる。それに本命が”種類”ではなく”大量の個数”である場合も、一度中身を置きに帰るという必要もない。
俺はミュートのショルダーバッグも、同じように空にして返却する。それを何度か繰り返して”小麦”を300個集めた。
「今度は、果物を探して見よう。」
メイプルとミュートが頷いたの確認して、ダンジョンのマップを開く。どうやら複数の果物が群生している場所を発見したので、3人でそちらに向かう。そこには”りんご”、”桃”、”オレンジ”、ぶどう”、”レモン”が木に実っていた。俺達はそれぞれ、100個づつ収穫してアイテムボックスに収納した後に。それぞれの”ショルダーバッグ”に”りんご”、”オレンジ”、”ぶどう”を30個づつ入れて、家に戻ることにした。
イーストダンジョンの入り口付近で、ビーチさんに出会う。俺は家まで荷物を運んでもらったことや、イーストダンジョンのアドバイスのことで再度お礼を言う。
「照れるから止めてくれ。それに尊さんに教えたことは、誰もが知っていることなんだから。」
照れていることを誤魔化すためか、別に話題に変えてくる。
「で。イーストダンジョンに入っていたようだけど、何を収穫したんだい?。」
俺達はビーチさんにショルダーバッグの中身を見せる。
「お~、見事に果物ばっかりだね。市場で売るのかい?それとも”ジャム”にするのかな?。」
「えっ、ジャムがあるんですか。パンはありましたけど、ジャムを付けている人なんていませんでしたよ。」
「尊さんは変わっているね。ジャムは、お湯で溶かして飲むものだよ。
イーストウッド村ではミルクばっかりだけど、大きな町ではジャムをお湯に溶かして飲むって聞くよ。」
「へぇ~、そうなんですか。ミルクって大きな町だと珍しいんですかね。」
「ミルクをドロップする魔物は珍しくはないんだけど数が問題だね、普通の森にもいるけど”イーストダンジョン”みたいに頻繁生まれてきたりはしないからね。
だからミルクより手軽に手に入る、井戸水を沸騰させてジャムを溶かして飲むほうが一般的だって父から聞いたよ。」
「なるほど、ビーチさんは物知りですね。因みに、お父さんって何のお仕事をしているんですか。」
「尊さんも知っているはずだよ、だって会っているはずだから。」
俺は?って顔をするので、ビーチさんが笑いながら教えてくれた。
「私の父さんは、クエストカウンターの代表。ハードウッドだよ。」
「えっ、じゃあ。ビーチさんとハードウッドさんは親子ですか!!。」
「全然似てないだろ。私は美人の母親似だからね。」
驚く俺に冗談を言ってくるあたり、親子で似ているなと思ってしまった。
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