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5話 尊、メイプルとミュートを手に入れる

ブックマークありがとうございます。毎日の励みになってます。

「尊様。どうぞお座りください。」


受付嬢さんが真ん中の席を引いて、席に座ることを勧めてくる。俺はお礼を言って着席すると、見知らぬ男性が俺の目の前の席に”失礼”と一声かけて座った。男性の後ろでメイプルとミュートが立ちっぱなしだったので、空いている椅子に座らないのかと尋ねた。メイプルとミュート、そして男性は驚いた顔をして俺を見てくる。ただ一人、受付嬢さんだけが楽しそうに微笑みながら俺達の様子を見ていた。


「では・・、お言葉に甘えます。尊様。」

「尊様、本当によろしいのですか。」


恐縮した様子で二人が俺の方に来る、そしてメイプルは左手側に、ミュートは右手側に着席した。


「いやいやティー君から報告を受けていたが、実際に目の当たりにすると驚いてしまったよ。」


男性は笑いながら、受付嬢さんの方を見る。受付嬢さんは微笑んだまま男性にお辞儀をしている。


「ティー様とは、お世話になった受付の女性の名前でしょうか。」


俺は男性に尋ねると、受付嬢さんはこちらに近づいてお辞儀した後に


「申し遅れました、尊様。私の名はティーと申します。こちらで受付をさせて頂いており、様付けは不要でございます。」


ティーさんは再度一礼した後、元の位置で戻り待機している。


「そいえば、こちらも名乗っていなかったね。私の名はハードウッド、この建物の責任者をしている。

ティー君悪いが飲み物を頼む、私とお客様合わせて4人分頼むよ。」


「かしこまりました。」


そう告げると、ティーさんは部屋から退室していった。


「こちらこそ、自己紹介が遅れて申し訳ございません。私の名前は伊吹尊と申します。」


互いの自己紹介が終わった後、俺のこれまでの経緯を雑談として話す。勿論転生したことは伏せて、遠くの家から家出した放蕩息子だと言っておいた。雑談を始めて30分ぐらいすると、コンコンとノックの後にティーさんが4人分の飲み物を持ってくる。


「温めたミルクです。火傷に注意して召し上がってください。」


そういうと、俺達の前に湯気が昇る白い飲み物が置かれていた。俺達は火傷しないように一口飲むと、ハードウッドが話しかけてきた。


「それでは尊様、この度の本題のお話を致しましょう。」


そういうと、ハードウッドは数枚の用紙を机の前に置いた。俺は背筋を正して、話を聞く準備をする。


「そんなに固くならずとも大丈夫ですよ、結論として尊様は無実です、死体に外傷や毒の形跡がなく、あなた方の事情聴取も怪しい点は見つかりませんから。」


「よかったです。勿論何もしてませんが公平な第三者が見ていてくれたわけではないので、無実が確実とは言えませんでしたから。」


「安心して頂けたのなら、こちらも嬉しいです。ではこちらをご覧ください、亡くなった商人の持ち物で尊様に譲渡されるリストになります。」


そういうと、ハードウッドは先ほどの用紙を広げた。


お金


500,000(ゴールド)


奴隷

・メイプル(獣人)

・ミュート(獣人)


食品

・砂糖  ✕  30袋

・塩   ✕  10袋

・小麦粉 ✕  10袋


武器

短剣✕3本


衣服


旅人の服   ✕ 2着

旅人のズボン ✕ 2着

旅人の靴   ✕ 2足


その他

・革  ✕  200枚

・薬草 ✕  150束

(馬車)✕  1台

亡くなった商人は、革と薬草を扱う商人だったのだろうか?そんなことを思っていると、馬車に( )が付いているの見つける。俺は、ハードウッドに馬車のことを聞いてみた。


「この中に馬車に( )がありますが、馬車は商人の持ち物ではないでしょうか。」


「仰る通りです、馬車は当方が商人に20日間貸し出した馬車となります。しかし、商人が亡くなり所有権が当方と尊様の半分に分かれてしまったのです。

馬車は高価ですので、こちらも相応の金額を提示しますの譲って頂けないでしょうか。」


今の状態で馬車は必要ではない、それに俺自身は馬車の運転も世話も出来ない。渡すことに異論はないが、一度二人の意見を聞いてから判断させてもらおう。


「その返答は、少しお待ちください。」


俺はメイプルとミュートの二人の方を向く。


「メイプル、ミュート二人に聞きたいことがあるのだけど。」

「何でございましょうか、尊様。」

「尊様、何でしょうか。」


俺は二人に今後どうしたいかを聞いてみた。俺からしたら棚から牡丹餅なので、二人が奴隷が嫌だというなら解放しようと思う。生活する資金がないというなら馬車の所有権を譲渡する対価に、彼女の生活を一定期間保証させればなんとかなるだろう。必要なら、ティーさんのおすすめスキルを二人に提供しても構わないと説明する。

我儘を言えば、この世界の知り合いは少ないのでお別れはしたくないが・・、そう思っていると二人が話始めた。


「尊様。お邪魔にならないというならば、奴隷のままで構いません。お仕えさせてください。」


メイプルが凛とした表情でこちらを見てくる。


「私も同じです。

尊様は私達を村まで連れていってくれました。

私達と一緒にご飯を食べてくださいました。

先ほども私達を売るどころか、解放してお金やスキルまで出してもいいと言ってくれました。

普通の人の状態でも、奴隷の状態でも、これ以上の幸福はありませんでした。だからお願いします、御傍においてください。」


ミュートが縋るような表情でこちらを見てくる。


「本当にいいのかい?。自由になるチャンスなんだよ。」


再度二人の顔を見ながら確認するも、二人とも無言で頷くだけだった。俺はハードウッドさんの方を向いて


「馬車をお譲りする件ですが、構いません。その代り、メイプルとミュートに”スキルの取得”と3人で住める家の手配をお願いします。」


ハードウッドさんはこれかも贔屓にしてほしいので、よく使うスキルの”レシピ”を一通りお付けしましょうとおまけをしてくれた。因みにレシピは、様々なお店で買うことが可能ということも教えてくれた。

お互いに握手を交わして、商談の成立を確認する。ここからはメイプルとミュートはティーさんに連れられて部屋を出ていく、今の格好では可哀そうなので商人から譲渡された服に着替えて貰うことにする。


「さて確認致しますが、メイプル様とミュート様の主人になるということでよろしいのですね。」

「はい。奴隷を持つのは初めてですので、注意事項があれば教えて頂けませんか?。」


ハードウッドさんの話によると、奴隷を所有するメリットは労働力に留まらないという。奴隷は主人のモノであるため、奴隷が獲得する”お金”や”食べ物”といったモノは勿論()()()()()()()()()()主人のモノになる。その代り、デメリットとして奴隷が他者や社会に与えた損害も主人のものとなるのである。そのため主人は奴隷から受け取る権利と、奴隷に対して生活の保護と信頼関係の構築そして恐怖等で他者や社会に損害を与えない義務を負う必要になってくるのだという。


「お節介ではありますが。奴隷とうまく付き合えない場合は、私を含めた奴隷を扱う者に売ってほしいと思っております。奴隷が主人を殺すというどちらも救われない事態は、いいものではありませんからね・・。」


俺はハードウッドさんにわかりましたと伝える。

ハードウッドさんとの会話が途切れた所で、ノックの音がする。ハードウッドが入ってくれというと扉が開く。


「ハードウッド様、メイプル様とミュート様の着替えが終わりました。」


ティーさんが部屋に入って来て一礼してから、定位置に移動して待機している。扉から着替えた、メイプルとミュートが入ってきた。

始めて見た時からメイプルは美しい顔の女性、ミュートは可愛い顔の女性と思っていた。けれども、大きな袋を被っただけの奴隷の服では身体の特徴までは分からなかった。

しかし普通の服に着替えただけなのに、メイプルは物腰が柔らかそうな気品のある女性に変身していた。真っ白な肌は変わらないが、奴隷の服ではわからなかった柔らかそうな普通より大きな胸には目がいってしまう。ジロジロと見過ぎたのだろうか、メイプルの顔に赤みが差している。

ミュートは、成長の途中なのかメイプルより小さめの身長である。しかし、奴隷の服はまずわからなった、歳不相応な大きな胸をしていた。しかも若さだろうか、服の上からでもわかるメロンのような胸は少しも形を変えずに存在を主張していた。ミュートも同じく顔を赤らめていたので視線は外して2人に言葉をかける。


「あ~2人共、私には勿体ないくらいの女性だったから驚いたよ。」


気恥ずかしさもあり、頬をかいていると2人がありがとうございますと言ってきた。ティーさんは微笑んでおり、ハードウッドさんは若いっていいね~と顎を触っている。

俺は、ハードウッドさんに奴隷契約をお願いしますと告げる。ハードウッドさんは頷くと、スキル”奴隷契約”を発動させる。メイプルとミュートの体が淡く光出すのは確認すると、ハードウッドさんは俺にナイフを渡してきた。


「尊様これで指を軽く切って、血を出してほしい。君たち2人は”主人として契約する”と言い血を舐めなさい。」


俺達は頷くと、俺はナイフで指を切ってメイプルとミュート前に指を出す。指から赤い血が出てくるとメイプルとミュートは俺の指を舐めて血を口の中に含んだ後、”主人として契約する”と告げる。すると、メイプルとミュートを包んでいた光が一瞬強く光るとすぐに消えてしまう。


「3人共お疲れ様、これで奴隷契約は終了だよ。」


ハードウッドさんが無事契約したことを告げる。俺は、メイプルとミュート見ながらに鑑定と念じてみる。


メイプル ♀ 狼人族(ろうじんぞく) 20歳


職業 奴隷


スキル

植物知識 Lv2 薬品作成 Lv1 短剣術Lv4

ユニークスキル


装備

旅人の服、旅人のズボン、旅人の靴

備考

狼人族(ろうじんぞく) 族長の娘


ミュート ♀ 猫人族(びょうじんぞく) 18歳


職業 奴隷


スキル

動物知識 Lv2 弓術 Lv3 短剣術Lv1、服飾作成Lv1

ユニークスキル


装備

旅人の服、旅人のズボン、旅人の靴

備考

猫人族(びょうじんぞく) 族長の娘


見たことのないスキルがあるので、スキル”世界の理の書+α”で調べてみる。


スキル”植物知識”

・植物、植物系の魔物のダメージとドロップ率がUPする。


スキル”薬品作成”

・植物などを加工して、薬品を作成することが出来る。


スキル”動物知識”

・動物系の魔物からのダメージとドロップ率がUPする。


スキル”弓術”

・弓の使い方が上達する。


転生してわずか2日で、2人の家族が増えることになった。幸先がいいのか悪いのかわからないが、皆が幸せになれるスローライフを目指そうと思った。

誤字や脱字の報告、感想等で構いません。宜しければ、一言お願いします。

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